【水谷隼#3】「張本が3人いないと安心できない」水谷が今の若手に思うこと | 卓球専門WEBメディア「Rallys(ラリーズ)」
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2019.03.26

【水谷隼#3】「張本が3人いないと安心できない」水谷が今の若手に思うこと

写真:水谷隼/撮影:伊藤圭

2019年の1月、水谷は全日本選手権で10回目の優勝を達成した。言うまでもなく前人未到の偉業である。しかも「球が見えない」という困難を抱えての優勝、この快挙に水谷が抱くのは危機感だ。「全盛期の“3割”の僕でも優勝できてしまうようでは、日本の若手がまだまだっていうこと」とまで言い切る。30歳を迎え、中堅からベテランの域に差し掛かった今、若手たちに何を思うのか。

「張本3人いないとだめだね」

「木造、大島と対戦したけど、若手はまだまだ。張本があと3人くらいいないとダメですね」と冗談めかす。


写真:水谷隼/撮影:伊藤圭

水谷が絶対的エースとして君臨できたのは、身体的な強さやテクニックだけが理由ではない。水谷の強さは「戦術の巧みさ」にある。例えば今回の全日本選手権、実は水谷は6回戦の上田仁戦、準決勝の木造勇人戦、決勝の大島祐哉戦、いずれも1ゲーム目を先取されているのだ。だがあれよあれよと言う間に水谷のペースになり、気づいた頃には逆転。そんな老獪な試合運びが水谷の強さだ。実は1ゲーム目を取られることも水谷の中では“計算どおり”であることがあるという。

「相手の弱点を1ゲーム目捨ててでも冷静に見るときはある。フォア打ちとかバックとかしたらボールの重さとか分かるじゃないですか。ドライブの回転とかを見て、“あっ、この回転だったら自分がしっかり待っていればブロックできるな”とか。彼らには冷静に分析すれば勝てるんだっていう自信はあった」

その自信を裏打ちするのは「引き出しの多さ」だ。「僕は他の選手より引き出しが多い。その数の多さは土壇場で勝負を分ける」と豪語する。引き出しを増やすために必要なこと、それは「海外での勝ち」だ。「Tリーグももちろん大事ですが」と前置きした上で、「世界を目指してほしい。全日本選手権って優勝者以外はなかなか評価されない。でも世界の舞台では中国選手を一人でも倒せれば、一気に評価が上がる」と説明する。

その好例として水谷は吉村和弘の名前を挙げる。「4月の世界選手権に吉村が選ばれたのは、香港オープンで優勝したのと中国の左の林高遠(世界ランキング3位)に勝ったのが大きかった。そうやってチャンスをモノにして、引き出しを増やしていくんです」。

水谷の「ワースト3の敗北」とは

引き出しを増やし、技を磨いただけでは不十分だ。「中でも最も鍛えるのが難しいのがメンタル、つまり心の部分」と水谷は指摘する。「実は僕のメンタルも弱い方で。負けた時の試合がすごく印象に残るタイプ」と自認する。事実、取材中、水谷が過去を振り返ると出てくるのは負けた試合ばかりだ。“勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし”の格言の通り、敗北から学ぶことの方が多いのだろう。

「特にメンタルの弱さを痛感した試合があった。例えば全日本選手権で2012年に吉村(真晴)に負けたときとかセットオール10-7から負けたし、その翌年(2013年)丹羽との決勝も3-1でリードしていたところから負けたりとか、大事な試合で逆転負けしちゃうことが多かったんですよ」

写真:水谷隼/撮影:伊藤圭
写真:水谷隼/撮影:伊藤圭

最近では3月のトップ12の張本戦を「ワースト3に入るできだった」とツイートし、話題になった。ちなみに水谷は「ワースト3の他の2つはロシアリーグでの1試合と、2010年にボルに負けた試合」と明かす。「大体良くない試合のときは“無意識”で打っちゃうんですよ。考えずに“なんとなく”やって、気づくと負けてる。そういう試合はダメですね」。

もちろん人間である以上、メンタルにはムラがある。だがそのムラを減らしていくことがアスリートとしての強靭さにつながる。とは言え“メンタル強化”と言ってもそう簡単なことではない。「確かに答えはない。でも一つだけ言えるのは高校卒業してから練習量が落ちる選手が多すぎる。楽な方に流されすぎだよ」と喝を入れる。

「飢え」こそがアスリートを強くする

確かに多くの選手が高校時代に、厳しい監督や先輩の元で卓球浸けの日々を送る。水谷の母校・青森山田でも最高の設備が整っており、その気になれば24時間できる環境にある。「でもそこから大学になると遊びを覚えちゃったりして練習量は3分の1くらいになる。その間世界のトップクラスは“努力プラスアルファ”のところで勝負している。これじゃあね…」。

写真:水谷隼/撮影:伊藤圭
写真:水谷隼/撮影:伊藤圭

ならば水谷はどうだったのか?「僕は友達がいなかったから。ホントに(笑)!卓球以外に友達いないんですよ」と冗談めかす。「でも、20代前半は“飢えている”ことが必要なんだと思います」。ならば20代の水谷が「飢えていた」時代の話を聞きたい。

「やっぱり僕はロシアに渡ってすべてが変わりました」(続く)

水谷隼#4 へ続く

水谷隼#1、#2はコチラ

文:武田鼎(ラリーズ編集部)
コメント
14
あき
2019-04-08 07:48:55
昨日のアジアカップ横浜を決勝戦と3位決定戦を見て、中国との差が歴然とあることを実感しました。
水谷選手の言ってたことが改めてわかったというのが正直な気持ちです。
張本選手は怪我をしていたので、本当の実力ではなかったかもしれないけど…。
あき
2019-04-07 19:07:04
「引き出しが多い」水谷選手のプレーはTリーグやワールドツアーを見てて、ワクワクさせられます。
むーくん
2019-04-06 23:37:29
張本が3人。冗談のようで、水谷選手なりの深い考えがあるようにも感じられます。水谷選手の言葉には自然と惹きつけられますね。
かい
2019-04-06 00:04:46
水谷選手の、冗談の中に真意を込める感じが好き。実際、張本選手以外に世界のトップで活躍するにほ男子の若手はあまりいない。ただの冗談で終わらせられない状況が今の日本にはある。
水谷選手の言葉には不思議と人を惹きつける力があるように思う。「世界を目指して欲しい」という話も、続く話を聞いていくとどんどん説得力が増していく。それだけ、経験や苦労の多いここまでの卓球人生だったんだと思う。このような存在がいる事は選手にとっても日本卓球界にとっても素晴らしいことであり、これからもずっと居続けて欲しいし卓球界を盛り上げて欲しい。
たまご
2019-04-05 21:31:01
今年は全日本、トップ12 どちらも間近で観せて頂きました。

どの試合も1ゲーム取られても徐々に水谷劇場になっていく。
見応えがありましたが、トップ12の張本戦だけは解せませんでした。

為す術なく終わっていってしまった。
そんな印象でした。

あの時点でもうサングラスをつかっておられたので目の異変についてもっと深刻に受け止めるべきだったと反省しています。

それでも尚自分に厳しくいられる水谷選手の強さに脱帽です。
KitKat
2019-04-04 22:05:43
水谷選手の引き出しの多さが観ていて楽しいです。
そこで勝った時は「見たか-!」とひとり言!
マリオネット
2019-04-04 21:29:21
水谷選手の言葉には同じ卓球をプレーする者としてとても共感出来ます。何も考えずプレーするのは一番駄目ですね。仮にそれで勝っても何も得るものはありません。それなら考えてプレーして負けた方がよほど得るものがあります。考えてプレーすることで引き出しは自然と増えて行く。ただその引き出しをどれだけ上手く活用出来るか。ここがアマチュアとプロとの差なのかなと感じています。水谷選手の強さは変幻自在の引き出しの使い方の上手さ。これに尽きますね。
かいと
2019-04-04 15:37:41
たしかに引き出しの多さは大切ですね
水谷選手はその点が勝っていますね
@san5nana
2019-04-04 07:17:48
相手の弱点を1ゲーム目捨ててでも冷静に見るときはあるってのは大胆な戦略!水谷しかできない戦略!
@tomotomo_zu
2019-04-04 00:25:31
これからも水谷選手が活躍するのを願っています。
ひさご
2019-04-03 23:42:11
試合の裏側を知れて勉強になりました。
これからのご活躍を期待してます。
Keita
2019-04-03 23:07:51
日本の卓球界を牽引する水谷さんだからこそ分かるとても大事な意見だと思いました
こう
2019-04-03 22:42:35
誰だお前って感じになりますが、水谷選手に同感出来ます。
自分も、ただ何も考えずに試合をしていたら負けてた。みたいな事が
あるので。そんなことを考えられる水谷選手はやはり凄いですね!!
そら
2019-03-26 13:17:22
水谷はやっぱ日本を代表する選手だなぁ
改めてすごいなって思います
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