「獲得候補にすら入ってなかった」徳田幹太に金沢ポートが複数年契約でオファーしたワケ | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:徳田幹太(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

卓球×インタビュー 「獲得候補にすら入ってなかった」徳田幹太に金沢ポートが複数年契約でオファーしたワケ

2024.11.11

この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

大学生チャンピオンとなった徳田幹太(早稲田大学)が、金沢ポートからTリーグに参戦する。

私も学生卓球ファンの1人として、全日学王者にオファーが届いてほしいと願っていたが、まさかの金沢ポートから、しかも複数年契約でのオファーと言うのだから驚きだ。

サプライズ契約の理由を伺うべく、金沢ポートの西東輝監督にインタビューを敢行した。

話を聞いてくと、徳田が自らの結果で人生を切り拓いた事実とともに、西東監督のチーム作りに対する熱い思いが伝わってきた。

実は獲得する候補にもあがっていなかった

――全日学王者の徳田幹太選手、どこかのチームがオファーしてほしいとは思っていましたが、金沢ポートだとは驚きでした。
西東輝監督:徳田は元々良い子だとはわかっていましたが、昨日ミーティングをしました。自分のところの選手になるという贔屓目もありますが、金沢ポートに合っているなと感じました。

ただ、徳田については正直なところ、全日学前まで獲得候補にすら入っていませんでした。


写真:全日学優勝で評価を覆した徳田幹太(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

――徳田選手が自らの結果で評価を覆したわけですね。

どこを評価されたのでしょうか?

西東輝監督:選手獲得において大切に考えている基準がいくつか私の中であります。

その1つが「諦めない選手」。これは一番大事です。

勝てるのが一番ですが、勝負事なので負けることもあります。よく例に出して言うのですが、「負けるとしてもかっこいい負け方ができる選手」は評価しています。

どんなに苦しくても粘って簡単に負けない。徳田もそういう選手ですよね。

――確かに徳田選手は全日学で0-3からの逆転や、マッチポイントを握られてからの逆転など、諦めない姿勢が印象的でした。
西東輝監督:元々は三浦裕大(筑波大学)を獲得する最終チェックのために全日学を見ていたので、準々決勝はむしろ三浦を応援していました(笑)。

でも徳田は0-3から踏ん張ってギリギリで逆転勝利。

5回戦から4試合連続フルゲームで28ゲームを戦って、しかもマッチポイントを何度も何度も凌いで優勝と、さすがに心を動かされましたね。


写真:徳田幹太(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

西東輝監督:「どんな感じだったの?」と本人に聞いたら「準決勝、決勝はゲームオールになった瞬間、負ける気がしなかったです。決勝では先にマッチポイント取られましたが、それでもいけると思っていました」と言っていたんですよね。

一皮も二皮も剥けたなと思いましたし、「諦めない選手」かつ「人の心を動かせる選手」はなかなかいないので、思い切って最後の1枠を使って獲得しようと決断しました。


写真:徳田幹太(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

――西東監督の獲得選手像にマッチしたということですね。
西東輝監督:金沢ポートというチームは、事業部、運営、選手、スポンサー、ファン皆さんの協力があって、ギリギリで踏ん張っています。私の人生もいつも踏ん張ってばかりです。

今回の徳田を見ていて、踏ん張りがきく選手だと感じましたし、試合中の立ち振る舞いも含めて金沢ポートで獲得したいと思えました。

ポテンシャルの高さを見込んで複数年契約

――徳田選手には金沢ポートに入って、どういう選手になっていってほしいですか?
西東輝監督:大学生チャンピオンだからと言って、すぐに勝てるほどTリーグは甘くありません。

ただ、高いポテンシャルを開花させてあげて、数年後に金沢ポートやTリーグを代表する選手になってほしいと思っています。

その期待も込めて複数年契約しました。

――まさかの複数年契約だったんですね。ポテンシャルを高く評価されていますね。
西東輝監督:実は徳田のことは、小学生の頃から知っていました。一度石川県に来た試合で見たことがあって、「こんなすごいプレーする子がいるんだ」と思っていました。ただそこから全国ではベスト8やベスト4止まりで、日本一には届かなかった。

日本一になるマインドと才能はあるけど、花開いてなかった選手という印象でした。


写真:徳田幹太(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

西東輝監督:結果が出ずに諦めてしまう選手も多くいますが、徳田は「自分ならもっとできる」と努力し続けてきたんだと思います。

周りからは卓球エリートに見られてきて、傍から見れば十分な成績を収めてるけど、今の状況を不遇とさえ思えるハングリー精神はとても良いところです。

今回、自分の力で日本一を勝ち取って金沢ポートと契約して人生を切り拓いたというストーリーも、応援したくなる選手だなと思います。

――ファンがつきそうなプロ向きのマインドですね。
西東輝監督:甘いマスクという武器もあるので、ファンは増えるでしょう(笑)。


写真:甘いマスクも魅力の徳田幹太(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

技術が多彩で強くなる可能性が無限大

――技術面ではどこにポテンシャルの高さを感じていますか?
西東輝監督:技術が多彩なところですね。

私は卓球選手を「6箇所から打てるか」という観点でよく見ています。

・前陣のフォア、バック ※前陣=頂点より前の跳ね際。打球点が低い
・中陣のフォア、バック ※中陣=上昇途中の頂点付近。打球点が高い
・後陣のフォア、バック ※後陣=頂点から落ちてくる部分。打球点が低い
の6箇所です。

例えば松平健太だと、前陣の早い打点で両ハンドを打てますし、少し下がったり、引き合いレベルまで下がっても両ハンド打つことができます。なので6個揃っています。

6箇所については金沢ポートYouTubeで西東監督が五十嵐史弥選手に指導しているのをご参考に(2:10付近)

――そういう見方があるのですね。勉強になります。
西東輝監督:すでにできている部分の質を上げることは簡単にできますが、できてないものをできるようにするのは相当難しいです。

これはたぶん野田学園がすごいんだと思うんですが、徳田は6箇所全部から打てます。

特に中陣でバックドライブができるから、右右でダブルスが組めています。右右でダブルスを組んだ時はどうしてもバック側に詰められる。でも徳田がバックで中陣から打てるので濵田一輝とのダブルスは強いんですよね。


写真:徳田幹太(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

――なるほど。
西東輝監督:あとはチキータが上手いけど、フォアの台上も器用なところ、しっかりとフォアハンドで動けるところも評価しています。

実は全部の技術ができるから、パワーや質を高めればいくらでも伸びしろがあります。強くなる可能性が無限大です。


写真:徳田幹太(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

遠慮せずに学び成長してほしい

――金沢ポートにはお手本になる選手が多くて、徳田選手にとっても最高の環境だと思います。
西東輝監督:徳田は小柄ですし、チャンウジンから学んでほしいですね。

また機会があれば皆さんにもお伝えしようかと思うのですが、そこまで背が高くないのにウジンが勝てているのには理由があって、フォアのとある技術がポイントなんですよね。

しかもウジンは、相当細かく周りの選手に技術を教えてくれるナイスガイです。徳田に向けて講習会してもらおうかな(笑)。


写真:チャンウジン(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部

――チャンウジンの人柄も聞けて少しお得な気分です(笑)。
西東輝監督:彼はいるだけでチームが明るくなるし、本当に頼れる男です。


写真:チャンウジン(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部

西東輝監督:チャンウジンのフォアの技術のほかにも、吉田のサービスの組み立て、(松平)健太や(田中)佑汰のプロとしての行動やマインド、いくらでも教材はあります。

徳田にはも伝えますが「遠慮していてはダメだよ」と。例えば帯同したいなら「帯同したい」、誰かと練習したいなら「練習したい」と主張してくれれば、しっかり調整するので、特に監督の自分とは遠慮せずにコミュニケーションしてほしいです。


写真:徳田幹太(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

――西東監督は話しやすい人柄なので、徳田選手もやりやすいのではないかと思います。

最後に、徳田選手のような若手が入ることで、金沢ポートにとってどういう刺激があると考えていますか?

西東輝監督:去年は人数が少なかったので無理でしたが、今年は誰を使うかという監督として嬉しい悩みを持てています。今年は勝てなかったら使われない。

徳田や三浦が入ることで競争がより激化して、刺激し合ってほしいです。

徳田も三浦も遠慮しないで「自分がポジションを奪ってやる」というガツガツとした気持ちでレギュラーを狙いに行って、チームに良い変化をもたらしてくれることを期待しています。


写真:徳田幹太(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

Tリーグを盛り上げる存在へ

学生卓球でヒーローとなり、Tリーグの舞台への挑戦権を獲得した徳田幹太。

甲子園で活躍した選手がプロ野球でたくさんのファンから応援されるように、徳田には学生卓球ファンをTリーグでも魅了し続けてほしい。

逆に金沢ポートには、若手の爆発力とベテランの安定感でTリーグをさらに盛り上げてくれることを期待したい。

様々な課題が山積みなTリーグではあるが、選手にとっては憧れの舞台であることには変わりはない。少しでも多くの卓球ファンに魅力を伝えるべく、選手やチームのストーリーを今後も追っていきたい。

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