「行く大学がない」から一般入試で慶應合格 "見返す"ための挑戦を続ける福本典矢、全日本で花開いた"魂"の初出場初勝利<全日本卓球2026> | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:福本典矢(慶應義塾大学・写真右)/佐々木一心(東洋大)/撮影:ラリーズ編集部

大会報道 「行く大学がない」から一般入試で慶應合格 “見返す”ための挑戦を続ける福本典矢、全日本で花開いた“魂”の初出場初勝利<全日本卓球2026>

2026.01.30

この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

<全農杯 2026年全日本卓球選手権大会(ダブルスの部)日程:2026年1月29~2月1日 場所:スカイホール豊田(愛知)>

29日、全日本選手権男子ダブルス2回戦が行われ、埼玉栄高校OBの福本典矢(慶應義塾)/佐々木一心(東洋大)ペアが出場。

日本リーガーの江藤慧/菅沼湧輝(クローバー歯科カスピッズ)ペアから先に2ゲームを奪うも、最後はゲームカウント2-3で敗れ、惜しくも3回戦進出とはならなかった。

試合後、福本と佐々木に話を聞いた。

「みんなを見返す」一般で慶應義塾大に合格


写真:福本典矢(慶應義塾大学)/佐々木一心(東洋大)/撮影:ラリーズ編集部

── まずペア結成には、どのような経緯があったのでしょうか?

福本:埼玉栄高校の後輩の佐々木から急に連絡が来て、「全日本予選組みませんか」と申し込んでくれたのがきっかけです。高校時代はそれぞれ別の人と組んでいたので、それまで一度も組んだことはなかったんです。

予選もお互いのタイミングがなかなか合わなくて一度だけ練習して出たので、ほぼぶっつけ本番の状態でした。

── その予選では強豪ペアを次々と破っての通過だったそうですね。

福本:はい。ノーシードだったので初戦から強敵ばかりでした。埼玉栄高校の後輩ペアや、自分たちの同期でインターハイ16のペアをなんとか倒して通過しました。

僕ががむしゃらに動いて、佐々木がブロックで粘ってしのぐ。このスタイルが意外にもうまく噛み合いましたね。

── 佐々木選手はなぜ福本選手を誘ったのでしょうか?

佐々木:福本さんを誘ったのは、消極的で流されやすい性格の自分を、福本さんが引っ張ってくれると思ったからです。

福本さんは高校時代、卓球に没頭しすぎて監督に怒られるほど勉強をしていなかったんですが、引退後に猛勉強して一般入試で慶應に合格しているんです。

合格報告に来たときにストレスで15キロも太っていた姿を見て(笑)。「この人は目標を決めたら全てを懸けられる人だ」と確信して、全日本のペアに誘いました。

── 福本選手は一般受験で慶應に入ったんですね。

福本:高校時代、引退間際に監督から「お前は弱いし、このままじゃ行く大学ないぞ」と言われたんです(笑)。

「悔しかったら勉強でみんなを見返そうぜ」と言われたのがきっかけで、慶應を目指しました。

当時の成績は高校のコースで最下位で、部活の仲間たちに勉強でも卓球でも負けていることに、ずっと劣等感がありました。だからこそ「みんなが入れない大学に入ってやろう」と猛勉強したんです。


写真:福本典矢(慶應義塾大学)/佐々木一心(東洋大)/撮影:ラリーズ編集部

── 予選を通過したときはいかがでしたか?

佐々木:正直、自分も福本さんも予選を通過できるとは思っておらず、全日本出場が決まった瞬間は嬉しさよりも驚きが勝っていましたね。

特に、福本さんの同期の関東王者ペアや埼玉栄のOB、現役に勝ったときは、福本さんがずっと目標に掲げていた「活躍する同期、仲間をいつか超えたい」という想いに、パートナーとして貢献できたことが何より嬉しかったです。

誰よりも努力しながら、なかなか報われずにいた福本さんが、隣で嬉し泣きしている姿を見て「卓球を続けてきて本当に良かった」と心の底から思いました。

ようやく予選突破の実感が湧いたのは、埼玉栄の先生方から試合後に「OBが活躍してくれて嬉しい」と言っていただけたときですね。

福本: 自分もめちゃくちゃ嬉しかったです。通れるとも思ってなかったので。「記念に出よう」みたいな感じで行ったらまさか通れちゃったという感じでした。監督も最初は信じてくれなくて、「本当に?」みたいな感じでした。

実業団ペアにフルゲーム9本に迫る


写真:福本典矢(慶應義塾大学)/佐々木一心(東洋大)/撮影:ラリーズ編集部

── 福本選手は全日本への出場自体が初めてとのことですが。

福本:そうなんです。佐々木はジュニア時代に出ていたんですけど、自分はもうガチガチでした(笑)。

ベンチに入ってくれた佐々木のお父さんがずっと「楽しめ、楽しめ」と声をかけてくださって。そのおかげで、最後まで笑顔で卓球ができました。

勝った瞬間はすごい嬉しかったんですけど、もうよくわかんなくて「勝った、勝った!」みたいな感じで混乱してました(笑)。

佐々木:1回戦で福本さんはメインアリーナに降りた時点で感極まっていて、ずっと泣きそうだったので、思わず笑ってしまいました(笑)。

今回の全日本では「まずは一勝」を目標にしていたんですが、1回戦の相手は元関西学生チャンピオンだったので、いつもの悪い癖で諦めそうになる瞬間もありました。

でも「福本さんに少しでも長くこの舞台でプレーしてほしい」という一心で踏みとどまって、悔いのない試合ができました。


写真:福本典矢(慶應義塾大学)/佐々木一心(東洋大)/撮影:ラリーズ編集部

── そして2回戦は実業団ペアを相手にフルゲームの接戦となりました。

福本:2回戦はもう点数も全然気にならないくらい無我夢中でした。自分たちでずっと「諦めない、魂、魂!」って言い続けていたんです。

2ゲーム目の10-8で勝ってるときに、自分が顔面に2連続でサーブを当てちゃって、10-10になったんですよ。それでもパートナーがずっと笑ってくれてて、ずっと笑いながら試合してて、異質な空間でした(笑)。

でもそのゲームはなんとか取れて、3ゲーム目も取れちゃって、「もしかしたら勝てるかも」と思ったんですけど、最後は相手が強くて実業団の意地を見せつけられちゃいました。

でも、決めるたびに「いま全日本で点取ってるんだ」っていうのが本当に嬉しかったです。

── 佐々木選手はいかがでしたか?

佐々木:まずここまで相手を追い詰められると思っていませんでした。1ゲーム目も4点でボコボコにされて、福本さんも焦ってるかなって思って顔を見てみたんです。そしたらニコニコしながら「これ勝ったらヒーローだな」って言ってて。

その言葉を聞いてから、自分もポジティブに考えられるようになって、あそこまで奮闘できました。

高校時代ずっと悔しい思いをしてきた福本さんから「楽しかった、幸せだった」という言葉を聞けたことは、試合に勝ったこと以上に幸せでした。

笑いながら泣いてたので、江藤さんと菅沼さんも笑ってたと思います(笑)。

── 9-10の場面でタイムアウト。最後の一本、何があったのでしょうか。

福本:ベンチの佐々木のお父さんから「フリック、やっちゃうか?」と軽い感じで言われたんです(笑)。「今ツッツいたら打たれて終わるぞ」と。

それで思い切ってフォアフリックを仕掛けたんですが、しっかりミスしてしまいました。

佐々木もずっこけて。まるでコントみたいな幕切れでしたが、最後は出し切れたので、最高に楽しい全日本でした。

佐々木:自分の父から「フォアフリックできるか?」って聞かれて、福本さんが「ここで決めたらかっこいいですね!」って言って今まで一回もやってなかったのに本当にフリックして、ちゃんとミスってました(笑)。


写真:福本典矢(慶應義塾)/佐々木一心(東洋大)にアドバイスを送る/撮影:ラリーズ編集部

“コントダブルス”来年リベンジなるか


写真:福本典矢(慶應義塾大学)/佐々木一心(東洋大)/撮影:ラリーズ編集部

── 改めて、今回の全日本を振り返っていかがでしたか?

福本:これまでずっと「典矢はいいところまで行くけど、最後は勝てないよね」と言われ続けてきました。

でも今回、全日本に出場して1勝を挙げたことで、周りの評価を覆せた全日本だったなと思います。

やっと花開いてこれまでの努力が報われた瞬間でした。大学でも卓球を続けて、本当によかったです。

今回の勢いをそのままチームに持ち帰って、何としてもリーグ戦で2部に昇格したいです。これからも「見返す」ための挑戦を続けていきます。


写真:福本典矢(慶應義塾大学)/佐々木一心(東洋大)/撮影:ラリーズ編集部

佐々木:常に綱渡りをしているような感覚で、「コントダブルス」の名前が相応しいぐらい、笑いと驚きが絶えない大会でした。

1回戦の初球で福本さんのサーブが台から出て打ち込まれて二人で爆笑したり、予選から本戦までずっと感動して涙目だった福本さんの様子も含め、ほぼコントをしている気分でした(笑)。

それでも、本戦で1勝を挙げられて、最高のパートナーと最高の舞台を楽しめたことは一生の思い出です。また来年も、この舞台に立てるように頑張ります!

試合結果

男子ダブルス1回戦

〇福本典矢(慶應義塾大)/佐々木一心(東洋大)3-1 三谷尚輝(徳島県庁)/前島新太(徳島県建設技術センター)
11-7 / 4-11 / 11-4 / 13-11

男子ダブルス2回戦

福本典矢(慶應義塾大)/佐々木一心(東洋大)2-3 江藤慧/菅沼湧輝(クローバー歯科カスピッズ)〇
4-11 / 12-10 / 11-6 / 6-11 / 9-11

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