なぜ中国は卓球が強いのか?<#7 サティアン・グナナセカラン(インド)編> | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:サティヤン・グナナセカラン(岡山リベッツ)/撮影:伊藤圭

卓球×インタビュー なぜ中国は卓球が強いのか?<#7 サティアン・グナナセカラン(インド)編>

2020.12.13

取材・文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)

「なぜ中国は卓球が強いのか?」

そんな卓球の原点とも言える質問を専門家たちにぶつけ、中国越えのヒントを得ようという本企画。

第7回は今季からTリーグ・岡山リベッツに所属しているインド代表のエース、サティアン・グナナセカランを直撃した。2018年に日本を破りインド初のアジア競技大会銅メダルを獲得した立役者は中国をどう見るのか?

「中国卓球は上から下まで」 日本とインドは?


写真:サティヤン・グナナセカラン(岡山リベッツ)/撮影:伊藤圭

ーー中国の卓球はなぜ強いのでしょうか?
サティアン・グナナセカラン(以下、グナナセカラン):
システムが素晴らしい。この一言に尽きます。

ーー具体的には?
グナナセカラン:
中国は長い年月をかけて卓球に投資をしてきた。沢山の大きな卓球センター、沢山のプレーヤー、沢山のコーチこれが世界一揃っているから世界一強い。

しかもこれがトップアスリートだけではなく、全ての年代・カテゴリにまで行き渡っているのがすごい。5歳から強くなるためのシラバスがあるのが中国の強さではないでしょうか。

ーー日本についてはどう見ていますか?
グナナセカラン:
日本も素晴らしいシステムを持っている。トップレベルが特に素晴らしい。近年だとトップアスリートに投資をして、岸川、水谷のような素晴らしいプレーヤーが出てきた。その後も張本が続いているが、ずっと強いままで行けるかどうかはシステム次第だと思う。

20年後の中国超え目指すインド


写真:サティヤン・グナナセカラン(岡山リベッツ)/撮影:伊藤圭

ーーインドが中国に追いつくためには?
グナナセカラン:
中国のようにやるにはもっと多くの投資が必要で、そのためにはもっとお金がいる。

中国がずっと強いのはGrass Route(草の根)にまで卓球が行き渡っていることがある。プレーヤーの母数が多いことに加えてトレーニングはハードだし、環境が整っている。

インドも国の人口が多いから、草の根にまで卓球が広がっていき、これから卓球人口が増えていくと思う。国内でもやっと政府がスポーツにフォーカスし始めていて、投資する方針を固めつつある。ちょっとずつでも中国のシステムに近づけて行きたい。

ーーでは中国の背中が見えてきた?
グナナセカラン:
そんなに簡単なことではない。中国みたいになるには、とても長い道のりが必要。1~2年では到底無理で20年かかる話だと思ってる。1950年代までは中国は強くなかった。その後、国を挙げて投資をして、それを継続して、今や世界最強になっている。

インドは最近ようやく投資を始めたばかりだ。我々はとても学習能力が高いという自負があるから、将来はチャンスがあると思う。

インド卓球、急成長の理由


写真:サティヤン・グナナセカラン(岡山リベッツ)/撮影:伊藤圭

ーーインドが急成長できている理由は?
グナナセカラン:
政府がスポーツの重要性を理解し始めたことが大きい。以前は強い時だけ、1年だけサポートをして支援がストップすることが多かったけど、今は強化のシステムが出来始めている。12歳からトレーニングやフィットネス、メンタルコンディショングも取り入れていて、海外にもどんどん行かせる。僕の時はそういうことは無かった。

インドではずっと勉強がメイン、スポーツはエキストラという時代が続いてきたけど、やっとスポーツもプロフェッショナルの時代になってきた。

もともと強かったクリケット、バドミントンだけでなく、サッカー、ボクシング、レスリング、射撃もオリンピックのメダル圏内になっている。卓球も頑張らないと。

ーー中国に次ぐ国は?
グナナセカラン:
やっぱり日本だと思う。日本の子供たちは本当にラッキーで恵まれていると思う。スポーツへの理解があって、クラブもプレーヤーも多い。そして目標にすべき水谷や張本のようなスター選手も身近にいる。僕もリスペクトしている国で、だからTリーグに来たいと思ったんだ。15年後、20年後に世界の卓球シーンがどうなっているか楽しみだね。

【連載】なぜ中国は卓球が強いのか?

>>水谷隼や丹羽孝希が語る!なぜ中国は卓球が強いのか

グナナセカランインタビューはこちら

>>初のインド人Tリーガー・グナナセカランは“IT系”の頭脳派だった

>>グナナセカラン「日本に勝ったら首相に呼ばれた」インド卓球の歴史が変わった瞬間

>>グナナセカラン「ヨガで勝つ!」インド卓球のエースに学ぶ “印度式”成功哲学とルーティン