中国ペア下した水谷隼/伊藤美誠 勝利のカギは"レシーブ後の移動方向"にあり | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)
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ITTFワールドツアープラチナ・カタールオープン
2020年3月3日~2020年3月8日・ドーハ
2020.03.12

中国ペア下した水谷隼/伊藤美誠 勝利のカギは“レシーブ後の移動方向”にあり

写真:水谷隼(木下グループ)と伊藤美誠(スターツ)/提供:ittfworld

白熱した試合をラリーズ独自の視点で振り返る、【シリーズ・徹底分析】

先日行われた卓球・カタールオープンで2020年ワールドツアー初優勝を果たした水谷隼(木下グループ)/伊藤美誠(スターツ)。決勝では中国の新進気鋭ペア・王楚欽(ワンチューチン)/孫穎莎(スンインシャ)をゲームカウント3-1で勝利を収めた。

2019年7月の韓国オープンで初ペアリングながらベスト4となったのを皮切りに常にワールドツアーで上位に食い込んでいる水谷/伊藤ペア。ハンガリーオープンでは水谷の故障により棄権となったが、ブランクを感じさせないプレーで決勝まで1ゲームも落とさずオールストレートで勝ち上がってきた。

対する中国ペアは2018年ユース五輪で優勝しているペアで、層の厚い中国チームの中でも最も期待が寄せられている選手に挙げられる。その最大の特徴はやはり中国選手らしい威力のあるフォアドライブで、特に中陣からの両ハンドドライブは共に19歳ながらすでに世界のトップレベルだ。

そんな勢いのある中国ペアを水谷/伊藤はどのようにして破ったのだろうか。激しいラリー戦の裏に隠れた戦術に注目していこう。

>>水谷隼が語る!なぜ中国は卓球が強いのか?

2020ITTFワールドツアー・カタールオープン決勝:水谷隼/伊藤美誠 vs 王楚欽/孫穎莎(中国)

詳細スコア

〇水谷隼/伊藤美誠 3-1 王楚欽/孫穎莎(中国)
11-8/7-11/11-4/15-13

1.タイミングを合わせづらい伊藤の巻き込みサーブ


図:伊藤のサーブ図/作成:ラリーズ編集部

この試合を通じて、終始水谷/伊藤ペアがサーブレシーブから優位に試合を進めていた。中でも伊藤の巻き込みサーブは手元で伸びるサーブと伸びない上回転サーブを使い分けることで、レシーブ優位と言われるダブルスにおいても中国ペアに先手を取らせなかった

手元で伸びる上回転サーブは変化量が多く、王楚欽が得意のチキータを封じることができたため、その後のラリーで水谷が先手を取ることができた。実際に王が伊藤のサーブを受ける1ゲーム目と3ゲーム目は王は思い通りのレシーブをほとんどできず、水谷/伊藤のペースでゲームを奪われている。

また伊藤との対戦経験が多い孫に対しては、手元で伸びない上回転サーブでレシーブを限定しようとした。孫は当初バックでのレシーブを多用していた。これは巻き込みサーブに対してボールの左側面を捉えやすく、レシーブをより制御しやすいからだろう。

しかし、同時にデメリットもある。それは左利きの王楚欽の目の前を通過せねばならないため、その後の4球目攻撃の連携が取りづらいことだ。

それを嫌ってフォアでレシーブする場合はクロスにレシーブが集まりやすく、水谷の強打を浴びやすくなる。孫がストレートにレシーブを試みる場面も数本あったが、効果的ではなかったため中盤までは迷いながらのレシーブとなっていた。これを見逃さずに日本ペアは先手を取り、ラリー戦を優位に進めたのだ

2.強打を防ぐクロスへのレシーブ


図:水谷/伊藤ペアのレシーブ配球図/作成:ラリーズ編集部

続いてはレシーブにも注目しよう。伊藤のレシーブの多くはバックでの回り込んでのストップやフリックだったが、同じようにバックで回り込んだ孫との大きな違いがある。それはレシーブ後の移動する方向にある。

孫はバックで回り込んでのレシーブ後にはそのまま台の外に移動するため、王の正面を通過することになる。

それに対して伊藤はバックでのレシーブ後極力自分のバックサイドに戻り、水谷がその後の攻撃をしやすいように動いていた。ここに水谷/伊藤ペアが先手を取り続けた秘訣があるだろう。

レシーブのコースについては、水谷、伊藤ともにクロスへの速いレシーブを多用していた。

王のサーブに対して(赤線)クロスへのフリックやチキータは、王と孫の動きが重なりやすい上に、厳しいコースに送るとリーチのない孫にとっては3球目攻撃がしづらい。したがって先にカウンターや伊藤のバック面の表ソフトラバーのブロックで揺さぶりやすい。

また孫のサーブに対しては(黒線)、王のバックサイドへのチキータを送ってもフォアで回り込んで3球目攻撃をされない限り、伊藤がノータッチで抜かれることはない。そこでチキータと合わせて王のフォア前へのストップレシーブを混ぜることで王の足を止めることに成功した。

3.強みを出させないブロックコース


写真:王楚欽(ワンチューチン)と孫穎莎(スンインシャ)/提供:ittfworld

そして最後に決め手になったのがラリーでのコース取りだ。いくらサーブレシーブで先手を取っても、本来中国ペアが強みを発揮できる中陣までさげるとそこから逆襲される展開が多く、2ゲーム目を奪われ、最終ゲームも競り合いとなった。

一筋縄ではいかない中国ペアを突き放したのは、相手の強みを引き出させないブロックのコース取りだろう。競り合いになると、ともに威力のあるフォアドライブでラリーを挑む中国ペアだが、特に王のドライブは手が付けられない。そこで水谷/伊藤が取った戦術は、王と孫のバックへのブロックだ。

より台に近い位置でブロックす日本ペアは打球点が早く、台から下げられた中国ペアは打球点が遅れる。そうなればボールを持ち上げるような打球になり、一撃で相手を置き去りにするドライブを打つのは困難になる。ミスをせずに質の高い返球をするにはフォアドライブで対応するしかない中国ペアだが、その上さらに打球点を落とすために水谷/伊藤はバック側へのブロックを徹底した。

これにより打球の威力を弱めた水谷/伊藤ペアは、カウンターなどに繋げていくことができたほか、伊藤のバック面の変化ブロックを混ぜる余裕ができたのだ。

まとめ.


写真:水谷隼(木下グループ)と伊藤美誠(スターツ)/提供:ittfworld

サーブのコースが限定されており、レシーブ優位と言われるダブルス。それゆえ試合を優位に進めるためのサーブレシーブの重要性はシングルス以上だ。

今回の対戦では伊藤のサーブが終始有効で、レシーブでも先手を取れていた。しかし、サーブレシーブでの遅れを補って余りある中国ペアのラリー力に苦しめられた。そこで日本ペアが真骨頂を発揮し、ラリー戦でも相手の土俵に乗らずに、有利な展開に持ち込んだ、攻防の移り変わりが激しい試合だった。

もちろんこのように切迫した場面で明暗を分けたのは上記3点で、なかでも伊藤のレシーブ後の動きは、2人が交互に打球するダブルスにおいては非常に大きな意味合いを持つといえるだろう。

徐々に完成度を上げている水谷/伊藤ペア。悲願の東京五輪金メダルに向けての今後の活躍からも目が離せない。

>>水谷隼、30代突入で極める“オトナの戦い方” 3つの敵を倒せ

文:ラリーズ編集部

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