文:ラリーズ編集部
14日、卓球女子で東京五輪代表に内定している伊藤美誠(スターツ)がカタール遠征から帰国し、2つの優勝トロフィーとともにオンラインでの取材に応じた。新設されたワールドテーブルテニス(WTT)のツアー2大会(コンテンダー、スターコンテンダー)。伊藤はシングルスで2大会とも優勝し、世界ランキング2位に返り咲いた。
11月のITTFファイナルズ以来約4ヶ月ぶりの国際大会は、久しぶりの5ゲームスマッチ(編集部注:従来のワールドツアー本戦は7ゲームスマッチが多い)からスタートし、初戦から3-2と苦戦を強いられた。伊藤は「1試合目は意地で乗り越えたという感じ。そこからだんだん、じわじわ楽しくなってきた」と大会を振り返った。
中国勢がエントリーを見送り、2大会とも第1シードとして戦った伊藤はシングルスで10戦負けなしで帰国。「相手の実力は1日1日違うと思う。『その日にどう勝つか』が大事。しっかり2大会優勝できたし、1試合1試合がすごく濃い内容だった」と結果と内容がともに充実していたことを明かした。
水谷隼(木下グループ)と組んだ混合ダブルスでは昨年3月のカタールオープン以来約1年ぶりの実戦でベスト4。「ミックスはお互いのサーブの回転も違うので、慣れって大事」「練習をしていくのも大事だし、ミックスの試合感覚をもっと磨いていけたらいい」と五輪本番に向け課題が明確になった。
伊藤はこの後14日間の隔離期間に入るが、「(隔離中も)普段の練習生活をさせていただけるような施設にいます。(卓球台を使っての練習ができるので)本当にありがたい」と周囲のサポートに感謝しつつ、会見を終えた。
伊藤のカタール遠征全13試合のスコアとオンライン会見でのやりとり(一部)は以下の通り。
伊藤美誠 WTTドーハシリーズ全試合結果
写真:伊藤美誠(スターツ)/提供:新華社/アフロ
スターコンテンダー(シングルス)
決勝:伊藤美誠 4-1 馮天薇(シンガポール)
10-12/12-10/11-7/11-8/11-6
準決勝:伊藤美誠 4-1 田志希(韓国)
11-5/17-15/9-11/11-5/15-13
準々決勝:伊藤美誠 3-1 A.ディアス(プエルトリコ)
11-6/9-11/11-8/11-8
3回戦:伊藤美誠 3-0 大藤沙月(四天王寺高)
12-10/11-5/11-8
2回戦 伊藤美誠 3-0 M.バトラ(インド)
11-7/11-6/11-7
コンテンダー(シングルス)
決勝:伊藤美誠 4-2 早田ひな
11-9/11-8/6-11/9-11/11-9/11-6
準決勝:伊藤美誠 4-1 于梦雨(シンガポール)
11-13/11-7/11-9/11-5/13-11
準々決勝:伊藤美誠 3-0 梁夏銀(韓国)
11-8/12-10/11-9
3回戦:伊藤美誠 3–0 N.ミッテルハム(ドイツ)
11-7/11-4/11-9
2回戦:伊藤美誠 3–2 B.エーラント(オランダ)
8-11/11-8/11-9/10-12/11-4
スターコンテンダー(混合ダブルス)
写真:水谷隼(写真奥)・伊藤美誠/提供:ittfworld
準決勝:水谷隼/伊藤美誠 1-3 李尚洙/田志希(韓国)
11-3/4-11/9-11/9-11
準々決勝:水谷隼/伊藤美誠 3-1 ルベッソン/ユアン(フランス)
6-11/11-2/11-4/11-9
1回戦:水谷隼/伊藤美誠 3-1 アファナドール/ディアス(プエルトリコ)
11-8/8-11/12-10/11-4
伊藤美誠 帰国後会見
写真:伊藤美誠(スターツ)/提供:新華社/アフロ
今大会を振り返って
2大会とも1試合1試合乗り越えた。久しぶりの5ゲームスマッチもあり1ゲーム目がすごく大事だと思ってプレーした。1試合目からは自分らしさが出なかったが、苦しい部分を乗り越えて、だんだん楽しくなってきた。コツコツ頑張ったという感じの大会だった。
手応えを掴んだシーン
1大会目(コンテンダー大会)の1試合目はフルセットで、色々と会場慣れや卓球台への慣れがあったんですけど、1試合目は意地で乗り越えたという感じ。そこからだんだん、じわじわ楽しくなってきた。普段みたいに「1試合目から絶好調!」というわけではなく、今回は1日1日自分の出来ることを全て出し切って、得たものだったと思う。
どの試合がすごく良かったというわけではなくて、全体を通して、どの試合も1ゲームの中で4点差とか離れるシーンがあったが、それをしっかり盛り返して勝つことが出来た試合がすごく多かった大会。ゲームを取れた試合が簡単なものではなくて、挽回して取ったのがすごくあった。実力も上がったし、精神的に落ち着いてできたのかなと思う。
シングルスで挑戦したところと課題
5ゲームだったので0-2になってしまっても7ゲームの0-3よりは挽回出来る可能性はあるんですけど、それでも最初の方に、特に1ゲーム目からリードして良いスタートを切れたら良いと思ってやっていた。会場の慣れなどもあってなかなか難しかったが、1本1本前よりも落ち着いてできた。私は早くパンパンと試合を進めるタイプですが、落ち着いて考えてプレーできた。その中でも考えるけど考えすぎずにできたのも良かった。
最近は、試合の中で修正できることが増えたけど、もっと早くできるようにできればもっと最初から楽しめていた。(大会を通じて)だんだんと楽しくなってきたので、楽しんだもの勝ちだなと思いました。
中国選手不在の中、第1シードで2大会勝ち切ったことについて
第1シードで試合に臨んで、今回はそんなにポイントのことは考えず、ただ勝ったらついてくると思ってやっていたので、そんなに重たく受け止めず、とにかく今できること、その1日1日できることを全て出し切ろうと思っていました。
今回久しぶりに第1シード。そういう風に思わせないようにというか、思わずに出来ていた。その日その日対戦してみないとその人の実力は1日1日違うと思う。その日にどう勝つかが大事になってくると思う。しっかり2大会優勝できたし、1試合1試合がすごく濃い内容だったと思う。
今後の中国選手との対戦について
どんな状態でもしっかりどの選手にも勝つということをやってきている。中国選手といつでも出来るような準備をしたい。もちろん万全な状態で臨むのが一番。自分自身がその日に実力を出し切れるように準備をして、早く中国選手と試合がしたいと本当に思います。
世界ランキング2位に返り咲いたことについて
世界ランキングがすごく大事と分かっています。ただ、自分自身では「やることをやって優勝を勝ち取って、ランクも上がった」という感じ。自分で勝ち取って上に行けているので、すごく気持ちいいと思いました。
1年ぶりの混合ダブルスの手応えと課題
1年ぶりで、カタールの出発1週前ぐらいの水谷選手がTリーグに参加する前に練習1日だけさせて貰って、その時は久しぶりの感覚はしなかった。でも1年って大きいんだなって思いましたし、もちろん個々の力を上げていると思うんですけど、ミックスはお互いのサーブの回転も違うので、慣れって大事だなと思いました。私たち、本当に練習しない方だけどそれでも慣れは大事。練習をしていくのも大事だし、ミックスの試合感覚をもっと磨いていけたらいいと思いました。
今後の予定
オリンピックまでに次の大会があるという風にされているんですけど、私自身は出場するしないは決めていない。しっかり話し合って出場するかしないかを決めたい。オリンピック前に今回2大会優勝できてすごく自信を持てたので、もっと実力をつけて自信をもって試合に臨めたらいいなと思います。
帰国後の隔離期間(14日間)の過ごし方について
海外のように練習が完全に出来ないわけではない。隔離は14日間。普段の練習生活をさせていただけるような施設にいます。(卓球台を使っての練習ができるので)そこはありがたい。中国では(卓球台を使えない)10日間の隔離があったんですけど、それも結構厳しかった。前回中国から帰ってきた時も練習をやらせてもらったので、同じ感じで今回もやらせてもらいます。
関連記事
>>卓球女子世界ランキング(2021年第10週) WTT優勝の伊藤美誠、自己最高タイの2位返り咲き
>>張本智和、伊藤美誠とのアベックV達成 今季国際大会初タイトル獲得