無名から全国へ クラブと連携した6年一貫指導で静岡学園卓球部が育む"伸びる力"と"その後の未来" | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:ASURA SDで指導する静岡学園卓球部/撮影:ラリーズ編集部

卓球×インタビュー 無名から全国へ クラブと連携した6年一貫指導で静岡学園卓球部が育む“伸びる力”と“その後の未来”

2025.07.29

この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

全国表彰台にも登る全国大会の常連校でありながら、静岡学園卓球部が目指しているのは「高校3年間での成功」だけではない。

大学、社会人、さらには“その先の未来”にまで繋がる力を育てることだ。


写真:全日本選手権ダブルスで3位に入った静岡学園OBの川上尚也(写真左・日野キングフィッシャーズ ペアは西康洋)/撮影:ラリーズ編集部

全日本社会人ダブルス優勝の実績を持つ川上尚也(日野キングフィッシャーズ)や、関東学生王者に輝いた鈴木笙(筑波大)、溜大河(専修大)が関東学生リーグ1部で福光凌大(埼玉工業大)が2部でそれぞれ殊勲賞を獲得するなど、静岡学園の卒業生は各地で着実に成長し、成果を残している。


写真:関東学生選手権を制した鈴木笙(筑波大学)/撮影:ラリーズ編集部

卒業後も伸び続けて結果を残せている要因は、高校時代に技術だけでなく、自立心・考える力・仲間と競い合う力といった、長く戦い続ける土台が育っている証だ。

高校時代の目先の勝利・結果だけではなく、長期的な目線での育成を行う“静岡学園メソッド”に迫るべく静岡学園高校の寺島大祐監督とASURA SDの川口育寛監督に話を聞いた。


写真:寺島大祐監督(静岡学園)/撮影:ラリーズ編集部

中高6年間の育成で“伸びる力”を育てる

近年、静岡学園卓球部は下の世代の育成にも注力しており、その鍵となっているのがクラブチームのASURA SDとの連携だ。

静岡学園の高校生は、ASURA SDに所属する中学生と共に、練習場が併設された寮で生活を送る。高校生が中学生に指導を行うことや練習を共にすることもあり、中高で交流も盛んだ。


写真:川口育寛監督(ASURA SD)/撮影:ラリーズ編集部

ASURA SDの川口監督はこう語る。

「中高6年間で一貫して指導することで、“その場限りの強さ”ではなく、“将来に向けて伸びる選手”を育てられる。ASURA SDと静岡学園にはそのための環境と人が揃っています」。

中学生の段階でASURA SDで基礎を培い、寮生活で自立的な生活習慣と高い目標意識をもった生活が始まる。


写真:寺島大祐監督(静岡学園)/撮影:ラリーズ編集部

静岡学園の寺島監督もこう語る。

「6年間を通じて一人ひとりの成長に向き合えるのは大きな強み。中高で選手の特性や課題を見極めながら、大学・社会人に繋がるよう育成を設計できます」。

中高6年間を通じた育成体制が、「伸びる選手」を生む土壌となっている。

多様なコミュニティと役割が成長の加速装置に

静岡学園では、卓球のスキル習得だけにとどまらず、クラブ活動や学校生活を通じて様々な価値観に触れる仕組みがある。

「うちは公立の服織中に通いながら、ASURA SDとして静岡学園の練習に参加する子が多い。だから公立中学、私立高校、クラブチームと色々なコミュニティに関われる。“強いチームの価値観”だけでなく、“普通の学校の人間関係”も経験できるのが強みだとは思っています」と寺島監督は語る。

中学のクラブチームと高校の部活は、シームレスに繋がる中高一貫ではない。だからこそ同じ環境でマンネリ化せず、中学から高校へ上がる際に新たな気持ちでスタートができることも特徴の1つだ。


写真:ASURA SDでは静岡学園の選手も球出しをする/撮影:ラリーズ編集部

さらに、SNS担当、経理担当、分析担当などの“役割”を選手それぞれに任せることで、「自ら考え、動き、発信する」力も育てている。

「もちろん任せることで失敗やミスもおきます。でも守らせるだけじゃなく、攻めたチャレンジをさせる。失敗しても、その後リカバリーできる自信があるから、安心してトライさせられるんです」。


写真:静岡学園高の練習風景/撮影:ラリーズ編集部

中高6年間を一貫して見ることができれば、チャレンジさせられる機会も多くなる。

ASURA SDとの連携は、単なる技術共有ではなく「多様な経験」を引き出す仕組みとして活用されている。

先輩の背中が描かせる“その先の未来”

中学から静岡学園のメソッドに触れていた選手たちは、卒業後に結果を出している。

中学1年から静岡学園に通っていた川上尚也(日野キングフィッシャーズ)は大学、日本リーグで活躍し、全日本社会人のダブルスで優勝。


写真:西康洋/川上尚也(写真奥・日野キングフィッシャーズ)/撮影:ラリーズ編集部

鈴木笙(筑波大)は週末は関西から練習に通う生活を中学2年から高校入学まで続け、筑波大学では関東学生王者へと駆け上がった。


写真:鈴木笙(筑波大)/撮影:ラリーズ編集部

近年では、ASURA SDと静岡学園の連携により、中学生の段階で全国大会で結果を残す選手も登場している。

今年のインターハイに高校1年生ながら出場する全日本カデットでベスト4にも入った畠山陽や、東京選手権カデットの部・準優勝の山崎勇人(服織中)も、中2から通い始め、急成長を遂げたひとりだ。


写真:全日本カデットベスト8、東京選手権カデットの部準優勝の山崎勇人(服織中)/撮影:ラリーズ編集部

このような選手たちは、高校・大学・社会人と階段を登っていく上で、確かな基盤を築いている。

「長く見られれば、確実に成長する。プロチームの静岡ジェードとも連携していて、大学・社会人までの道が自然と見える。早く入ることでその道が“自分の未来”として描けるようになります」。(寺島監督)

進学実績や就職実績も

進学実績にもそれは現れている。慶應義塾大学、早稲田大学、筑波大学、関西学院大学などの難関大学に進学し、卒業後もデンソー、ビズリーチ、東京海上日動、損保ジャパン、マイナビなど、大手企業に就職して活躍。社会人としても活躍できる人材が育っている。

「卓球だけでなく、経験を通じて“生きる力”を育てている。プレーヤー以外の道でも活躍できる選手を育てたい。それが、これからの卓球界には必要なんです」と寺島監督は熱い思いを明かす。

「どんな場でも通用する人間に育ってほしい」。そんな想いが、技術だけでなく、生活態度や考え方まで丁寧に指導するスタンスに表れている。

6年間で育てる「無限大の可能性」

静岡学園とASURA SDの連携は、単なる“卓球強豪校”にとどまらない。

6年間の育成体制が整いつつある今、卓球を通じて、人間性・自立・思考力・挑戦力を育みながら、自分の未来を切り拓いていける選手を育てる。その環境が、静岡学園にはある。大学・社会人、さらには人生に繋がる「無限大の可能性」を引き出す。

無名の選手でも、自ら成長し、全国、そして世界へ。早い段階から静岡学園の育成に触れることで、その未来はより現実的なものになっていく。

【動画】静岡学園の1日に密着