ダブルスは平野・早田の同級生ペアが優勝。シングルスでも中国の牙城崩れる【ITTFドイツオープン・大会レポート】 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

大会報道 ダブルスは平野・早田の同級生ペアが優勝。シングルスでも中国の牙城崩れる【ITTFドイツオープン・大会レポート】

2017.11.14

文:中川正博(ラリーズ編集部)

文:中川正博(ラリーズ編集部)
picture alliance/アフロ

<11月7日〜12日 ITTFワールドツアープラチナ ドイツオープン・マクデブルグ>

【大会総括】ダブルスで日本躍進。平野・早田組が優勝。張本・木造組は準々決勝で中国ペアを倒し準優勝。

11月12日(現地時間)まで続いたドイツオープンの全日程が終了した。ドイツオープンはITTFワールドツアー最上位クラスである「プラチナ」ツアーに位置付けられており、選手の獲得ポイントも多いため、世界中のトップ選手が多く参戦。日本からも総勢35名(棄権、自主参加の選手を含む)がエントリーした。

日本選手は今大会、ダブルスでの活躍が目立った。女子ダブルスでは平野美宇(ITTF世界ランク5位)/早田ひな(同14位)が、決勝戦で陳思羽(同21位、台湾)/鄭怡静(同7位、台湾)を相手にゲームカウント3-0のストレート勝ち。国際大会で初めて組む同級生ペアは得意の両ハンドでの高速ラリーで台湾ペアを圧倒した。

男子ダブルスでは張本智和(同16位)/木造勇人(同85位)が準優勝を果たした。決勝では鄭栄植(同27位、韓国)/李尚洙(同13位、韓国)ペアに2セットを先取しながらの逆転負けとなった。4ゲーム目にはマッチポイントを握っていただけに、優勝目前での悔しい敗戦となった。しかしながら、大会を通じて両者の前陣での高速両ハンドが噛み合っており、準々決勝で中国の世界選手権優勝をペアを破るなど、今後に期待が持てる大会となった。

一方のシングルスは世界トップクラスの強豪がこぞってエントリーしたこともあり、日本勢は女子シングルスで石川佳純が苦手のカットマン武楊(中国)を破りベスト4入りを果たしたのが最高成績。伊藤美誠と松平健太がそれぞれベスト8入りを果たすも表彰台には届かなかった。

期待の水谷隼(同6位)は決勝トーナメント2回戦で李尚洙に、丹羽考希(同5位)が決勝トーナメント1回戦で鄭栄植に敗れ、女子は平野美宇が決勝トーナメント1回戦で馮亜蘭(同ランク外、中国)に敗れ、課題を残した。

中国の牙城が崩れ始めた!?

例年のITTFワールドツアーでは中国選手の出場している大会では中国勢が上位を占める傾向にあったが、今大会は大会を通して中国選手の敗戦が目立った。特に男子シングルスでは、ほとんどの中国選手が海外選手に敗れる波乱が続いた。

決勝トーナメント1回戦で世界選手権で2度優勝している張継科(同ランク外、中国)がアポローニャ(同39位、ポルトガル)に敗れると、準々決勝でアジアカップ王者の林高遠(同7位、中国)も地元開催で勢いに乗るボル(同4位、ドイツ)に敗れた。同じく準々決勝では、中国の主力選手の1人である許昕(同ランク外、中国)までもが李尚洙(同13位、韓国)に0-4のストレートで敗れた。

更に準決勝ではワールドカップ優勝で勢いにのるオフチャロフ(同3位、ドイツ)が樊振東(同2位、中国)をフルゲームデュースの激戦の末に下した。

男子ダブルスでも、張本/木造ペアが世界選手権金メダリストの許昕/樊振東ペアにストレート勝ちを収めるなど、今回のドイツオープンでは、卓球界に絶対王者として君臨し続けている中国に、危機感を覚えさせる試合が多く見られた。

また、女子シングルスでも、日本選手が中国選手に勝つ場面が随所に見られた。決勝トーナメントの1回戦では早田ひながSUN Mingyang (同206位、中国)に、伊藤美誠(同6位)が顧玉婷(同22位、中国)に、佐藤瞳(同12位)が王藝迪(同94位、中国)に、それぞれ勝利した。

さらに準々決勝では、日本のエース石川佳純(同4位)が、これまで相性の悪かったカットマンの武楊(同ランク外、中国)にストレート勝ちを収めた。用具変更の成果もあり、繋ぎのループドライブと決定打のスピードドライブの使い分けが良く、石川のカット打ちが進化していることが見て取れた。

以上のように今回のドイツオープンは、男女ともにヨーロッパ、アジア各国の選手が中国選手の背中に手が届いたように見えた大会であった。中国勢がビッグゲームに向け本気で調整した際の強さは際立っているので、追いつくのはそう簡単では無いが、今大会各国の選手にとって中国選手に勝った経験は自信とモチベーションに繋がることだろう。

男子シングルス決勝は地元ドイツの英雄同士の激闘

ドイツオープン最後の対戦カードである男子シングルスの決勝戦は、地元ドイツのオフチャロフとボルの同士討ちとなった。10月のワールドカップに続くドイツ選手同士の決勝とあって地元の大歓声の中、試合が始まった。

1ゲーム目から互いに譲らぬ展開となり、強烈な3球目攻撃や激しいラリーの連続となったが、ボルの安定感が少し上回り、11-9でボルが先取した。2、3ゲーム目は、オフチャロフの得意技である打球点の高いパワーボールが火を噴き、オフチャロフが11-5、11-9で連取。

その後オフチャロフ優勢で進むもののボルが普段は見せないバックハンドサービスでサービスエースを連発するなどの粘りを見せ、3-3でファイナルゲームにもつれる。

最終7ゲーム目は、序盤でリードしたオフチャロフがうまくバッククロスのコースを使って逃げ切り、4-3で優勝を決めた。

男子日本のエース水谷隼の結果は?激しい打撃戦となった李尚洙とのベスト8決定戦

男子シングルス決勝トーナメント2回戦では、日本のエース水谷隼(同6位)が韓国の李尚洙と対戦した。両者は過去の対戦同様に激しいラリー戦を展開。

序盤から絶好調の李尚洙に対して、1,2ゲーム目をあっさり奪われてしまった水谷であったが、さすが日本のエース、好き放題させるだけでは終わらせない。続く3,4,5ゲーム目は、巧みな台上技術と質の高いサービスの組み立てにより連取する。しかしながら、6ゲーム目はうまく李尚洙に対応され11-8でゲームを失ってしまう。最終第7ゲーム目は、序盤から両者一歩も譲らない激しいラリー戦となった。特に4-5での李尚洙の得点は、台上ストップからバックの差し合い、そしてフォアの引き合いの末に李が水谷のフォア側を打ち抜き、今大会最も会場を沸かせるスーパーラリーとなった。幾度とない相手のマッチポイントをしのいだ水谷だったが、最後は14-16で敗れベスト16に終わった。

2017年ドイツオープン:男子最終結果

シングルス優勝:オフチャロフ(ドイツ)、準優勝:ボル(ドイツ)、ベスト4:樊振東(中国)、李尚洙(韓国)
ダブルス優勝:鄭栄植/李尚洙(韓国)、準優勝:張本智和/木造勇人、ベスト4:LAM Siu Hang(香港)/ 于子洋(中国)、何鈞傑/黄鎮廷(香港)
U21優勝:薛飛(中国)、準優勝:及川瑞基、ベスト4:何鈞傑(香港)、廖振珽(台湾)

2017年ドイツオープン:女子最終結果

シングルス優勝:陳夢(中国)、準優勝:朱雨玲 (中国)、ベスト4:石川佳純、馮亜蘭(中国)
ダブルス優勝:早田ひな/平野美宇、準優勝:陳思羽/鄭怡静(台湾)、ベスト4:顧玉婷(中国)/ 蘇慧音(香港)、杜凱栞/李皓晴(香港)
U21優勝:陳可(中国)、準優勝:SUN Mingyang (中国)、ベスト4:SOO Wai Yam Minnie (香港)、前田美優

2017年ドイツオープン:主な日本選手の結果

男子シングルス

決勝トーナメント1回戦
丹羽考希 2(5,-9,-5,10,-6,-7)4 鄭栄植(韓国)

決勝トーナメント2回戦
水谷隼 3(-3,-7,4,10,9,-8,-14)4 李尚洙(韓国)

準々決勝
松平健太 1(-8,-6,-5,8,-9)4 樊振東(中国)

女子シングルス

決勝トーナメント1回戦
平野美宇 2(-8,10,-8,-8,11,-4)4 馮亜蘭(中国)

準々決勝
伊藤美誠 1(6,-13,-4,-7,-9)4 馮亜蘭(中国)
石川佳純 4(4,7,8,3)0 武楊(中国)

準決勝
石川佳純 1(-4,-10,12,-5,-8)4 朱雨玲(中国)

男子ダブルス

準々決勝
張本智和/木造勇人 3(11,10,6)0 樊振東/許昕(中国)

準決勝
張本智和/木造勇人 3(13,2,4)0 何鈞傑/黄鎮廷(香港)

決勝
張本智和/木造勇人 2(8,3,-5,-14,-6)3 鄭栄植/李尚洙(韓国)

女子ダブルス

準々決勝
早田ひな/平野美宇 3(9,9,-8,6)1 田志希/梁夏銀(韓国)

準決勝
早田ひな/平野美宇 3(7,-3,-10,6,7)2 顧玉婷(中国)/蘇慧音(香港)

決勝
早田ひな/平野美宇 3(7,8,9)0 陳思羽/鄭怡静(台湾)

男子U21

準々決勝
吉村和弘 0(-7,-11,-9)3 何鈞傑(香港)
木造勇人 2(6,-9,9,-9,-8)3 及川瑞基

準決勝
及川瑞基 3(7,5,-8,7)1 廖振珽(台湾)

決勝
及川瑞基 0(-7,-8,-9)3 薛飛(中国)

女子U21

準々決勝
安藤みなみ 1(-5,-7,8,-8)3 陳可(中国)
前田美優 3(-8,8,-8,8,6)2 李ジオン(韓国)
長崎美柚 2(5,-10,11,-9,-6)3 SUN Mingyang (中国)

準決勝
前田美優 0(-6,-9,-8,)3 SUN Mingyang (中国)

試合結果の見方

表記ルール: 選手名A ゲーム数(各ゲームのポイント)ゲーム数 選手名B

各ゲームのポイントの表記例: 選手Aが選手Bと対戦し、1ゲーム目11対6、2ゲーム目11対5、3ゲーム目12対10で選手Aが勝ち、選手Bが負けた場合、
「選手A 3(6,5,10)0 選手B」 または 「選手B 0(-6,-5,-10)3 選手A」 と表記。