【卓球・Tリーグ】平野友樹・"鬼の弟"が覚醒した「張本を倒した大会」 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

卓球×インタビュー 【卓球・Tリーグ】平野友樹・“鬼の弟”が覚醒した「張本を倒した大会」

2018.10.24

取材・文:武田鼎/ラリーズ編集部

T.T彩たまに加入が決まった平野友樹、「平野」の姓を聞けば、思い出されるのはロンドン五輪で日本卓球界初のメダルを獲得した平野早矢香、通称「卓球の鬼」だ。そう平野友樹は彼女の弟である。その「鬼の弟」がTの舞台に参戦を表明した。弟も姉譲りの卓球の実力者だ。全中で優勝した経験もあり、明治大学卒業後は実業団の名門・協和発酵キリンに所属していた。

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Tリーグは「世界レベルの選手と打ち合える絶好の機会」

だが、本人からは意外な言葉が。「結構僕は思い悩んだ時期もあって。中学校とかの実績はいいっすけど、そこからはあんまり勝てなくて、自信が砕かれたんです」。実業団の名門・協和発酵キリンでは「何か変わらなければ」と悩んでいた。そんなときにT.T彩たま・坂本竜介監督からの1本の電話が。Tリーグは実業団との二重登録が認められている。Tリーグに参加しない理由はなかった。

「試合数が少ないと強くなれない。日本リーグと日程がかぶっていない。それに世界レベルの選手と打ち合えるのって絶好の機会だな、って。李尚洙岡山リベッツ)や台湾の選手とすごいやってみたい。もちろん彩たまの選手からも学ぶことがたくさん多い」と語る。

特に同じチームのベテラン・岸川聖也について「本当に試合巧者。試合の作り方がうまい すごいっすよ」。これは以前掲載したインタビューで岸川自身も「経験で取れる1,2点があって、経験としか表現できない知見がある」と語っていた通りだ。

平野は岸川から何を学ぼうとしているのか。「練習とかしてても間の開け方とか。普通の人ならぽんぽんやるけど、点数とられはじめたら、間をとる。嫌なタイミングでサーブを出されたり」。ただ、岸川本人はこう語っていた。「確かに経験で取れる1,2点はある。でもそれは“間”だけの問題ではない」と語っていた。平野も同意する「これは表現しづらい、相手から感じる圧っていうか、オーラっていうか。漫画の世界ですよ。構えた瞬間、オーラを感じる。ここにレシーブいけない、とか。気配をすごい感じるんですよ」と表現する。平野の言葉で言えば「『テニスの王子様』みたいな話ですけど、見えない世界の戦いがあるんです。ここにイったらやられるな、みたいな。そこも卓球の深い魅力の一つなんですよ」とのことだ。

実は平野自身もTリーグ参戦にあたって姉から同様のアドバイスを受けていたという。「よく姉から言われるんです。『もうちょっと“試合する顔”ってあるよね』って。僕それがあんまりできないんですよ。でも姉はできてる。だって顔見たら鬼なんすよ?どこ攻めようかって思ったときに顔がずっと鬼だったら何してくるの??ってビビるじゃないすか。いい意味で鬼っていうワードは試合で役立っている」。ただ、肝心の“試合する顔”は一朝一夕では身につかない。「僕はミスすると“あちゃー”って顔を一瞬しちゃう。岸川さんみたいな試合巧者からすれば“つけ込める隙”でしかないんですよ。ポーカーフェイス、ポーカーフェイス…」とつぶやいているが、すぐに「平野スマイル」に戻っている。

「世界で戦える」を実感した“3位”

平野が「Tリーグに入って世界を目指そう」と決意した大会があった。それが2017年の全日本選手権だ。この大会では3位に終わっている。だが、ただの3位、ではない。

4回戦で張本智和を4−0で下し、同期のライバル・神巧也を破り、準決勝へ進出した。水谷隼にこそ破れはしたものの、オープニングから2ゲームを連取、強烈な先制パンチを浴びせた。「実力のある選手に勝てたのが自信になった。水谷さんとも善戦して“もうちょっと強くなりたい”と思うようになった。なんか突き抜けた、という感じがあったんですもっと上を目指したい、いや、目指せる、と思ったんです」。

取材の始まりにはうつむきがちだった平野だが、終わりでこれほど饒舌に変化するのも珍しい。もしかしたら卓球もハマれば手がつけられないタイプなのかもしれない。Tの舞台で「鬼の弟」が暴れまわるのはいつか。いや、その時は「鬼の弟」という呼び方は失礼だ。「平野友樹」の活躍を見届けたい。

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撮影:伊藤圭