「試合に勝ってカットマンの子供たちに希望を与えたかった」
御内健太郎(シチズン時計)が、日本のエース・張本智和をあと1点まで追い詰めるも届かなかった全日本選手権終了後にツイートした言葉だ。
全日本!
今日一日、同期の笠原がベンチコーチに入ってくれたおかげで、最高の戦いができました。ありがとう!!
写真きれてるけど、、ごめん、、笑試合に勝ってカットマンの子供たちに希望を与えたかったですが、結果が全てです! pic.twitter.com/emnMQc408A
— 御内 健太郎 KENTARO MIUCHI (@ddKIEdyyB9dd1pD) January 15, 2021
御内は続けてこうも綴っている。
「これからも世のカットマンの為に全力で頑張っていきたいと思います」。
日本を代表するカットマンである御内に、世のカットマンへのアドバイスを聞いてみた。
カットマンが減ってきていて悲しい
写真:張本智和を追い詰めた御内健太郎(シチズン時計)/撮影:ラリーズ編集部
――張本智和選手をあと1点まで追い詰めるも逆転負け。「試合に勝ってカットマンの子供たちに希望を与えたかった」とツイートされてました。
御内健太郎(以下、御内):僕が張本選手に勝ってたら、今後もうちょっとカットマン増えてたかもしれないですね。
全日本を見ていても、昔もうちょっといたんじゃないかと思ったんですけど、カットマンが減ってきていて悲しい。僕と村松(雄斗)が頑張らないとカットマンは増えないかなあと。英田(理志)はカットマンなんですけど、あまりに攻撃力がありすぎるので(笑)。
写真:英田理志(愛媛県競対)/撮影:ラリーズ編集部
――我々も英田選手の戦型についてどう書けばいいか、いつも悩みます(笑)
御内:昔はカットマンだなと思ってたんですけど、ここ1年2年で彼のプレーはガラッと変わりましたね、すごいです。
写真:御内健太郎vs英田理志(シチズン時計とT.T彩たまのプレシーズンマッチ)/撮影:ラリーズ編集部
なぜカットマンが少なくなっているのか?
――なぜ今カットマンが少なくなっていると分析していますか?
御内:カットマンで活躍してる選手が少ないからですね。少なからずそういうのがあると思うんですよね。
例えば、中国の五輪代表にカットマンがいたら、憧れる人も増えるかもしれない。昔だったら松下(浩二)さんと渋谷(浩)さんの日本のトップ2人に憧れて、カットマンが増えていたと思う。
写真:現役時代の松下浩二/提供:アフロ
世界で勝っているのも馬龍(マロン・中国)だったり、樊振東(ファンジェンドン・中国)だったりで、試合しててかっこいいとたぶんみんな思う。その選手たちと対等に戦って、「カットマンすげえな」と言われるような選手が出てくれば、子供たちもやってくれるんじゃないかな。
――だから「僕が張本選手に勝ってたら…」という冒頭のお話に繋がるわけですね。
御内:もし僕が張本に勝っていたら、同世代で怪物級の選手が出てきたときに、攻撃マンでは勝てないからカットマンになろうと思ってくれる子もいたかもしれません。
カットマンが勝つために必要なこと
写真:御内健太郎(シチズン時計)/撮影:ラリーズ編集部
――今、カットマンが勝っていくためにはどういうことが必要なんでしょうか?
御内:僕は、しっかりとしたフォアカット、バックカットで粘り強く拾えて、攻撃で反撃できれば、上にいけると思っています。
もちろん、カットマンはたくさんのことに取り組まないといけない。例えばですけど、Tリーグで大活躍している英田が僕と同じぐらいカットもしたら、もっと戦術の幅が広がって勝ち続けるんじゃないかとか、村松は僕から見ても羨ましいくらいフォアとバックのカットの変化量が多いので、そこに英田のような攻撃力が加われば、とか、カットマンの成長って終わりがないんです。
写真:村松雄斗(東京アート)/撮影:ラリーズ編集部
でも、逆に言えば、カットマンには何かしら欠けている部分がある。試合では攻撃マンにそこを突かれる。突かれないようにするために、まずは基本のカットができること。その上で攻撃ができるのがあれば、ある程度上には行けると思います。
写真:御内健太郎(シチズン時計)/撮影:ラリーズ編集部
――つまり基本となるカットがまずは大事、と。
御内:カットで拾えた方が良いですね。今はカットマンが減ってきているので、逆に上にいくチャンスかなと考えたりします。昔みたいにフォアハンドが主流ではなく、バックが上手い両ハンド型の選手が増えてきているので、そこにチャンスがあるかなと思ってます。
今の若い選手や子供が目指すお手本は?
写真:御内は多彩なサーブも操る/撮影:ラリーズ編集部
――カットマンはカットしたり反撃したり、パターンとなる展開が無限にあると思います。自分なりのカットマンという戦型をどのように作り上げているんでしょうか?
御内:僕は卓球始めてからもともと攻撃マンだった。中学でカットマンになったすぐ後くらいに、韓国の朱世赫(チュセヒョク)選手が世界選手権で2位になったので、あのスタイルで行けと言われた。なので僕の場合は見本となる形はありました。
写真:Tリーグの琉球アスティーダでも活躍する朱世赫(チュセヒョク)/撮影:ラリーズ編集部
――なるほど。朱世赫選手の攻守のバランスを参考にしているんですね。
御内:フォアカットやバックカットなどそれぞれの技術に関しては、松下浩二さんらを見て勉強しろという感じでしたね。
今の若い選手や子供が目指すお手本は、結構幅広くあるのかなと思います。YouTubeで海外の選手も日本の選手も見られますし。そこから自分に合うものを取り入れてカスタマイズしていくと良いと思います。
――最後に、カットマンとして頑張るプレーヤーにエールをお願いできますか。
御内:カットマンは試合中、粘って粘って難しい場面を乗り越えないといけない。ちょっと強い選手とやったときに勝てないのが現実。でも、辛い練習を我慢してなんとか乗り越えてほしいです。粘って点を取れば楽しいし、変化をつけて点をとったり、カウンターが決まれば爽快ですし、観客が多い中では注目してもらえる、すごく魅力ある戦型。
カットマンが増えてほしいです。カットマンでトップを取ってくれる選手が出てくることを願っています。
写真:御内健太郎(シチズン時計)/撮影:ラリーズ編集部
御内健太郎インタビュー
写真:御内健太郎(シチズン時計)/撮影:ラリーズ編集部