先日、朝8時から金沢駅前で、松平健太キャプテン、五十嵐史弥選手、西東輝監督はじめスタッフで、チラシを配った。
もちろん、事前に所轄警察署に許可を取って。
なぜ、開幕を1ヶ月前に控え、こんなに忙しい新チームが、効率だけ考えると割に合わないかもしれない、チラシ配りをするのか。
それは、選手・スタッフ含めて、私たちの現在地と原点を実感したいからだ。
写真:松平健太(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
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地元における“松平健太”であっても
“松平健太”といえば、卓球界では、泣く子も黙る(実際は泣いている子は誰が来ても黙らないが)、スーパースターだ。
その選手が、地元の石川県で、朝の通勤時間の駅前でチラシを配り、そして結構な割合でスルーされる。
少しずつ松平選手の声が大きくなっていく。声掛けのワードも変化していく。
写真:松平健太(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
「これからは、街で配っているチラシは受け取ろうと思いました」。配り終えた後の松平選手のコメントだ。実感がこもっている。
その直後に収録した地元テレビ局の番組収録では、インターンで同行していた中国人留学生が「おお….松平健太選手に会えるとは…、中国にもファンクラブありますよ」と感動していたが、さっきまでその男の配る、金沢ポートのチラシは、駅前でわりとスルーされていた。
そこが、私たち卓球プロチームの、とりわけ新チームの現在地である。
悲観ではない。むしろ、なんでもやってやろうと思う。
写真:五十嵐史弥(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
ポスター掲示のお願いと地元メディア取材
ありがたいことに、地元メディアからは多くの取材の依頼をいただき、西東輝監督はじめ選手たちも、練習の合間に積極的にPRに務めている。
写真:地元放送局の番組収録に臨む松平健太と五十嵐史弥(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
一方で、スポンサーセールスはもちろん、ポスター掲示をお願いするお店や企業で、「知らない」「興味がない」と、門前払いされることは日常茶飯事だ。
当たり前である。プロと名乗っただけで応援してもらえるほど、地域密着型プロスポーツチーム事業は甘くない。
写真:ポスターを配布する金沢ポート・スタッフ/撮影:ラリーズ編集部
自らの存在意義を自ら定義して証明すること
プロチームであるということは、常に社会との接点を意識するということだ。
自らの存在意義を自ら定義し、自ら証明するということだ。
現時点において、卓球における地域密着型チームにとっての“プロ”とは、収入構造の定義以上に、姿勢や信念が必要だからだ。
写真:西東輝監督(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
大昔、私が白塗りのアングラ演劇をやっていた頃(いったい何をやっているんだ)、チケットの手売り数が伸びない私に、年配の劇団員がこう言った。
「自分が人生を懸けてやっていることに、そのチケット代の価値も信じられないなら、辞めたほうがいい」
うるせえ、と思った。でも、真実が含まれている、と思った。
結局、全然別の理由で演劇を辞めたが、あのときの劇団員の信念は覚えている。
写真:西東輝(金沢ポート監督)/撮影:ラリーズ編集部
厳しいからこそ美しい
広く卓球興行もエンタテイメントだと捉えるなら、そこに関わる人間の持つべき矜持は、自分たちが人生を懸けている卓球の価値を、ひとりずつ目の前の人間に伝え、チケットを買ってもらい、足を運んでもらって、初めて仕事の入口に立つのだと思っている。
もちろん、選手としての勝負はそこから始まるわけだ。
厳しい。でも、華やかに見える世界の裏側はみな厳しい。だからこそ、美しい一瞬が訪れる。
地域密着とは、嘘のつけない距離に暮らす人たちに応援してもらうことだ。
センスの良いやデザインや、多様なPRは私たちが得意な領域だが、でも今は、選手・スタッフ全員が、照れることなくまっすぐに、1枚のチケットを知り合いに買ってもらうことに注力している。
という文章を書いていたら、松平健太キャプテンが、取材を受ける準備をしながら、こう進言してきた。
「次回は、横断歩道渡ったところで許可取ってみてください、そっちのほうが人がたくさん歩いてたんで、もっと渡せます」
一流のアスリートたちは、このプロセスの大切さをとっくに知っている。
金沢ポート、ホームマッチは8月12日・13日、19日・20日。チケット絶賛発売中です。
写真:清水スポーツ店内にある、手作りのチケット売場/撮影:ラリーズ編集部
動画はこちら
>>チケット購入はこちらから(Tリーグサイト→ローチケサイト)
金沢市近隣の方は、清水スポーツ店内でも、七尾市近郊の方は松平スポーツでも、チケットが購入できます。
写真:金沢ポート・ホームマッチのチラシ(表面)/提供:金沢ポート
写真:金沢ポート・ホームマッチのチラシ(裏面)/提供:金沢ポート
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