写真:松本紗季(写真左)と芝田有里(写真右)/撮影:ラリーズ編集部
大会報道 「もう1日みんなで卓球できることが嬉しかった」初出場の福井代表・敦賀高校の快進撃はベスト16で終幕<卓球・インターハイ>
2022.08.06
<第91回全国高等学校卓球選手権大会 日程:7月29日~8月8日 場所:宇和島市総合体育館(愛媛県)>
今年のインターハイ女子学校対抗を盛り上げた、初出場の福井代表・敦賀高校の快進撃は、5日の3回戦で進徳女子高校(広島)の前に敗れ、ベスト16で幕を下ろした。
試合後、部員たちと敦賀の坂田耕監督に話を聞いた。
写真:松本紗季(写真左)と芝田有里(写真右)
家事も4人で分担する寮生活で
「このみんなで、今日もう1日卓球できる日ができたことが嬉しかった」
試合後、キャプテンの大下みさ紀は充実感と嬉し涙を見せた。
写真:大下みさ紀(敦賀)/撮影:ラリーズ編集部
主力メンバーの3年生4人は、学校の近くで一軒家を借りての寮生活だ。3人は福井県内の離れた地域の出身、残り一人は大阪から進学したからだ。
家事も4人で分担する日々。
練習時間の限られる公立高校の中で、選手自身たちが考え、練習メニューに工夫を重ねてきた。
「楽なだけではない日々でしたが、その中で深い絆が生まれて、それが今回力を出せた理由かなと思います」主将は胸を張った。
写真:松本紗季(写真右)と芝田有里(写真左)/撮影:ラリーズ編集部
試合中も笑顔を絶やさなかった、同じく寮生活の松本紗季はこう振り返る。
「部員の中にも、卓球できるのはこの大会が最後という選手もいるので、みんなで楽しもうという気持ちで挑んだことが、この結果に繋がったのかなと」。
笑顔の理由を聞くと「私は心配性なんですが、パートナーの芝田選手が“大丈夫”といつも声を掛けてくれていたので」。
2020年度高校選抜シングルス(2部)で優勝した芝田有里は、今回のインターハイ学校対抗でもチームを牽引した。
「インターハイ県大会から今日までは、あっという間の2ヶ月でした。とても楽しかったです」
写真:芝田有里(敦賀)/撮影:ラリーズ編集部
ベンチに入った2年生の下出帆希も、誇らしげに先輩たちを語る。
「点数を取るたびに拳を高く上げてガッツポーズをしてくれます。試合に出ている選手たちが一番疲れているのに、毎回“応援してくれてありがとう”と言ってくれる。私たちもベンチから精一杯、応援しました」
写真:ベンチも一体となって戦っていた/撮影:ラリーズ編集部
部活動での人間的な成長
地元・敦賀市出身の坂田耕監督。
2001年に敦賀高校に赴任して以来、敦賀の監督を務めて22年目となる。これまで男子の監督をしてきた坂田監督にとっても、葛藤を経て引き受けた、女子の指導だった。
「そうですね…、ちょっと、すいません」。
今大会を振り返って、という定型の質問に、坂田監督の声が震えた。
写真:坂田耕監督(敦賀)/撮影:ラリーズ編集部
「今の3年生たちが入ってくるときに、私が女子の監督をすることになって。寮をお借りしての生活を始めて、一緒に苦労してきた部分もありましたので」
卓球初心者の子もいる部活動の中で自分たちがどう良い雰囲気を作っていくか、主力メンバー自身がいつも考え、実践していた。
「寮に戻った後も、自分たちの練習のことではなく、部活全体のための反省会を彼女たち自身がしていました。今回のベスト16という結果は、本当に、彼女たちのそういう人間的な成長があったのだろうと思っています」。
もう一度、坂田監督の声が震えた。
写真:敦賀高校卓球部のメンバー/撮影:ラリーズ編集部
「部活動は長い旅」
ハチマキの文字に込められた思いがある。
監督は、部活動を長い旅に例えた。
「毎日の部活動の中で選手たちはいろんなことを考え、悩みます。でも、そのなかでも、止まった水のようにきれいな澄んだ瞬間がある。その一瞬を追い求めていこうと」
明鏡止水。
今年のインターハイ学校対抗、彼女たちの目の前に広がっていた景色のことである。
写真:敦賀高校の松本紗季(写真左)と芝田有里(写真右)/撮影:ラリーズ編集部