卓球・宮﨑本部長「苦手は克服するな」 成長のための新提言 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:日本卓球協会強化本部長の宮崎義仁氏/提供:アフロスポーツ

卓球×インタビュー 卓球・宮﨑本部長「苦手は克服するな」 成長のための新提言

2020.05.03 取材・文:槌谷昭人(ラリーズ編集長)

新型コロナウィルスの世界的感染拡大の影響を受け、ITTFはワールドツアーの開催を中止、延期している。

昨年は1年中試合が続く過密日程に、選手は目先の大会に向けた調整に追われた印象があった。逆に試合が無くなるとまとまった練習時間が取れるとプラスに捉える向きもある。

こんな時期こそ、苦手を克服するチャンスではないかと日本卓球協会強化本部長の宮﨑義仁氏にぶつけてみたところ、意外な答えが返ってきた。

「苦手は克服しちゃだめなんです」。

ナショナルチーム男子監督やJOCエリートアカデミー総監督として、日本のトップアスリートを育成してきた宮﨑氏の発言の真意に迫った。

>>ITTFが狙う「卓球の商業化」 テニスに倣うWTT構想とは

試合が無くなると技術が停滞する

ーー昨年は五輪選考レースもあり、日本のトップ選手たちは毎月ワールドツアーで海外を飛び回っていました。試合に向けた調整が続くと技術強化などは難しい面もあったのでは?

宮﨑義仁氏(以下、宮﨑):まあ個人差でしょうね。大会が1ヶ月に1回ずつあるから強化できないって思う人もいるし、1回あるから集中して練習できるっていう考えもある。どっちがいいかっていうのは判別つかない。個人差もあるということですね。


写真:楽しんで練習に取り組む麻生麗名(日本生命レッドエルフ)/撮影:ハヤシマコ

ーー新しい技術習得や、苦手克服のまとまった時間が取れない中、どのように対応していたのでしょうか。
宮﨑:
トップ選手になれば試合の中で技術を覚えていくんですよ。逆にその機会がないと技術が停滞してしまう。

だから試合があればあるほど出続ければ出続けるほど、いい技術が生まれてきたり強くなっていく。

例えば3ヶ月間試合が無かったとしますよね。試合が無い中で、練習だけやり込めば強い選手に育つって思ってる人は「じゃあ一回やってみなさい、とんでもないことになるから」と思いますね。

試合がない、停滞した時間を3ヶ月も過ごしたらどちらかというと潰れちゃう。僕はそういう考えですね。

ーーそれはトップアスリート以外にも当てはまる?
宮﨑:
子どもたちも全く一緒です。卓球始めて1年間練習やって、試合に出る。まあ1回戦で負けます。よし次も3ヶ月から半年間練習みっちりやって試合出します。また1回戦で負けます。

理想は一週間ごとに試合に出すことですね。もう3回目か4回目ごろには一回戦勝ちますよ。1年経ったら地区のチャンピオンになってます。そういうもんなんです。

僕はそういう育て方を3歳4歳の子からお年寄りまでいろいろ面倒見てきて経験してますから、試合に出すってことが一番重要という考えですね。

子供はね、試合に出し続ければどんどん強くなるからね。試合で強くなる、それは一流選手も一緒。

ただボクシングとか、柔道とか、コンタクトスポーツでマラソンもそうだけどダメージを受ける競技は連続でできないですけど。

苦手なことにフォーカスするな

ーー苦手なところを克服するには?
宮﨑:
苦手なことにフォーカスしたらダメなんです。

例えば、伊藤美誠は前陣でのプレーが強みですよね。そんな彼女が後ろの引き合いが苦手だと言って後ろの引き合いを3ヶ月間強化する。彼女の卓球はどうなるか。崩れますよね。

平野美宇は、バックハンドは超高速でフォアハンドのミスが多いとします。それをオールフォアで動いてちょっと中陣にしてもっと安定とフォアハンドを強化するという練習をやったら潰れますよ。

何が言いたいかっていうと、苦手なところを3年間練習しても、他の人よりは強い特徴にならないっていうことです。そこを3年間やり続けても一般人くらいにしかならない。


写真:ブルガリアOP優勝の張本智和/提供:ittfworld

勉強でいうと、数学は100点ばっかり、国語は10点止まりという子がいたとする。

その子に国語ばっかやらしても50点しか行かない。逆に数学が50点に下がる。それをよしとするんじゃなくて、国語を捨てて、数学の100点を追い求めたら、誰も追いつけないくらい数学の天才になる。

じゃあ数学の天才と一般の人が争った時に、いや、この人には絶対勝てない。っていうのがあったらその人がチャンピオンになる可能性がある。

だから張本智和で言えば、世界一の高速バックハンドがありますよね。あんまり他の部分、例えばフットワークとフォアハンドっていう苦手なところをやり過ぎるとどうなるか。フットワークで、動きすぎる、フォアハンドで打点が下がる。超高速のバックハンド主体の張本の卓球を崩してしまう可能性がある。

苦手なところの克服っていうのは3年経っても得意にはならない。それが得意になる時には超得意な部分が消えちゃってる。超得意な部分を前に出して押し出してやれば、苦手なところは消えてくる。そういう考えなんで、得意を伸ばすしかない、と僕は思うんですよね。

もちろん苦手な部分を全くやらないわけではない。

バックハンドが得意な選手がフォアハンドの練習しないわけもない。フットワーク練習だって、フォアハンドのフットワーク練習が基本になる。

フォアハンドが得意な人は、フットワークとフォアハンドを特にやれば、フォアで動く機会が多くなるから、バックを使う機会が少なくなる。それはそれでいいんだけど、逆にバックハンドが得意な子がフットワークをやりすぎると、弱くなっちゃう。

バックハンドのフットワーク練習は難しい。どうやったって卓球って両ハンドで打つから。でもバックハンドが得意な人はバックハンドを主軸にやるべき。

だから試合が無いからって、3ヶ月間も苦手なことばかりしていたら、3ヶ月後、見てみてください。間違いなくすごく弱くなってるから。

ーー試験なしでずっと苦手科目の勉強をしてるってことですね。
宮﨑:
そう。それだと自分は面白くないし、超一流まで行かないですよね。

人並みにやっと持ってこれるかどうか。苦手なことばかりやってるとコーチには悪い!悪い!悪い!なんでできないの?ってずっと言い続けられて、やっと少しましになってきたなという頃には「得意なところは全然やってません、苦手の克服ばっかりやってきました」では、もう試合では戦えないんですよ。

>>宮﨑義仁氏に聞く あの日、日本卓球協会が中国代表の受け入れに動いた理由

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