【卓球】2018年の最後に中国が見せた強さの秘訣 キーワードは「組織力」と「育成力」 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

大会報道 【卓球】2018年の最後に中国が見せた強さの秘訣 キーワードは「組織力」と「育成力」

2018.12.31

文:川嶋弘文(ラリーズ編集長)

写真は石川佳純(全農)/撮影:森田直樹(アフロスポーツ)

国際卓球連盟(ITTF)ワールドツアーの年間王者を決めるグランドファイナル(12月10日〜16日・韓国インチョン)では、男子シングルスで張本智和(JOCエリートアカデミー)が史上最年少(15歳172日)で優勝を決めると、その余韻冷めやらぬコートで、女子ダブルス決勝が行われ、伊藤美誠(スターツSC)・早田ひな(日本生命)の18歳ペアが初優勝を遂げた。

日本の若手選手が「卓球帝国」中国を国際大会の決勝で破る姿に、各国のメディアの報道も加熱した。

一方で卓球界の2大タイトルである世界選手権とオリンピック(特に男女シングルスと団体)では、中国は金メダルを簡単には譲ってはくれない。2018年を振り返ってみても5月の世界選手権、10月のユース五輪で成長著しい日本勢が中国を追い詰めるシーンもあったが、表彰台の一番高い所に立っているのは中国だった。

こうして世界の頂点に君臨し続ける中国の強さの秘訣が、今年のグランドファイナルからも垣間見えた。

1つはその「組織力」だ。張本や伊藤・早田が出場したグランドファイナル決勝は日曜夜間に行われたということもあり、多くの国の選手やナショナルチーム関係者は会場を後にしていたが、中国だけは違った。

協会幹部に加え、敗れたトップ選手たちのほぼ全員が会場に残り、張本や伊藤、早田のプレーを食い入るように見つめていた。まさに国を挙げて日本勢を研究し、オリンピックや世界選手権などのビッグゲームで負けない対策を講じていたのだ。

中国卓球協会会長に就任した劉国梁氏(奥)

「一度勝った後が大変」「マークされると弱点を突かれる」と日本のトッププレーヤーたちも口を揃えるほど、中国の組織を挙げての選手研究は徹底しており、中国卓球の強さを支えている。

2つ目は「育成力」だ。2018年はITTF世界ランキングのポイントルールが大きく変わり、ワールドツアーにコンスタントに出場している選手がランキング上位に名を連ねやすくなった。

逆に言えば、実力派でもワールドツアーに出ていない選手やケガで一時的に戦線離脱した選手は世界ランキングでは格下となるケースがある。

今年のグランドファイナルでは世界ランキング50位の何卓佳(中国)が石川佳純(全農・同3位)や丁寧(中国・同2位)を破り決勝まで進出した。一見石川と丁寧が格下の選手に敗れた番狂わせのように見えるが、実はそうではない。バック面に異質ラバーを貼る何卓佳は元々福原愛対策のコピー選手として育成され、直近では同じ異質の伊藤美誠対策としても中国ナショナルチームでも重要な役割を果たす実力者だ。一方でワールドツアーでの実績が少なく今年4月までは294位だったが、5月の香港オープンで中国主力の劉詩ブンを破って準決勝進出を果たすと、7月のオーストリアオープンでは伊藤美誠を、11月のオーストリアオープンでは石川佳純を破るなどランキングを上げ、12月のグランドファイナルでその実力と潜在能力を示した。石川佳純が劣勢から粘り強いプレーで何卓佳を追い詰めたことは、次へのステップとなるといえる。それほど中国が育てた何卓佳の強さは本物だ。

何卓佳(中国)

写真:森田直樹/アフロスポーツ

また、10月のユース五輪男子シングルス決勝で張本智和を破った中国の若手左腕の王楚欽も、今年1月の世界ランキング391位から現在85位まで上げてきており、前述の何卓佳と同様、今後世界のトップランカーに名を連ねる可能性が高い。

こうしたスター選手候補を何人も育てられるのが「卓球帝国」中国の凄さであり、その組織力、育成力に打ち勝たなければ、日本のファンが夢見る五輪や世界選手権での金メダルは成し得ない厳しさがある。

東京五輪前年となる2019年の卓球界は1月の全日本選手権からはじまり、3月の世界選手権代表選考を兼ねたジャパントップ12、Tリーグ王者決定、4月のアジアカップ、世界選手権(個人戦)とビッグゲームが目白押しだ。

グランドファイナルで優勝した張本智和、伊藤美誠、早田ひなが中国の徹底したマークと研究を乗り越え、再び中国超えを果たせるか。また、実力者の何卓佳を追い詰めた石川佳純が更にプレーを進化させ、次へのステップとできるのか。2019年も、世界の頂点を狙う日本の卓球から目が離せない。