創部100年の早稲田大学卓球部 12年ぶり優勝の秘訣は「自分で考え、自分で実行する」指導 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)
創部100年の早稲田大学卓球部 12年ぶり優勝の秘訣は「自分で考え、自分で実行する」指導

写真:早稲田大学卓球部/撮影:ラリーズ編集部

卓球×インタビュー 創部100年の早稲田大学卓球部 12年ぶり優勝の秘訣は「自分で考え、自分で実行する」指導

2025.03.05

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この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

1924年創部、昨年創立100周年を迎えた早稲田大学卓球部は、昨年の秋季関東学生卓球リーグ戦で12年ぶりとなる優勝を果たした。

栄光の裏に、学生時代の2部降格の責任を感じ続けたOBがいました。卓球部監督の本橋道直監督にお話を伺いました。

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かつての2部降格の責任痛感「いま役に立てるなら」と監督就任を決断

写真:本橋道直監督/撮影:ラリーズ編集部
写真:本橋道直監督/撮影:ラリーズ編集部

山下
本橋監督の経歴について教えてください。
本橋道直監督
私は、高校が早稲田実業高校出身でそのまま早稲田大学に進学、1980年に卒業した早稲田大学卓球部OBです。

大学卒業後は一般企業に就職し、会社を定年退職した2022年から早稲田大学卓球部の監督を務めています。

山下
ご自身が卓球部生だった頃は、どんなチームでしたか?
本橋道直監督
私が入学した当初のチームは非常に強く、春・夏のリーグ戦で優勝、インカレも制覇していました。上級生がとても強かったです。

ただ、私が4年生のときには春のリーグ戦で2部に降格してしまい、秋の入れ替え戦でも敗れて1部に戻れないまま卒業することになったんです。

1924年創部以来、早稲田大学卓球部の長い歴史において、2部降格は二度目のことでした。このときは非常に悔しい思いをしました。

しかも、私たちが卒業した後5〜6年間チームは2部に留まり、1部に復帰できなかったんです。早稲田最大の危機を全国無名選手たちが踏ん張って1部昇格を果たした時は早稲田魂を感じました。本当に感謝しています。

山下
早稲田大学らしいエピソードですね。

本橋監督は卒業後、一般企業に就職されたんですよね。

本橋道直監督
はい。実業団チームからも声をかけてもらいましたが、その頃には卓球を続ける自信を失っていて、「趣味として卓球を楽しむ」という気持ちで普通の会社に就職しました。

それ以降、自分なりに卓球を楽しむという趣味の姿勢で続けてきて、こうして長く卓球を続けられているのも、そのときの選択があったからかもしれません。

写真:リーグ戦での早稲田大学男子卓球部。本橋監督は多くの部員を支えながらまとめているのだ/撮影:ラリーズ編集部
写真:リーグ戦での早稲田大学男子卓球部/撮影:ラリーズ編集部

山下
それが、なぜ早稲田大学の監督就任へと繋がるのでしょうか?
本橋道直監督
長い会社員生活を卒業したタイミングで、監督就任のお話をいただきました。

学生当時は責任を果たせなかった自分が、いま少しでもチームの役に立てるのであればと思い、お引き受けすることにしました。

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“早稲田らしさ”とは文武両道。学生は自ら考え、行動できるように

写真:徳田幹太(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部
写真:徳田幹太(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

山下
監督就任後、かつてと現在の卓球部生の違いは感じましたか?
本橋道直監督
今の学生たちは、みんな本当に真面目で、一生懸命練習に取り組んでいる印象があります。自分を強くしたいという思いを持ちながら、真剣に取り組んでいる姿勢が伝わってきます。素晴らしいですね。

昔の自分たちの時代を振り返ると、練習中にもどこかいい加減な部分があったり、集中しきれていないことも多かったように思います。

山下
早稲田大学卓球部は、一般入試で入学した学生とスポーツ推薦の学生が共に切磋琢磨するという伝統がありますよね。

部活の雰囲気は昔と変わらないですか。

本橋道直監督
男子に関しては、昔とあまり変わっていない印象です。一般入試で入ってきた子たちの中にも「早稲田で卓球をやりたい!」という強い思いを持って入学してくる子がまだまだ多くいて、早稲田大学卓球部の良さだと思います。

写真:エースとして引っ張る濵田一輝(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部
写真:エースとして引っ張る濵田一輝(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

山下
監督として、学生への指導で意識していることはありますか?
本橋道直監督
指導の際には卓球の技術だけではなく、自立した考え方や行動力を養うサポートを心がけています。

大学生は大人になりつつある時期であり、社会に出る準備期間でもあります。

私自身、あれこれ指示を出すというよりも、彼らが自ら考え行動できるような環境を整えることを意識していますね。

写真:舟山真弘(早稲田大)(写真は2023年秋季関東学生卓球リーグ)/撮影:ラリーズ編集部
写真:パリパラ五輪2024代表にもなった2年生の舟山真弘(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

山下
それは、会社員生活の長い本橋監督ならではの思いですね。
本橋道直監督
社会に出ると「計画性」「段取り」が非常に重要になってくるので、その大切さは学生たちに伝えています。

自分の責任で行動する力を養うためにも、計画を立てて、早め早めに動く習慣を身につけてほしいと思っています。何かやるべきことがあれば、まず手をつけてみるという行動を心がけるべきです。

仕事を後回しにすると、後々大変な思いをするというのは社会人生活でさんざん私が味わってきましたから(笑)。

写真:磯村拓夢(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部
写真:磯村拓夢(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

山下
“早稲田”だからこそ、大切にしていることはありますか。
本橋道直監督
早稲田大学は「文武両道」が伝統として根付いています。私が学生の頃、先輩方から常に「勉強もしっかりやれ」と言われてきました。

同期の部員も勉強に励む姿が印象的で、それが卓球部の風土として自然と浸透していたと思います。この環境は、その後の自分の成長に繋がったと感じています。

写真:濵田尚人(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部
写真:濵田尚人(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

本橋道直監督
早稲田大学は学業で高く評価されるだけでなく、スポーツにおいても結果を残さなければ「早稲田らしさ」を示せないという、独特のプレッシャーがあるんですよ(笑)。

「スポーツではライバルに負けたくない」「勉強や仕事では周囲に負けたくない」という気持ちが自然と育まれます。

この環境は、今の学生たちにも受け継がれていると感じますし、早稲田ならではの大きな魅力だと思います。

写真:櫻井大地(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部
写真:櫻井大地(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

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12年ぶりの関東学生秋季リーグ優勝は「オール早稲田」で勝ち取った

写真:早稲田大学/撮影:ラリーズ編集部
写真:秋季関東学生卓球リーグ2024で優勝した際の集合写真/撮影:ラリーズ編集部

山下
今回の秋リーグでは、早稲田卓球部男子が12年ぶり通算32回目の優勝を果たしました。監督として優勝を手にしたとき、どんな気持ちでしたか?
本橋道直監督
最後に4年生で主将まで務めた荒井和也がしっかり締めて優勝してくれたので、本当に最高の形で終われたと感じ、ほっとしました。

今回のチームは3年生の濵田一輝、2年生の徳田幹太を中心に構成されていて、さらに1年生の濵田尚人や4年生の荒井和也が1点を取れるかどうかが鍵でした。

特に濵田(一輝)と徳田の2人は、自分たちが負ければチームの敗北に直結するというプレッシャーの中で戦ってきました。その彼らが最後に自分たちの思いを果たせたことが、本当に嬉しかったです。

写真:濵田一輝/徳田幹太(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部
写真:濵田一輝/徳田幹太(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

山下
その2名は学生卓球界の中でもエース級の実力ですね。
本橋道直監督
確かに強い2人ですが、彼らはこれまで悔しい思いばかりしてきました。

リーグ戦では2位が最高、インカレでもベスト8止まり。それぞれ愛工大名電や野田学園という超強豪校を背負ってきた選手ですが、早稲田大学としての団体戦での勝利にはなかなか恵まれなかったんですね。

だからこそ、今回の優勝には特別な意味がありました。

写真:徳田幹太/濵田一輝(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部
写真:秋季リーグでは個人賞、ペア賞を獲得した徳田幹太と濵田一輝/撮影:ラリーズ編集部

山下
キャプテン・荒井選手と1年生の濵田(尚人)選手の活躍はどうでしたか?
本橋道直監督
荒井は本当に、最後の場面で頑張り抜いてくれました。尚人は、この半年間でさらに成長して、今大会ではしっかりと6勝を挙げてくれました。2人とも本当に素晴らしかったです。

写真:最終試合となった中央大学戦では、ラスト7番で勝利し優勝を決めた荒井和也/撮影:ラリーズ編集部
写真:最終試合となった中央大学戦では、ラスト7番で勝利し優勝を決めた荒井和也/撮影:ラリーズ編集部

本橋道直監督
キャプテンの荒井がしっかりとチームをまとめてくれたのはもちろんのこと、副キャプテンの濵田が精神的な支柱として大きな役割を果たしてくれたと思います。

この2人が中心となり、4年生と3年生が協力し合ってチームをまとめてくれたことで、試合が進むにつれて一体感が強まっていったのを感じました。

他のサポートの選手たちも含めた「オール早稲田」の力で、今回優勝に届いたと感じています。監督として、非常に感慨深いものでした。

写真:濵田尚人(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部
写真:1年生ながら6勝をあげた濵田尚人/撮影:ラリーズ編集部

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まぐれと言われないために。チームの結束力で連覇を誓う

写真:早稲田大学卓球部/撮影:ラリーズ編集部
写真:早稲田大学卓球部/撮影:ラリーズ編集部

山下
チームの今後の展望を教えてください。
本橋道直監督
まずは来年のリーグ戦で優勝を目指します。今回の優勝が「まぐれだった」と言われないようにするためにも、最低限それを達成することを第一歩としています。

さらにインカレに向けて、目標を明確にしてチーム全体で取り組んでいきたいと思っています。

山下
チーム力をどう強化していく予定でしょうか。
本橋道直監督
新たな補強についてはなかなか難しい部分もあります。

でも、現在いる選手たちがそれぞれ努力し、レベルアップしてくれることが重要だと考えています。

チームの結束力が高まってきているので、それをさらに強化しつつ成長していけるよう、サポートしていきたいと思っています。

【動画】優勝記念 単複計17勝の濵田一輝&徳田幹太が秋リーグ全7試合振り返り

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