写真:講師の藤井(現:下川)寛子さんと参加した子どもたち/撮影:ラリーズ編集部
卓球とSDGs [PR] “卓球にできる地域活性化とは” ロート製薬に聞いたネーミングライツの理由
2022.02.25
去る2021年12月、奈良市のロートアリーナ奈良で卓球の講習会が行われた。
……ロートアリーナ奈良?
地域で“運動公園”として親しまれている奈良市鴻ノ池運動公園は、2021年4月から「ロート奈良鴻ノ池パーク」となった。
奈良市の公募に応募したロート製薬が、2026年3月31日までの5年契約でネーミングライツ契約を結んだのだ。
写真:自然豊かなロート奈良鴻ノ池パーク/撮影:槌谷昭人
写真:その一角にあるロートアリーナ奈良/撮影:槌谷昭人
このページの目次
ネーミングライツとは
ネーミングライツとは、スポーツ施設などにスポンサー企業の社名やブランド名を付与する「命名権」のことだ。
施設の運営資金調達の手法として1990年後半にアメリカで広がり、日本でも民間施設はもちろん、各自治体が運営する公共施設にも、幅広く導入されている。
専用のスタジアム・アリーナを持たない卓球においては馴染みが薄いかもしれないが、例えば卓球日本代表候補も合宿を行う東京北区の通称“トレセン”は、2009年から味の素がネーミングライツを取得し「味の素ナショナルトレーニングセンター」である。
写真:豊かな自然の中に野球場や陸上競技場などのスポーツ施設が揃う/撮影:槌谷昭人
当たり前のように、鹿。
ネーミングライツの理由
ロート製薬は、日本の卓球界への支援も行っている。
2018年から全国ホープス卓球大会の冠協賛を続ける傍ら、卓球ジュニアサポートジャパン主催の夢卓球教室や卓球台寄付事業もサポートしている。
なぜ、奈良市の鴻ノ池運動公園のネーミングライツを取得したのだろう。
その理由をロート製薬に聞いてみた。
写真:一帯を見渡せる丘もある/撮影:槌谷昭人
「一番のきっかけはトップパートナーをさせて頂いている(バスケットボールの)バンビシャス奈良さんのホームアリーナであることでした。弊社ロート製薬の創業者が奈良出身でもあり、一緒に街を盛り上げていこうと」
卓球じゃなくてすいません、と微笑みながら教えてくれたのは広報・CSV推進部の菊池容子さんだ。
写真:ロート製薬 広報・CSV推進部の菊池容子さん/撮影:槌谷昭人
ロート製薬はバスケットボールのBリーグ、バンビシャス奈良のトップパートナーや、Jリーグガンバ大阪のスポンサー活動など、幅広く「スポーツと健康」事業を支援している。
根底にあるのは、ロート製薬の経営ビジョンの中にも謳われる、心身の健康や幸福などを意味する“ウェルビーイング”という考え方だという。
「ウェルビーイングと、スポーツは関わりが深いと感じています。スポーツを通して、地域の幅広い年齢の方々に健康になっていくきっかけ作りができればと思っています」
3歳から100歳まで、年齢の幅広さでは他競技の追随を許さない卓球だ(胸を張って)。
写真:ロートアリーナ奈良で開催された村上恭和×セノビック 夢・卓球教室の様子/撮影:ラリーズ編集部
「無理に呼んでもらうよりも」
無理に名前を呼んでもらうよりその地域の活性化に役立つ存在でありたい、と菊池さんは言う。
「何もない時代であれば、建物を作るところから、という事業もあると思うんですが、今は奈良にも立派な体育館もあります。むしろ地域の方にどうやったらもっと楽しく使ってもらえるか、どうしたら人が集まる場所になるかということのほうが、今の地域活性化には合ってるのかなと」
写真:ロート製薬 広報・CSV推進部の菊池容子さん/撮影:槌谷昭人
宇陀市では起業家支援も
スポーツ支援だけではない。
創業の地・奈良県で、ロート製薬は様々な“ウェルビーイング”への試みを活発に行っている。
起業家支援もその一つだ。
地域資源を生かす起業に特化したNext Commons Lab(ネクストコモンズラボ)奥大和(おくやまと)という起業家支援コミュニティを作り、奈良県や宇陀市と協同して支援活動を続けている。
「そこに住んでいる人が元気になれば、街も賑やかになりますよね。人を繋げてやりたいことを応援したいなと」
本当に地域が活性化するために必要な、人への支援。
ネーミングライツも、そうしたロート製薬の様々な“ウェルビーイング”への取り組みの一つに過ぎないのだ。
写真:2017年春から食をテーマに10以上のプロジェクトが立ち上がる/提供:ネクストコモンズラボ公式サイト
藤井寛子さん「池の周りを走り回っていた思い出」
さて、講習会の話だ。
「村上恭和×セノビック 夢卓球教室」は、全国各地の子どもたちに、一流の講師陣が講習を行うことで知られている。
今回は、地元・奈良出身の藤井(現:下川)寛子さん・優子さんが講師で来るということもあって、会場のロートアリーナ奈良は熱気に包まれていた。
写真:ロートアリーナ奈良で開催された村上恭和×セノビック 夢卓球教室の様子/撮影:ラリーズ編集部
楽しそう
講習会を率いる、元女子日本代表監督の村上恭和さん(日本生命レッドエルフ総監督)は、柔らかく、ゆっくりと話しかける。
「日本のトップ選手たちも、別に特別なことはしていないんです。当たり前のことをコツコツ続けて、今があるんです」
子どもたちからの質問が途切れなかった
その村上さんが「奈良の子どもたちは元気だねぇ」と目を細めるほど、最後の質問コーナーでは延々質問が途切れず、時間を延長して続いた。
写真:「村上恭和×セノビック 夢卓球教室」の様子/撮影:ラリーズ編集部
小学校卒業までを奈良で過ごした元日本代表の藤井寛子さんも、このロートアリーナ奈良をこう振り返る。
「試合のことよりも、友だちと池の周りを走り回っていたことのほうが覚えていますね(笑)」
その名も鴻ノ池
幼少期から始める子どもが多い卓球は、他の競技以上に「あの場所、あの思い出」がそれぞれの記憶の中にあるのかもしれない。
手紙の温かさ
ロート製薬の菊池さんには、これまで各地で開催される「夢卓球教室」のほぼ全てに立ち会ってきた。
その講習会で、菊池さんが実施してきたことがある。
参加者それぞれの写真を貼った手紙を準備し、村上恭和監督や講師から直接参加者へ渡してもらうことだ。
写真:講習会で参加者に渡される手紙/撮影:槌谷昭人
あるとき、村上恭和さんがふと口にした言葉が印象に残っているという。
「みんな熱心にメモを取るけど、ほとんど忘れていきます。それでいいんです。試合した、勝った負けた、何でもいい、何か1シーンだけでも覚えてくれていたらそれでいい」
写真:「村上恭和×セノビック 夢卓球教室」の様子/撮影:ラリーズ編集部
当日撮った写真を貼って渡すことには、菊池さんの小さな願いが込められている。
「この日の思い出や記憶が、何でもいいので、あとちょっとだけ頑張ってみようって思うきっかけになってくれたらいいなと」
写真:ロート製薬 広報・CSV推進部の菊池容子さん/撮影:槌谷昭人
「あと、講習会の最初に撮影をするんですが、最初なのでまだ皆さんの表情が少し固いところを、どう和ませるかが今の私の課題です」
講習会に臨む者みな、それぞれに課題あり。
全てはオンラインで瞬時に手に入れられそうな時代に、各地を回って、写真を撮って貼り、手渡しする手紙は、なんだか温かく見えた。
お邪魔しました、またね。