インターハイ2連覇、全日本ジュニア優勝とジュニア世代のタイトルを総なめにしてきた戸上隼輔。2018年10月に開幕したTリーグにもT.T彩たまから参戦し、ファーストシーズンでは2試合に出場した。
その中の1試合が全日本10度優勝と圧倒的実績を誇る水谷隼との試合だ。戸上は水谷を相手に持ち前の超攻撃型スタイルを貫き、ゲームカウント3-2の14-12の大激戦を制し金星を挙げた。戸上は水谷戦の勝利で「人生が変わった」と語る。その言葉の真意とは。
人生を変えた水谷隼との試合
写真:戸上隼輔/撮影:伊藤圭
2018年8月にインターハイ初タイトルを獲得した勢いに乗る戸上が、10月開幕の、TリーグファーストシーズンからT.T彩たまに加入した。「橋津先生からも『行ってもいいんじゃないか』とアドバイスもいただいたので、せっかく1年目から出られるなら。こういう機会はめったにない。」と参戦を決めた理由を明かす。
所属したT.T彩たまは海外選手との練習が新鮮だったと明かす。「海外選手はいつも相手側なので、まさかチームで練習できるとは思っていなかった。やっぱり新鮮でした。鄭栄植(チョンヨンシク・韓国)選手がほんとに性格もいい選手で印象的」と笑顔をこぼす。
写真:T.T彩たまへの印象を語る戸上隼輔/撮影:伊藤圭
2019年2月2日、木下マイスター東京戦の第2マッチで戸上は水谷と対戦した。「ほんとに無我夢中で何にも考えずに」と必死で水谷に喰らいつくも、ゲームカウント1-2と後がなくなる。
「出だしが悪くてやばいと思った。でもこれが世界なんだなと自分自身受け止めて、そこから自分のプレーに切り替えることができた」と第4ゲームを12-10で制し、迎えた第5ゲーム。戸上が握った実に4回目のマッチポイントで、水谷のバックドライブがオーバーし、14-12で戸上に勝利の女神が微笑んだ。
「あの試合を勝てたことによって人生が変わった」と水谷戦を卓球人生のターニングポイントとして挙げる。
写真:戸上隼輔/撮影:伊藤圭
Tリーグで水谷から勝ち星をあげた直後、ポルトガルオープンで当時世界ランキング21位のグロート(デンマーク)と対戦した。「水谷選手に勝ったという自信があって、グロート選手のプレッシャーや圧力に臆さず挑めた」と自身の変化を実感し、世界ランク200位台だった戸上は、見事格上相手に白星をもぎ取った。
「五輪を目指したい」見つめる先は2024年
写真:戸上隼輔/撮影:伊藤圭
Tリーグで水谷に勝利した以降、戸上は「試合やるたびに成長というか自信がついた」と飛ぶ鳥を落とす勢いで実績を積み重ねた。5月のクロアチアOPで宇田とのダブルスで国際大会初タイトルを獲得すると、7月のアジアジュニアでもダブルス優勝、8月のインターハイではシングルス・ダブルス2冠を成し遂げた。
写真:世界ジュニアでの戸上隼輔/提供:ittfworld
9月のアジア選手権では野田学園の先輩・吉村真晴(名古屋ダイハツ)とダブルスを組み、卓球帝国・中国の樊振東(ファンジェンドン)/許昕(シュシン)ペアをフルゲームまで追い詰めた。「ラリーを何回もできて楽しかった。(吉村は)頼り甲斐のある先輩なので、頼っていこうという気持ちでいった」と中国ペアとの激戦を振り返った。
11月末の世界ジュニア卓球選手権でもシングルスで3位に入賞し、国外でも通用する実力を証明した。
写真:3150ポーズも披露/撮影:伊藤圭
国内外で実績を積み重ねる戸上もコートを離れれば普通の18歳だ。「卓球ユーチューバーを最近よく見てて。めっちゃ面白くてファンです(笑)」と笑顔を見せる。
そんな戸上が見据えるのは2024年、大学4年で迎えるパリ五輪だ。
「本当にここまでこれると思ってなかった。でもここまできたんだったら、五輪を目指したいという気持ちがどんどん強くなってきた。2024年を目指したい」。
戸上は年齢的にも体力と経験のバランスがアスリートとして一番良い状態でパリ五輪を迎える。水谷が2016年リオ五輪でメダルを獲得し日本男子卓球界の歴史を変えた。「あの水谷選手に勝ったんだから目指さなきゃいけない」と水谷の意志を継ぎ、次世代が2024年パリ五輪を目指す。若き新星・戸上の戦いから今後も目が離せない。
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