指導方針は「卓球を好きになってもらうために全てを教える」初の関西1部昇格・千里金蘭大学卓球部 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:千里金蘭大学卓球部/撮影:ラリーズ編集部

卓球×インタビュー 指導方針は「卓球を好きになってもらうために全てを教える」初の関西1部昇格・千里金蘭大学卓球部

2025.01.18

この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

7年前まで関西学生リーグ4部に所属していた千里金蘭大学卓球部が、今年の春季リーグ戦で悲願の1部初昇格。さらに秋季リーグではいきなり関西5位にまで駆け上がり、関西学生卓球界で台風の目となる活躍を見せてる。

チームを率いるのは、神戸TCの代表として卓球コーチを務めながら、卓球YouTuberとしても活躍している吉田和也監督だ。

そんな千里金蘭大学卓球部の躍進を支える吉田監督に、チームの雰囲気や歴史、今後の目標などについて伺った。

大学時代の恩師に誘われて監督就任


写真:吉田和也監督/撮影:ラリーズ編集部

――まずは吉田監督の経歴についてお伺いできますか?
吉田監督私は兵庫県の伊丹市出身で、高校は広島県の近大福山高等学校に進学し、大学は近畿大学に入学しました。卒業後は卓球のコーチをしながら、27歳の時に独立して神戸TCという卓球場を始めました。

約2年後に千里金蘭大学のコーチ、その2年後に監督に就任しました。現在、監督4年目となります。

――どういうきっかけで千里金蘭大学に関わるようになったのでしょうか?
吉田監督実は、大学時代の恩師だった折戸栄さんが、近畿大学をお辞めになった後、千里金蘭大学の卓球部を率いていたんです。

そんな中「年齢的に難しくなってきたから、次を頼みたい」と声をかけられたことをきっかけに、千里金蘭大学での指導に携わるようになりました。


写真:折戸栄コーチ(写真奥)と吉田和也監督/撮影:ラリーズ編集部

すべてが“初” 新しい歴史を創れるという魅力


写真:2024年春リーグでついに1部昇格を決めた千里金蘭大学/撮影:ラリーズ編集部

――千里金蘭大学の良さはどこにあるとお考えでしょうか?
吉田監督まだ歴史の浅いチームだからこそ、すべてを自分たちで作り上げられる点です。高校まで強豪校に所属していた選手が多いので、それぞれの母校で培った良い部分を組み合わせながら、練習を作り上げています。

例えば、ウォーミングアップの方法や試合前の準備などをみんなで出し合い、良いと感じたものは実際に練習に取り入れてきました。

――1部昇格も“初”で歴史を創りましたね。
吉田監督1部に昇格したタイミングでいろいろな物を新しく作りました。

関西の1部校はリーグ戦で試合前に校歌を歌うのですが、千里金蘭大学はそもそも校歌がありませんでした。そこで急遽大学に依頼して校歌を作ってもらい、音程を合わせるところから練習しましたね(笑)。

また、部旗もなかったので、その機会に作りました。1から創り上げていける点は、新鮮で魅力的だと思います。

結果を出させてあげるために「全て教える」という指導方針


写真:試合後のミーティングの様子/撮影:ラリーズ編集部

――監督として意識していることはありますか?
吉田監督千里金蘭大学に入学してくる選手は、高校時代は主力ではなく、補欠や3番手、4番手だった選手が大半です。

そうした選手は、厳しい練習のわりに結果を出せず、卓球そのものが嫌いになっているケースも少なくありません。

僕自身は卓球が大好きで、幅広い世代に「卓球を好きになってほしい」という思いで指導しています。だからこそ、千里金蘭大学の学生にも卓球を嫌いなまま卒業していってほしくない。むしろ好きになって終わってほしいと意識しています。


写真:ミーティングで話す吉田和也監督/撮影:ラリーズ編集部

――好きになってもらうためにはどういうことが大事なのでしょうか。
吉田監督楽しみながら成長してもらうことは忘れないようにしながらも「結果を出させてあげること」を最優先しています。

卓球の楽しさは、やはり勝利にあると思うんです。例えば、高校まで負けていた選手にやっと勝てたときなどに、楽しさを感じるはずです。勝ち方を知ってもらうことで、最終的に卓球を好きな状態で終わってくれたらいいなと思います。

勝たせるためにやれることは全てやって、教えられることは全て教えるというのが、千里金蘭大学の選手に対する僕の中の指導方針ですね。

たぶん意見が割れると思いますけどね(笑)。「そんなに指導者が全部言ったら良くないやろ」って。

――確かに、「教えすぎない」「自主性を重んじる」という指導方針はよく聞きますが、「全て教える」は初耳でした。
吉田監督もちろん「教えすぎない」というのはめちゃめちゃ大事だと思っていて、子供たちの指導では割と意識はしています。

でも、大学4年間で卓球に一区切りをつける選手も多いですし、そもそも自分で考えて結果が出ているなら、レギュラーとして高校時代から戦っていたと思います。

大学では、自分で考える力をつけるというよりは、逆に全て教えて結果を出して、卓球の楽しさを知って卒業して行ってもらう方がいいなと思っています。

――素晴らしい考え方だなと感銘を受けました。
吉田監督実際、大学卒業後に卓球を辞めるつもりだった選手が、勝てるようになったことで「もっと卓球を続けたい」と実業団への進路を選んだケースもあります。

もともと卓球が嫌いだったり、続ける気がなかったりした選手が、勝つ楽しさや卓球の面白さを知って、競技を続けてくれるのは、指導者として本当に嬉しいことですね。

自身も現役でプレーすることが指導に活きている


写真:東京選手権での吉田和也監督/撮影:ラリーズ編集部

――吉田監督がまだ一般カテゴリーの試合に出ているという経験も指導に活きていますか?
吉田監督全日本選手権も含めて試合に出続けているので、トップ層のプレースタイルの流行や用具の変化を敏感に感じ取れています。

自分自身が経験した“今の卓球”を基に、実際の試合で効いた戦術、サービス、考え方などを全て選手たちに伝えているので、指導にも説得力が出ているのかなと思います。


写真:選手にサービスを指導する吉田和也監督/撮影:ラリーズ編集部

――ご自身の卓球場で幅広い世代を指導されていることも、大学生の指導に活きていそうですね。
吉田監督初心者や子供たちを教えているので、選手に合った戦型を判断できたり、多彩なプレースタイルの指導にも対応できたりしているなと感じています。

千里金蘭大学に入ってきてくれたからには、他校のエース級に勝つまでに育って欲しいと考えているので、4年間ではそこに間に合わないと判断した場合は、戦型を変更させています。

例えば、両面裏ソフトラバーで高校3年生までプレーしてきた選手であっても、取りにくいボールが出る表ソフトラバーを使ってもらうなどです。実際に私が監督に就任してからフォア面に表ソフトラバーを使うように戦型変更した選手が3人います。


写真:千里金蘭大学のメンバー/撮影:ラリーズ編集部

――結果を出させてあげるためにという部分で一貫していますね。
吉田監督試合が始まったらベンチからのアドバイスしかできないので、選手たちの勝率が1%でも上がるよう、試合以外でも徹底的にサポートしています。

例えば、試合当日の送迎もその一つです。学校まで車で迎えに行って会場まで送り届け、会場では練習相手をし、試合後も選手たちを車で送っています。

選手たちも「ここまでしてもらったらやらなきゃいけない」と意識が高まっていると思うので、全力でサポートするというのは続けています。


写真:関西学生選手権でランク入りした森優菜(千里金蘭大学)/撮影:ラリーズ編集部

さらに有名なチームへ

――新しい歴史を創ってきた、今の最上級生にかけたい言葉はありますか?
吉田監督4年間ありがとうと伝えたいです。

今の4年生は、大分の明豊高等学校から2人、宮崎の日南学園高等学校から中国人留学生が1人入学してくれました。

彼女たちが引っ張ってくれたおかげでチームが大きく変わって、初めてインカレに出場できてそこから4年間毎年出場できるようになりました。

社会人になっても、「努力を続ければ良いことがある」ということを忘れずに頑張ってほしいですね。

――今後どんなチームを目指していきたいですか?
吉田監督関西学生リーグ1位を目指すという目標があります。

千里金蘭大学はまだ歴史が浅く、知名度も高くはありませんが、少しずつ成績を上げて1部に定着し、さらに有名なチームへと成長させたいです。私自身はSNSやYouTubeを活用しているので、それらを活かしてチームの良さをどんどん発信していきたいです。

これからも真面目に取り組むときは全力で、でも楽しさを感じることを忘れずに指導をしていきます。

高校時代から実績のある選手たちが将来的に加入してくれれば、1位を目指せるチームにもなれると思っています。アットホームで楽しい雰囲気ながらも強いチーム作りを目指して頑張っていきます。


写真:千里金蘭大学卓球部/撮影:ラリーズ編集部

【動画】千里金蘭大学卓球部に潜入

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