文:ラリーズ編集部
<2021年全日本卓球選手権大会(一般・ジュニアの部)、2021年1月11日~17日>
日本が誇る異色のオールラウンダー、英田理志の全日本は準々決勝で森薗政崇の前に散った。
ノーシードから駆け上がり、堂々たるベスト8だ。
「優勝狙ってたので複雑な気持ちですけど、初ランクは嬉しいです」
写真:英田理志/撮影:ラリーズ編集部
27歳の“遅咲き”プロ選手
24歳で実業団を辞め、単身スウェーデンリーグに挑み3シーズンを戦った。
今季27歳でTリーグに参戦し、鮮烈な3連勝デビューをした後、勝てない時期もあった。
写真:英田理志/撮影:ラリーズ編集部
カットをせずに攻撃するカットマン、オールラウンダーとしての英田の戦い方は、他の誰とも似ていない。「もう慣れられたのだ」周囲のそんな声も聞こえてきたが、英田は状況をポジティブに捉えていた。
「あのまま勝ち続けても自分の卓球の成長にならない、自分にそこまでの地力はない」
英田はひたすら練習を積んだ。所属するT.T彩たまの練習場で、そして愛媛で。
写真:英田理志(写真右)/提供:各社
「愛媛の若い選手たちの見本」
一昨年から愛媛県競技力向上対策本部に所属する英田は、頻繁に愛媛に戻り、フジや愛媛銀行など地元の実業団で練習を重ねた。ジュニア強化練習会にも積極的に参加した。
「英田は、愛媛の若い子たちの見本」と、実業団フジの井上祥監督は英田に感謝する。
「身体のケアも含めて、卓球への意識が際立って高い。英田は一人で10キロくらい走っていたが、一緒に行こうと若い子たちに率先して声を掛けてくれていた」
写真:井上祥監督(フジ)/撮影:ラリーズ編集部
“話を聞く男”英田
英田の人間性を端的に言うと何かと問うと「謙虚、素直、真摯」、3つ答えてくれた。「あ、あともう一つ」と付け加える。
「英田は、ちゃんと話を聞く。聞いた上で本人が取捨選択する。いまの若い選手の中には始めから“ほっといてくれ”という子もいるなかで、あのレベルの選手が話を聞く姿勢は、監督として感心する」
歩んできた道が、決して卓球界の王道ではなかったからだろうか。英田は、学ぶチャンスを逃さない。
写真:英田理志/撮影:ラリーズ編集部
T.T彩たまで進化を遂げる
今夏からTリーグのT.T彩たまに加入し、坂本竜介監督、岸川聖也コーチに指導してもらうことで、英田の独自の卓球はさらに進化を遂げた。
坂本監督は今シーズン開始前、英田獲得の理由をこう語った。
「英田は無名だったからこそ今から“ストーリー”が作れる。逆にずっとトップにいる人はこういうストーリーは作れない」
写真:Tリーグで英田にアドバイスを送る坂本竜介監督(T.T彩たま)/撮影:ラリーズ編集部
今回の全日本初ランク入りも、まさに英田物語の一つだろう。
カットをしないカットマン。スウェーデンからの逆輸入。27歳遅咲きのプロ選手。
英田が持っている人間性の上にいくつもの形容詞が積み重なり、英田物語は多くの人間を引きつける。
写真:英田理志/撮影:ラリーズ編集部
奥さんのサポートで盤石な一年に
今回、奥さんも喜んでくれたという。
一昨年、まだ英田がスウェーデンリーグ参戦中に日本にいる奥さんと結婚、国内でも単身赴任のような状況が続いていたが、今年からようやく一緒に生活する予定だ。奥さんからは「これからは私が毎日生活面をサポートするから」と、公私ともに盤石な体制で、この一年さらに腕を磨く。
「生活が掛かってるので」と英田は笑ってみせるが、応援する声の大きさが、既に英田のプロフェッショナルを証明している。
写真:英田理志(写真右)/提供:各社
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