文:P.N 家
前年度は当時14歳、エリートアカデミーの後輩である木原美悠(JOCエリートアカデミー)に敗れ、5回戦敗退という結果に終わった平野美宇。熾烈を極めた五輪代表レースの1年だった2019年の成長をこの全日本で発揮することになるのか。主な対戦相手を見ていこう。
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最初の難関:5回戦・変化ラバーとの対戦
写真:世界選手権1次選考会での出澤杏佳(大成女子高)/撮影:ラリーズ編集部
5回戦で平野は、出澤杏佳(大成女子高)と成本綾海(中国電力)のいる山の勝者と戦うことになる。出澤はフォアに表ソフト、バックに粒高を貼る異質ラバーの使い手だ。昨年度の全日本選手権では女子ジュニアで優勝、一般の部でもランク入りを果たしている。
もう1人の成本はサウスポーでバックに表ソフトを貼り、多彩な王子サーブの使い手である。先日の世界卓球代表選考会では最終選考会まで進出し、出澤と同じく世界ジュニア代表の長﨑美柚(JOCエリートアカデミー/大原学園)をストレートで下すほどの実力者だ。
写真:世界選手権1次選考会での成本綾海(中国電力)/撮影:ラリーズ編集部
平野は直近では世界卓球最終選考会で4-2で成本に勝っているが、成本の変化ある卓球に対し、平野は高速卓球を狂わされ、試合はシーソーゲームとなった。昨年同じ5回戦で表ソフトの使い手である木原に敗れている平野にとっては油断のならない対戦カードとなるだろう。
出澤は、昨年度の一般の部では5回戦で前田美優(日本生命)に勝利しランク入りを果たしている。今年もランク入りするには平野に勝たなければいけないことになるが、昨年10月の世界卓球第一次選考会では世界ランク51位の木原、同73位の安藤みなみ(十六銀行)を下すなどランク入りには申し分のない実力者と言える。両ハンドを振り抜く現代卓球の王道ともされる平野に対してフォアに表ソフト、バックに粒高とかなり珍しい戦型の出澤がどう戦うのか注目したい。
成本と出澤のどちらが上がってきたとしても、五輪団体代表を勝ち取った平野に対して、格上として思い切って挑戦してくるだろう。優勝候補である平野がどう受けて立つのかに目が離せない。
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最大の難関:6回戦・昨年度の雪辱を果たせるか
写真:世界選手権1次選考会での木原美悠(JOCエリートアカデミー)/撮影:ラリーズ編集部
最大の難関と言えるのはやはり木原へのリベンジだろう。お互いが勝ち上がれば6回戦で対戦することになる。昨年12月のグランドファイナルでは長﨑と組み、女子ダブルス優勝を果たしている木原は2019年の成長株筆頭だ。
まず注目したいのは平野のサーブとレシーブだ。
昨年度の対戦では平野が木原のバック側にサーブを出し、木原の表ソフトでレシーブされてからラリーで失点するパターンが目立った。レシーブでも平野の武器であるチキータは多用せず、木原のバックに合わせるようなレシーブから入っていた。表ソフトで広角に振り回された昨年度とは逆に、平野が木原を大きく動かすにはサーブレシーブからどう展開していくかが鍵となる。木原のフォア前に集めるのが定石かもしれないが、平野がサーブをどう配球するかによって戦術が見えてくるだろう。
次に鍵になるのは、やはり木原の表ソフトから放たれるバックハンドへの対応だ。木原のボールに対し、前年度の対戦では平野がドライブをかけて持ち上げ、それを木原が要所でスマッシュで仕留める展開で平野は失点していた。平野の持ち味はスピードも回転量もある、前に振り抜く両ハンドだ。それを表ソフトにも発揮することができればラリーで優位に立つことができる。この一年で表ソフトの変化に対応して、強力なドライブを打てるようになったかが試される部分となる。
その他にも木原の要所で見せるフォア側からのサーブに対して平野がどう対応するのかや、平野が強力なドライブを木原のフォアに集めた場合、木原はカウンターを狙えるのかなど注目すべきポイントが多い試合だ。
平野は直前の5回戦も変化系の相手である可能性が高いため、異質ラバーへの対策は十分にしてくるはずだ。昨年度のリベンジ、3年ぶりの女子シングルス優勝をかけて、東京五輪団体代表となった平野が「ハリケーン平野」と言わしめる活躍をまた見せてくれることに期待が高まる。