文:ラリーズ編集部
2月18日〜23日にかけて、ハンガリーオープンが開催された。男女ともに東京五輪代表候補選手をはじめとする多くの日本選手が参加し、男子シングルスでは張本智和(木下グループ)が、女子シングルスでは伊藤美誠(スターツ)がそれぞれ優勝を果たした。
また、男子シングルスで宇田幸矢(JOCエリートアカデミー/大原学園)が準優勝、女子シングルスで石川佳純(全農)がベスト4、女子ダブルスでは平野美宇(日本生命)/石川ペアが優勝を飾り、中国選手や韓国トップ選手は不参加だったものの、日本選手大活躍の大会となった。
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団体戦のシード権を決めるのは「オリンピックチームランキング」
過酷な代表選考レースを終えた選手たちは、休む間も無く五輪団体戦でのシード権争いという新たな戦いに参戦している。五輪団体戦のシード権はITTF(国際卓球連盟)が定める「オリンピックチームランキング」をもとに決定される。
東京五輪の団体戦において、メダル獲得を目指す日本チームにとって最大の敵となるのは、卓球帝国・中国に間違いない。そして、中国と団体戦で対戦することを考えたとき、第2シードの確保が重要になる。
第1シードを中国がほぼ手中に収めているなか、第2シードを日本が取れば、中国とは決勝まで当たらない組み合わせとなる。一方、第3、4シードになると、準決勝で中国と対戦する可能性が浮上するのだ。
ではこのオリンピックチームランキングは、どのように算出されるのだろうか?
その算出方法を復習しよう。
算出方法(再掲)
写真:五輪団体戦での活躍が期待される平野美宇(日本生命)/提供:ittfworld
オリンピックチームランキングは、国ごとの過去の対戦成績で計算されるわけではなく、そのメンバーで五輪の団体戦を戦ったらどうなるかを一定の規則に基づいたオーダーでシミュレーションして、試合結果を全チーム総当たりで計算し、その勝敗で決められる。現状、各国の五輪代表はまだ決定していないため、個人の世界ランキングの上位3人をチームとしてシミュレーションされる。
算出に使われるのは、個人の世界ランキングだ。
1.各国のオリンピック個人ランキング(=世界ランキング)上位3選手を選出
2.上位3選手でオリンピックを戦うと仮定し、団体戦のシミュレーションを行う
3.試合結果は、ランキング上位選手が勝利するものとする
4.上記のシミュレーションの結果、勝利したチームがランキング上位となる。
わかりやすく実際のランキングをもとに考えてみよう。
写真:ハンガリーOP優勝の張本智和(木下グループ)/提供:ittfworld
仮に、男子日本代表とドイツ代表のランキング付けを行うとする。
まずはじめに、両チームの世界ランキング上位3選手を確認する。
日本は張本智和(3月世界ランキング5位)、丹羽孝希(同12位・スヴェンソン)、水谷隼(同15位・木下グループ)。ドイツはティモ・ボル(同10位)、ドミトリ・オフチャロフ(同11位)、パトリック・フランチスカ(同14位)。この6選手が五輪団体戦を戦うと仮定し、オーダーを組む。
オーダーは、どちらのチームも一番強い選手がシングルス2点使いで、2番目と3番目の選手がダブルスを組み、3番目の選手同士が必ず対戦する組み合わせだ。
日本とドイツの場合、以下のような試合オーダーとなり、この仮想オーダーで試合をシミュレーションすると試合結果は日本2-3ドイツとなり、ランキングはドイツが日本より上位となる。
1 丹羽/水谷 – 〇オフチャロフ/フランチスカ
2 〇張本 – ボル
3 水谷 – 〇フランチスカ
4 〇張本 – オフチャロフ
5 丹羽 – 〇ボル
※ダブルスの勝敗は、2選手が個人で保有するポイントを合算したものを使用して判定される。日本ペアは、丹羽:9,570、水谷:9,270の合計:18,840、ドイツペアは、 オフチャロフ:10,445、フランチスカ:9,455の合計:19,900のため、ドイツペアの勝利となる。(ポイントは2020年3月時点のもの)
この仮定を全ての国に対して適用し、勝利チーム順に並べたものがオリンピックランキングとなる。
3月時点でのランキングは?
2020年3月のチームランキングはこちら。
男子トップ5
1(1)中国 286
2(2)ドイツ 284
3(3)日本 282
4(4)韓国 280
5(5)スウェーデン 278
女子トップ5
1(1)中国 250
2(2)日本 248
3(3)ドイツ 246
4(4)中国香港 244
5(5)チャイニーズタイペイ 242
※国名右の数字はランキングポイント、順位右の()内は先月のオリンピックチームランキング
日本vsドイツ 男子団体の第2シード争いは総力戦に
写真:五輪団体戦の第2シード獲得に向け戦う丹羽孝希(スヴェンソン)/提供:ittfworld
日本男子は東京五輪で第2シードを獲得するために、7月に発表されるオリンピックチームランキングで2位になる必要がある。
両チームの張本以外の5人は、現在世界ランキングが極めて近く(ボル・10位、オフチャロフ・11位、丹羽・12位、フランチスカ・14位、水谷・15位)これからの大会の成績次第で、7月までにランキングが細かく変動することも考えられる。
日本チームとしては、国際大会での丹羽孝希、水谷隼の活躍、そしてドイツの3選手の活躍阻止が、第2シード獲得に向けて重要になる。
ここで先日のハンガリーオープンを、日本、ドイツ両チームに焦点を当てて振り返ろう。
写真:ハンガリーOPでフランチスカを下した神巧也(T.T彩たま)/提供:ittfworld
日本チームは 、“卓球界の熱男” 神巧也(T.T彩たま)が、Tリーグ最終戦を終えた直後の強行出場を物ともせず、本戦1回戦でフランチスカを撃破。ドイツ主軸のポイントの上積みを阻止するという大きな勝利をあげた。また、エース・張本智和も、準決勝でオフチャロフを貫禄のプレーで退け、そのまま優勝を果たした。
写真:丹羽を下し張本を苦しめたベネディクト・デューダ(ドイツ)/提供:ittfworld
一方ドイツチームも、オフチャロフがドイツオープンに続く2大会連続のベスト4入りを果たし、また新星左腕、ベネディクト・デューダが本戦1回戦で丹羽孝希を撃破。準々決勝では、張本智和と対戦し2ゲームを奪う健闘をみせ、日本チームを苦しめた。
第2シード獲得に向けた、男子日本チームvsドイツチームの戦いは、これからさらに白熱すると考えられる。また、女子日本チームは、ランキング1位の中国、3位のドイツとも大きな差があり、このままランキング2位を維持しながら東京五輪を迎える可能性が高い。
少しずつ近づいてくる東京五輪でのメダル獲得に向けた、日本チームのこれからの戦いに注目だ。