卓球ニュース 【現地取材】ITTFシンガポール「世界卓球の頭脳」を取材。やっぱりシンガポールはすごかった
2017.12.07
取材・文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)
世界中の卓球ファンがインターネットを通じて卓球の試合を見る時代となり、主な国際大会を主催する国際卓球連盟(International Table Tennis Federation,以下ITTF)もそのコンテンツ企画・管理を重要視している。
そのITTFの本部はスイス・ローザンヌにあるが、スポンサー集めや動画コンテンツ配信、SNS運用を含むマーケティング機能は全てシンガポールにあるアジアオフィス(ITTF Asia-Pacific & Marketing Office)が司っている。ローザンヌが世界卓球の”顔”であるならばシンガポール拠点はさしずめ”頭脳”といったところか。
ボート・キーやクラーク・キーなど賑やかなシンガポールの中心部から車で10分ほど離れた静かなエリアにITTFシンガポールはある。今回は羽田から飛行機で7時間、赤道直下の灼熱のシンガポールに飛び、その地を訪ねた。
ITTFアジアオフィスの内部を公開。実はスゴいところだった
プールや陸上競技場、グラウンドなどが隣接するスポーツ複合型施設「Toa Payoh ActiveSG Sports Hall」の中にITTFアジアオフィスはあった。日本でいう岸記念体育館のような場所だろうか。
このスタジアムの一角にITTFがある。
鉄格子の重い扉を開けるとすぐに目的の地が現れた。ガラス張りのオフィス入り口には大きなITTFロゴと、ミニ卓球台があり、一目でそこと分かった。
迎えてくれたのはPromotions ManagerのYANG女史。シャイなので顔出しNGとのことだったが、忙しい会議の合間をぬって、快く取材に応じてくれた。
ー 本日は日本の卓球ファンのために取材に応じて頂きありがとうございます。このオフィスでは何人の方が働いているのですか?
12名です。ITTFのアジア太平洋地区の全ての大会、イベントを担当しているのと、ITTFの(世界全体の)マーケティング機能が集約されています。
取材を行った会議室には三英とGarageのコラボ卓球台(ピンポンワークテーブル)が置かれていた。さすがだ。
ー 単なる地域オフィスではなく、マーケティングの中心をシンガポールに置いているのですね!マーケティングとは具体的にどんなことをされていますか?
本当にITTFのマーケティング活動全てです。メインは大会やイベントのスポンサー獲得。更にはVI(Visual Identity)、ロゴ、バナー、公式WEBサイト、SNSなど多岐にわたります。特に近年ではWEBやSNSを通じてITTFの保有するコンテンツを世界中に届けることを重要視しています。
ー日本ではテレビでほとんど卓球の試合が放映されず、卓球ファンはインターネットで情報収集をする文化が根付いています。ITTFの公式サイトで試合結果を確認したり記事を読む人も多いのですがサイトはどのように作っているのですか?
さすがにアジアオフィスだけでは世界中で行われている大会情報をコンテンツ化するのは難しく、各エリアのITTFスタッフに加え、ライターやカメラマンの力も借りながら、大会ニュース記事を作ってリリースしています。WEBサイトのデザインや動画の編集などは基本的に全てアジアオフィスで行っています。
デザイナーやWEB制作、動画編集など10数名のスタッフが働くオフィスは、コンパクトかつ静かだった。
ーいつも見ているダイジェスト動画などはここで作られていたのですね。感無量です。SNSも全てここで運用されているのですか?
はい。ブランド管理のためにも基本的にはそうです。SNSにはYoutube、twitter、facebook、Instagramが含まれます。中国向けのウェイボーだけはここ(シンガポール)ではなく、中国で運用しています。
ーなるほど、ありがとうございます。これだけのコンテンツを発信しているということで、もっと賑やかなオフィスを想像してましたが、意外と静かですね。
今日は(隣の)シンガポール卓球協会(STTA)とのミーティングのため多くのメンバーがSTTAに行っています。寄ってみますか?
シンガポール卓球協会で見た意外な光景とは
YANG女史への取材を終え、隣接するSTTAに入るとそこでは意外な光景が。
広いオフィスを想像して中に入ると、なんとシンガポールのナショナルチームの公式練習が目の前で行われていたのだ。女子世界ランク8位の馮天薇(フォンティエンウェイ)は、その日はいなかったが、前日、前々日はこの会場で練習していたとのこと。
この日は12月7日からはじまる国内ユース大会に向けてジュニア選手を中心に練習が行われていた。また1月にはSTTAグランドファイナルという国内最大の大会が開催されるため、皆そこを目指して調整をしているという。日本選手が全日本選手権に照準を合わせているのとよく似ている。
一時期よりもシンガポールナショナルチームの国際的な地位は落ちているが、東京五輪に向けて強化を図っており、五輪直前の合宿地なども調整しているという。
アジア経済の中心地となったシンガポールは、世界の卓球の中心地でもあると言っても過言ではない。今後もラリーズではグローバルな視点で卓球に向き合い、読者の皆様にお届けしたい。
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取材協力
ITTF Asia-Pacific & Marketing Office
Singapore Table Tennis Association