「卓球で生きていく」 "パリ世代三銃士"宇田幸矢・戸上隼輔・木造勇人、覚悟と決意の挑戦 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:宇田幸矢(写真左)・戸上隼輔(明治大学/琉球アスティーダ)/撮影:伊藤圭

卓球×インタビュー 「卓球で生きていく」 “パリ世代三銃士”宇田幸矢・戸上隼輔・木造勇人、覚悟と決意の挑戦

2020.10.18

この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

水谷隼(木下グループ)らがリオ五輪で団体・シングルスとメダルを獲得し、日本男子卓球界を変えた。東京五輪で代表を退くと明言している水谷からバトンを受け継ぎ、日本卓球界の次世代を担うのは一体誰なのか。

その座を目指し、2024年パリ五輪代表を狙う“パリ世代三銃士”がいる。木造勇人(愛知工業大)、宇田幸矢、戸上隼輔(ともに明治大)だ。学生卓球界トップで活躍する3選手は、Tリーグ3rdシーズンをともに琉球アスティーダでプレーする。

仲間でもありライバル、そして“卓球で生きていく”と覚悟を決めている3選手の今に迫った。(取材:槌谷昭人/ラリーズ編集長)

>>琉球アスティーダ特集 “琉球から全国行脚でファン交流” 吉村真晴、和弘兄弟が目指す卓球普及の形とは

琉球に“パリ世代三銃士”が集まった理由とは?

――琉球アスティーダに3選手が集結されましたね。木造選手は昨年から、宇田選手、戸上選手は今季からの加入です。どうして琉球に?


写真:宇田幸矢/撮影:伊藤圭

宇田幸矢(以下、宇田):もちろん自分の強化につながると思いましたし、チームで一丸となって盛り上げて勝とうという雰囲気が好きだったので。社長の早川さんのおかげで琉球の「楽しくて選手を大切にする雰囲気が出てる」というのもありますね。


写真:戸上隼輔/撮影:伊藤圭

戸上隼輔(以下、戸上):僕もほぼ一緒なんですけど、さらに周りには僕と同じ野田学園出身の選手や海外選手がたくさんいて、本当に自分のやりたいことができるチームだなと。なので琉球でプレーしたいと思いました。


写真:木造勇人/撮影:伊藤圭

木造勇人(以下、木造):僕は去年からプレーさせていただいています。複数のチームからお声がけをいただいた中で、琉球の張一博監督の勧誘がとても熱心でした。そして試合に出られるチャンスを求めて選んだ部分もあります。

3人それぞれの印象は?

――続いては2つお伺いさせてください。コロナ禍という特殊な状況での最近の生活についてが1つ。もう1つは3人がお互い思うそれぞれの印象について。


写真:宇田幸矢/撮影:伊藤圭

宇田:明治大学に入学して、練習場はすごい綺麗ですし、チームメンバーの練習に対する集中力や意識がすごく高いので、とても充実した生活が送れています。

戸上についてはは高校生になってどんどん強くなっていった。(全日本ジュニア決勝で)同級生として負けたことは悔しいですけど、ライバルとして切磋琢磨できる同級生が出てきたのは、自分の成長に繋がると思いました。

木造さんは、小さい頃から合宿でも一緒で一緒の大会にも出てる。頼りになりますし、仲が良い。Tリーグを通じて一緒のチームになれたのは嬉しいし楽しみです。


写真:戸上隼輔/撮影:伊藤圭

戸上:明治大学に入ってみて、施設が全て整っているすごく良い環境だなと思ってプレーしています。

宇田は小学校からあまり変わらず、ずっとトップに立って学年を引っ張ってくれる。今も(明治大学の)部内で引っ張ってくれてます。卓球面でも宇田はずっと海外での大会を経験して、結果を残している印象がありました。

木造さんは、高校のときにインターハイでライバルとして戦って、Tリーグでは同じチームになるのは良い経験になります。自分が参考になる技術を身近で見させていただけるのはTリーグでしかないこと。アドバイスをいただいたり、相談させていただいてるので、頼れる先輩です。


写真:木造勇人/撮影:伊藤圭

木造:今は特にバックハンドと身体を鍛えています。パワーが他の人よりも劣っているので、肉体改造をしているところです。

昔からこの2人は絶対来るだろうなとは思っていた。全日本も優勝(宇田)と3位(戸上)。あとは僕が追い上げるだけなので、逆に気が楽になって、少し開き直った感じですね。

もちろん今結果は彼らの方が上ですし、(Tリーグで)試合に出るとしたら監督も(宇田、戸上を)選ぶと思います。でもここで自分が成長しなければいつ成長するのか。来てくれて嬉しいですし、あとは自分次第かなと考えていますね。

パリ五輪を目指すきっかけ 2024年までのロードマップ

――皆さんがパリ五輪を目指そうと明確に思ったきっかけは何かありますか?また、2024年までの思い描くロードマップも教えて下さい。


写真:宇田幸矢/撮影:伊藤圭

宇田:高校1、2年のときに、このままの成長速度だったら全然出られないと思った。そこから練習量を増やしたり自分に厳しくしたりし始め、全日本(優勝)や世界ランクも伸びてきたので、だんだんパリ五輪を目指すようになりました。

(全日本決勝で対戦した)張本は東京五輪に内定していますし、世界ランクも4位で世界のトッププレーヤー。その選手に大舞台で勝つことができたのは、自信にも繋がり、もっと努力すれば(五輪代表の)チャンスは出てくると思っています。

大会がないのですがこの1年で世界ランク20位になる実力をつけたいと考えています。日本はレベルが高いので15位には最低でもいないと(五輪代表にはなれない)。


写真:戸上隼輔/撮影:伊藤圭

戸上:僕は高1のインターハイで自信になる結果(シングルス準優勝)を出して、橋津(文彦)先生(野田学園高校卓球部監督)から「東京五輪は難しいけど、その次のパリをお前は目指せる」と助言いただいて、意識し始めました。

ここ最近は世界でも自信の持てるプレーができているので、今は以前よりも強く目指そうと思うようになりました。

でも、海外の実績がここ最近でしかとれていない。ここ1年で世界ランク50位に入りたい。その後は、世界選手権のメンバーに選ばれるくらいの実力をつけたいと考えています。


写真:木造勇人/撮影:伊藤圭

木造:きっかけはあまりなくて、昔からの夢や目標であったので、五輪に出たいという目標でずっとやっています。自分の年下がどんどん強くなってきているので、負けないように日本代表として戦っていきたいと思っています。

昨季は木下戦で丹羽(孝希)さんに勝ったときに1つ自信を得ました。その前に水谷(隼)さんに勝っていて、「ここで丹羽さんに勝てたら」と自分の中でも思って、見せつけてやろうと。意地でも勝ちたかった。すごい自信になりましたね、僕の中では。

それから東京五輪以降の世界ランクやワールドツアーを考えて目標を作っていたんですけど、今はいつ始まるのかわからない状況なので目標を立てるのが難しい。ただ、来年からは一気に行きたいと思っています。

世界を転戦し国内でも戦うハードな卓球アスリートとして

――ワールドツアーが再開されたら、毎月世界を転戦しながらTリーグ、学生リーグにも参加、大学の授業にも出る。なかなかハードな日程ですよね。飛行機は年間何回乗りますか?


写真:宇田幸矢/撮影:伊藤圭

宇田:今のランキングシステム的には試合に出た方が有利ですが、海外に何回も行くのはハードです。

飛行機はざっと1年で50〜60回は乗りますよね。往復で2回と数えると20大会行ったら40回は軽く行きますし、それに1回の移動で2~3回乗り換えがあることもあるので。

去年、ドイツオープン終了後、そのままTリーグに行ったこともありました。試合後すぐじゃないと飛行機が間に合わなかったので、ホテルに着いて15分で荷物まとめてシャワー浴びてチェックアウトして…。ドイツの国内線で2時間、ドイツから東京へ12時間、東京から沖縄に2時間。23時半くらいにホテル着いて次の日試合で、これが1番ハードでした。

時差で夜も眠れない中、次の日試合で大丈夫なのかなと不安はすごくありました。当日、試合すると意外とできたので、行った甲斐はありましたが、あれほどハードなことはなかなかないですね。


写真:戸上隼輔/撮影:伊藤圭

戸上:去年まではワールドツアーと高校の大きな大会の2つをメインにしてやっていこうと、出場資格が出たものは全部出てました。

海外に行くのは良いんですけど、やっぱり移動が大変でした。僕は東京に着いて、そこからもう1回国内線で山口までという移動が1番キツかった。誰もいなくて孤独だし、着くのは夜だし、それが1番キツかったです。


写真:木造勇人/撮影:伊藤圭

木造:当時は全然思わなかったですけど、振り返ると日程的にはめちゃくちゃ忙しかったなと改めて感じますね。Tリーグの試合が終わって、そのまま(日本実業団リーグの)ファイナル4に行ったときはすごかったです。

岡山で試合した後、そのまま琉球アスティーダのスタッフに車で徳島まで夜中に送ってもらって、深夜1時前に着いて次の日朝から試合。これは結構キツかったですね。

「卓球で食っていく」覚悟 支えてくれるファンへの思い

――アスリートとして「卓球で稼いで食っていこう」と決めたきっかけはありますか?また、今回、『Unlim』というファンからお金という形で応援していただくスポーツギフティングサービスを利用されます皆さんにとって、ファンの応援が力になった瞬間はありますか?


写真:宇田幸矢/撮影:伊藤圭

宇田:幼少期から、世界を目指せというのが父の教えだった。なので僕は卓球をやり始めたときですね。

また、僕が応援されて力になったと感じたのは去年のTリーグの試合です(木下マイスター東京在籍時)。特にホームで木下は、コールもあるし結構盛り上がって観客が多い。そういうときは、自分のパフォーマンスが上がりやすいですし、集中力も高くなります。

でも今回のようにわざわざお金を出して応援してくれるのはすごくありがたい。例えば、いただいた支援金を遠征費に使って、その大会で結果を出す。それが使命だと思っています。卓球でしっかり全力を尽くして使わせていただきたいと思います。


写真:戸上隼輔/撮影:伊藤圭

戸上:僕は、卓球をやめたいと思ったこともないですし、やっていたらいつの間にか覚悟して卓球人生を送ろうと決めていた。どんどん自分の実力を上げていって、支援をいただけた分、いつか結果で恩返ししたいなと思います。

僕は声援というよりは、試合後にファンの方から声をかけていただいたり、サイン書いてくださいと言われたり、お土産をもらったりしたときに感じました。今まで僕はホームで勝ったことがなくて、全部アウェーで勝っている。アウェーで試合後にファンの方に声をかけていただけるのが一番嬉しいです。


写真:木造勇人/撮影:伊藤圭

木造:ファンの声援については、僕、声援があまり聞こえないんですよね(笑)。

でも木下戦で1度だけ、めちゃくちゃ大きな声で「頑張れ」と1人のファンの方が言ってくれたのはしっかりと聞こえました。全然知らない方だったんですけど、必死に応援されて、自分の中でも気持ちが入りました。そのときの試合が、水谷さんと戦って勝ったときなので。

琉球からパリへ

日本卓球界の次世代を担うべく、木造、宇田、戸上は三者三様の卓球人生を歩む。

だが、目指す道は同じ。パリ五輪だ。

“卓球で生きていく”と覚悟を決め、日本の最南端に位置する琉球アスティーダから人生を懸けて戦い続ける。

パリ五輪を目指す木造勇人、宇田幸矢、戸上隼輔を応援しよう


※スポーツギフティングサービス「Unlim」とは…①競技活動資金に充て新たな挑戦をしたい、②自身の活動だけではなくスポーツや競技そのものを盛り上げていきたい、③スポーツを通じて社会に貢献したい、といったさまざまな思いを持つアスリートやチームに対して、金銭的に支援するサービスです。

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