「世界卓球は8:2、卓球ジャパン!は3:7」とは?【平野早矢香に聞く】(第5話/全5話) | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:平野早矢香氏/提供:田口沙織

卓球インタビュー 「世界卓球は8:2、卓球ジャパン!は3:7」とは?【平野早矢香に聞く】(第5話/全5話)

2020.08.29

この記事を書いた人
1979年生まれ。2020年からRallys/2024年7月から執行役員メディア事業本部長
2023年-金沢ポート取締役兼任/軽い小咄から深堀りインタビューまで、劇場体験のようなコンテンツを。
戦型:右シェーク裏裏

いよいよ全5回のインタビュー記事も、最終話を迎える。
「卓球ジャパン!」収録開始前に時間をもらったインタビュー時間は、平野早矢香氏から繰り出される質の高い答えで、あっという間に時間が過ぎてゆく。
取材は終わったが、スタジオ収録も見学させてもらいながら、“卓球を伝える”ということについて考えた。

>>「選手は五輪に命懸け。今の私はコメントが毎回勝負」【平野早矢香に聞く】(第4話/全5話)

世界卓球は8:2、卓球ジャパン!は3:7のバランスで

――平野さんが話すとき、具体的に視聴者の卓球レベルって想定しているんですか
平野
:100人の方がいて、100人全員が完璧って思う解説ってないと思うんです。
この人にとっては物足りないけど、この人にとってはわかりやすいっていうことがあると思うので、そのバランスをとっておくっていうのが大事だなと。


写真:平野早矢香氏/撮影:田口沙織

普段、世界卓球の解説などでは、8割くらいは初心者の人が分かるように。でもそのなかに2割、ちょっとわかんなくてもいいけどこんなこともあるんだっていう高度な要素も入れる。

はじめは9:1だったのを、今は8:2にしています。もっと卓球ファンが増えれば7:3とかになってもいいと思います。野球とかと同じです、みんながいろんな用語を使う。卓球も今は、チキータってみんな言うようになりましたよね。

卓球ジャパンはまた違って、6、7割は普段、卓球の関係者と話している感じで話してます。でも残りの3割は絶対忘れてはいけない。そういうバランスを意識して話してます。


写真:平野早矢香氏/提供:田口沙織

番組プロデューサーにも聞いた

卓球専門メディアとしても共感できる話だ。
番組収録の合間を縫って、番組プロデューサーの柳澤健一郎氏にも制作上の狙いなどを聞いた。


写真:柳澤健一郎氏(「卓球ジャパン!」番組P)/撮影:田口沙織

――そもそも番組スタートのきっかけは何だったのでしょうか
柳澤
:世界卓球の中継局として、面白い試合はたくさんあるのに、中継枠ではとても紹介しきれない。もっと有効活用しようよ、という気持ちが一つ。

もう一つは、卓球はこんなに面白いんだけど、実際の試合の中継では、展開が早くて魅力を伝えにくい。実況も解説も。だから、もう少し、ゆっくりじっくり伝えたいな、という思いがありました。

――現在はどういう方針で制作していますか
柳澤
:2年以上やってきて、もう少し踏み込んでも良いのかなという気になっています。
“卓球は詳しくないけどいいですか?”と言いながらもMCを引き受けてくれた武井さん(武井壮)がこんなに詳しくなってきていることからも(笑)、もっとレベルを上げていった方が出演者も満足してくれる。

そう考えたときに、僕らの場合のさらなるレベルアップは、広い層にたくさん、ではなくて、もっと卓球ファンが「うんうん」って頷いてくれる、より深い方向を目指そうと考えています。

――MCとしての平野早矢香さんはどう見ていますか
柳澤
:本当に喋れる人だなと(笑)。卓球という非常に奥が深いスポーツを、わかりやすく言語化してくれる人は、正直、女子では平野さん以外考えられない。ありがたいです。

ずっと一緒にやってきましたが、今でもスタジオで見ていて、すごいなあと思います。


写真:柳澤健一郎氏/撮影:田口沙織

――柳澤さん自身と卓球の関わりは
柳澤
:世界卓球がテレ東で放送が始まるとき、編成部にいて卓球を担当していました。そこから、なんだかんだ卓球中継にはずっと関わってきたので、今、ワールドツアーでも世界卓球でも日本選手が当然のように最終日に残っている今の状況は、とても感慨深いです。

――Rallys読者にも一言お願いします
柳澤
:常々、僕らもRallysさんの記事には勉強させてもらってます。大会報道も、戦術面の記事も。
オリンピックが一年延期にはなりましたが、今、卓球文化が高まってきている中なので、ぜひみんなで卓球を盛り上げましょう。

「少しずつ楽しんでる感覚で話せるように」

最後に、平野早矢香氏自身にも、今後の話を聞いておきたい。

写真:平野早矢香氏/撮影:田口沙織

――番組開始時と比べて、平野さん自身の「ここは成長したな」という部分と「ここはまだ課題」という部分はありますか
平野
:回数を重ねることによって、少しずつ、構えずに試合を見ながら楽しんでる感覚で話せるようになったかなって思います。

でも逆に、私の主観が入りすぎてないかなって思うときもあって。それは課題というか反省です。見ている人はいろんな角度で見ているわけだから、もうちょっと違う角度から私がコメントできないといけないんじゃないかなって思うときはあります。こういう話に寄りすぎちゃったかなとか。まだまだです。


写真:平野早矢香氏/撮影:田口沙織

最後を反省で終わるところも、平野氏らしい、次への歩みを感じさせてくれるインタビューだった。
思えば、「卓球ジャパン!」も、会話のラリーで構築されていく番組だ。“限られた時間の中で自分の言葉で伝える”技術を、日々磨いているのだろう。

卓球が”見るスポーツ”としても大きく進化しようとする今、伝える人間の仕事は、これまでになく多くの役割を求められるだろう。

現役時代は“鬼”として日本女子卓球を牽引した平野氏が、今度は柔らかな笑顔で卓球と社会を繋いでいくことを予感した。

「卓球ジャパン!」放送概要


写真:『卓球ジャパン!』(写真右端ゲストの藤沼亜衣)/提供:BSテレ東

放送局

BSテレ東

日時

毎週土曜夜10時

出演者

武井壮
平野早矢香
福田典子(テレビ東京アナウンサー) 
竹﨑由佳(テレビ東京アナウンサー) 
<8/29(土)ゲスト>
藤沼亜衣(元日本代表)

平野早矢香さんインタビュー


写真:平野早矢香氏/撮影:田口沙織

>>最近は「卓球ジャパン!」の鬼と呼ばれて【平野早矢香に聞く】(第1話/全5話)

>>「ホカバのライバルは今日の友」【私のホカバ時代・平野早矢香】(第2話/全5話)

>>「試合のない今、大切な二つのこと」【私のホカバ時代・平野早矢香】(第3話/全5話)

>>「選手は五輪に命懸け。今の私はコメントが毎回勝負」【平野早矢香に聞く】(第4話/全5話)