文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)
「卓球といえば中国」
卓球界のみならず、世間一般に浸透しているこのイメージは、オリンピックの成績にも現れている。北京、ロンドン、リオと3大会連続で男女全種目で中国が金メダルを獲り続けているのだ。
では、なぜ中国はこんなにも卓球が強いのだろうか?
そんな原点に立ち返るべく、「中国はなぜ卓球が強いんですか?」との質問を専門家たちにぶつけ、中国超えのヒントを得ようという本企画。
記念すべき第1回は、日本男子卓球の第一人者、リオ五輪で2つのメダルを獲得した水谷隼選手(木下グループ)にお話を伺った。
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写真:水谷隼/撮影:ラリーズ編集部
ーーいきなりですが、中国はなぜ卓球が強いんでしょうか?
水谷隼選手(以下、水谷):一番大きな要因は、小さい時から強くなるためのシステムが構築されていることですよね。
聞いた話だと、小学校くらいから学校に行かずに毎日練習をして、そこで活躍して成績を残せばジュニアナショナルチームに行く。さらにそこで活躍すればナショナルチームのトップにというシステムで1年中卓球に専念できる。さらにそこに今まで世界チャンピオンだった方がコーチや監督でいるのでシステムが良く出来ていると思います。
ーーご自身も中国出身の邱建新さん(現木下グループ総監督)とともに戦って来られました。どんな指導が特徴なのでしょうか?
水谷:邱監督は中国ナショナルチームの練習をそのまま取り入れたようなメニューが多い。とにかくハードでキツいフットワーク練習が主流。とにかく自分を毎日追い込んでいく。フォアハンドを使って動く練習がものすごく多いです。
ーー厳しい練習を長時間こなす。これが中国が強い理由ということでしょうか?
水谷:強くなるために、すごく大事ですね。日本男子でもナショナルチームでは半数以上が青森山田(中学、高校の)出身です。あそこでの練習はとにかくキツかった。山田の出身者は「どう練習すれば強くなれるか」をみんな分かっているから卒業後も強い。
ーーあえてストレートに聞きます。どうすれば世界一の中国を倒せるのでしょうか?
水谷:僕の場合は、ワールドツアーでがむしゃらに勝つというよりは、世界選手権やオリンピックみたいな大舞台で勝つように持っていく。そういう意識でいます。
ーーリオ五輪の決勝では、それまで15連敗していた許昕(シュシン、現世界ランク1位・中国)を見事に倒されました。
水谷:特に中国選手に対しては1回勝つだけでも達成感があって満足してしまう。普段負けているから大舞台で倒したくなるというのがあるんですよね。
許昕には2009年アジア選手権でもマッチポイント取って負けていたり、リオ五輪の少し前に10-4から大逆転で負けた試合もあった。なので中国選手の中でも特に彼を大舞台で倒したいという気持ちが強かった。逆に許昕は一度も負けたことのない相手に大舞台で追い上げられて、かなりのプレッシャーがかかったと思います。
写真:水谷はリオ五輪で許昕を下した/撮影:AP/アフロ
ーーちなみに今一番倒したい中国選手は誰ですか?
水谷:馬龍(マロン)ですね。彼の卓球のレベル自体が他の中国選手と比べても抜け出ている。彼のレベルまで到達したいという気持ちは強い。
ーーリオ五輪での馬龍戦は日本の卓球の歴史を変えたのではないでしょうか?「神ラリー」として日本のメディアも連日大きく取り上げ、卓球のイメージが代わりました。
水谷:リオでの馬龍との試合のことは、今でも多くの方から言われます。あの試合みたいにいいラリーが出来るように、毎試合努力しています。
ーー「中国はなぜ卓球が強いのか?」教えて頂きありがとうございました。