卓球ニュース 張本が世界1位の樊振東に大金星 2つの勝因とは?
2018.04.07
取材・文:川嶋弘文(Rallys編集部)
<LION ITTF・ATTUアジアカップ横浜2018 4月6日(金)~8日(日)横浜文化体育館>
4月6日、横浜で開幕した卓球アジアカップで張本智和(JOCエリートアカデミー・14歳・世界ランク13位)が樊振東(ファンジェンドン・21歳・世界ランク1位)に勝利し、世界中を驚愕させた。
樊振東は世界最強との呼び声が高い中国の若きエース。今年2月のチームワールドカップ決勝で、張本は樊にゲームカウント0−3の完敗を喫し、その後のITTFワールドツアー2大会(カタール、ドイツ)でも結果を残せずに苦しんでいた。
張本はなぜ春の横浜で大金星を挙げられたのか。その2つの理由に迫った。
勝因その1:開花した「世界一のバックハンド」
「張本のバックハンドは世界トップクラス。樊振東に引けを取らないレベル」
これは卓球日本男子のエース水谷隼(木下グループ)が今年1月の全日本卓球選手権決勝で張本に敗れた後の会見で残したコメントだ。
「張本のバックハンドは相手のボールにタイミングが合うとすごい威力。世界一のバックハンド」と倉嶋洋介卓球男子日本代表監督が試合後の会見で語った通り、この試合では張本のバックハンド技術が光っていた。
2月のチームワールドカップでの対戦時はバッククロスでの(バックハンド対バックハンドの)ラリーで樊に圧されていたが、この試合ではバックハンド同士の打ち合いで張本が完全に打ち勝った。
そのため試合の中盤から、樊がバック側のボールをフォアハンドで回り込まざるを得ないシーンが増え、空いた樊のフォアサイドに張本の高速バックハンドが炸裂した。この「高速バックストレート」は張本が一番得意としている技術だ。
試合を決めた第4ゲーム10−8からの最後の1本も、樊の回り込みフォアドライブをバックストレートにブロックが決まった。「最後にバックのブロックが(ストレートに)入ったのが、今日の試合を物語っていた」(張本)と本人が試合後にコメントした通り、樊振東にも打ち勝つ世界一のバックハンドが勝利を呼び込んだ。
勝因その2:「30分の作戦会議」メンタルがプレーを変えた
ここで気になるのが、張本が2月にはバックハンドで打ち負けていたのに、なぜ今日は打ち勝つことが出来たのか、という点だ。
この点については、試合後に倉嶋監督が会見で理由を語ってくれた。
「樊振東と当たる前に30分くらい(張本)智和と話をしました。1試合目の内容が良くなかったので。なぜ今調子が悪いか、勝てないか。そういうことを話しました。」
さらに倉嶋監督は続けた。
「本人は『伸び悩んでいる』『スランプだ』などと感じ、迷いながら試合をしているようでしたたが、そうではないと。ランキングを急に上げるとマークされ、対策される。それでも勝つのがトップ選手。張本の場合、世界トップクラスのバックハンドやチキータを打たせないような対策をされ、フォアを攻められているだけだと。フォアを攻められても気にするなと言いました。今の長所であるバックハンドを伸ばそう、活かそうと。」
それを聞いた張本は静かに頷いていたという。
「今日は元々負けたと思って開き直っていけた」と張本が試合後に語った通り、この倉嶋監督との「30分の作戦会議」が張本のメンタルを前向きなものに変えた可能性は高い。
今大会で世界一のバックハンドを手に入れ、世界一に勝つためのメンタルコントロールを体現した張本。
張本が今後フォアハンド、フィジカル、台上プレーなどの課題を1つ1つクリアした時、本人が常々口にしている世界一に手が届くのだろう。
卓球アジアカップ2018 男子予選グループA 第2試合結果
張本智和3(11-8、8-11、11-9、11-8)1樊振東