一人の卓球韓国代表の男子選手が、東京五輪での敗戦後に、日本語で綴った感謝のツイートが話題を読んだ。
鄭栄植(チョン・ヨンシク)、29歳。
世界トップクラスのバックハンド技術と、勝負強さで韓国卓球界を引っ張る一方、柔らかな人柄で、日本にもファンの多い選手である。
今回、オンラインでソウルと繋いで、鄭栄植選手に現在の状況や今後の展望などを聞いた。
写真:鄭栄植(中央)/撮影:ラリーズ編集部
まさかあんなに話題になるとは
――東京五輪を終えて、日本語での感謝のツイートが大きな反響を呼びました。どんな思いだったんですか。
鄭栄植:まさか、あんなに話題になるとは思いませんでした(笑)。
今回、五輪ボランティアの方々がとても親切で、いま大変な時期なのに、こんなに頑張ってくださっている。ボランティアをしてくれた皆さん、応援してくれた全ての方に少しでも感謝の気持ちが伝わればと思って、日本語でツイートしました。
「東京五輪代表選考が選手生活で最もつらかった」
――兵役期間と重なった東京五輪、調整はどうでしたか。
鄭栄植:実は、今年の初めに行われた五輪代表選考が、最も精神的につらい時期でした。五輪が一年延期になり、ナショナルチームではなくずっと軍隊で練習していたんですが、選手としては正直、調整は難しかったです。
写真:鄭栄植/提供:ittfworld
――どう克服したんですか。
鄭栄植:克服したというより、それでも諦めたくなかっただけです。精一杯、努力しました。
写真:鄭栄植/提供:ittfworld
大逆転でベスト8まで進んだ個人シングルス
――個人シングルスでのジオニス選手との試合、ゲームカウント1-3の4-10でマッチポイントを取られてから大逆転で勝利っていうのは、衝撃的でした。
鄭栄植:これ以上失点をしたら自分の東京五輪が終わってしまうと思ったとき、
1本ずつベストを尽くしながらも、今の状況を楽しもうと考えました。
そうすることで、運も味方してくれましたし、チャンスも巡ってきました。
写真:鄭栄植(韓国)/提供:ittfworld
――2019年韓国オープンで世界ランク1位の樊振東に勝利したときなど、試合の中盤・後半に強い印象ですが、何か理由があるんでしょうか。
鄭栄植:最近は序盤でもっと強くなろうと努力中です(笑)。自分はゲームが進むほど調子が良くなっていくので、終盤に自信がある状態のときは多いですね。
写真:鄭栄植(右)が樊振東(奥)を破った2019年の韓国オープン/撮影:ラリーズ編集部
日本との団体銅メダル決定戦
――東京五輪、日本との団体3位決定戦のダブルスは、多くの実績を上げた李尚洙選手とのペアでしたが、水谷/丹羽ペアに1-3で敗れました。
鄭栄植:ダブルスではとても緊張してしまい、内容が良くありませんでした。必ず勝たなければ、という気持ちが強すぎて。
一方、日本のダブルスは積極的に攻撃を仕掛けて、とても良い試合ができていましたね。
写真:水谷隼(写真左)・丹羽孝希/提供:AFP/アフロ
――団体3番ではヨンシク選手が丹羽孝希選手に3-0で勝利し、一度流れを引き戻しました。
鄭栄植:丹羽選手とは幼い頃からたくさん試合をしていて、お互いによく知っています。毎回結果は異なりますが、今回の3番は、心を無にして試合ができたので内容が良かったのかなと思います。
――東京五輪の日本チームはどういう印象でしたか。
鄭栄植:とてもしっかり準備ができているように見えました。特に水谷隼選手には驚きました。
――別格の勝負強さでしたよね…
鄭栄植:私も2回五輪に参加しました(リオ、東京)が、100%の状態で試合に臨むことはとても難しい舞台です。8割くらいの力になってしまうんですが、水谷選手は五輪の試合の中でも、実力を十分に発揮できていました。
写真:水谷隼/提供:ittfworld
相手に敬意を払いたい
――ところで、ヨンシク選手はネットインやエッジで自分が得点したとき、“sorry”の人差し指が相手に見えるまで続けているような気がします。それはなにかポリシーがあるのでしょうか。
鄭栄植:細かいところをよく見てますね(笑)。相手に見てもらわなければ意味がないと思うので、相手の目に入るまではポーズをしています。相手に敬意を払いたい、という思いです。
――日本にヨンシク選手のファンが多い理由がわかる気がします。
鄭栄植:ありがとうございます。私がそうなれているかどうかは別ですが、目標はいつも実力も人望もある選手になりたいと思っています。
写真:鄭栄植/提供:ittfworld
(後篇「韓国の若手は海外リーグで戦ったほうがいい」鄭栄植が提言する韓国卓球の未来 に続く)
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