大会報道 【卓球・シリーズ/徹底分析】中国の“ダークホース”を打ち破った石川佳純 2つの強さとは<チェコオープン2018・女子一般シングルス決勝>
2018.09.04
文:ラリーズ編集部
*写真は石川佳純(全農)
<ITTFワールドツアー・チェコオープン(オロモウツ)、2018年8月21日〜26日>
白熱した試合をラリーズ独自の視点で振り返る、【シリーズ・徹底分析】。
今回は、チェコオープン・女子一般シングルス決勝の石川佳純(9月度世界ランキング4位・25歳)=全農=と文佳(同79位・29歳)=中国=の試合に迫る。
文佳はチェコオープン準々決勝にて伊藤美誠(同7位・17歳)=スターツSC=にフルゲームの末勝利した強敵だ。
今回は国際大会にもほとんど出場していない、実力未知数の“ダークホース”に打ち勝った石川の2つの強さに迫る。
チェコオープン・女子一般シングルス決勝:石川佳純(全農) vs 文佳(中国)
<スコア>
○石川佳純 4-2 文佳(中国)
8-11/11-8/11-4/7-11/11-6/13-11
石川の強さ1:絶妙なボールコントロールでチャンスを作り出せる
試合序盤は、文佳がバックハンド対バックハンドのラリーでミスが少なく、リードを奪う。文佳はパワーで押すというよりも、安定した両ハンドで、コースを上手く突いて得点するような巧みなプレーを得意とする選手だ。
石川はフォア前(フォアサイドのネット寄りの短いボール)への巻き込みサーブ(手首を内側に巻き込むようにして横回転をかけるサーブ)からの有効な展開をつくるも、第1ゲームは奪われる。
第2ゲーム、石川はバックハンド対バックハンドの勝負で変化をつけ始めた。文佳のミドル(選手の懐あたり)を一回突いてから、両サイドにボールを打つというコース取りの変化だ。
このコース取りは、両ハンドをバランスよく使い分ける選手には効果的で、ミドルにボールが来ると、「バックで打とうか、フォアで打とうか」と一瞬の迷いが出る。文佳が少し迷うことで威力の落ちた返球を、石川はフルスイングのフォアドライブで打ち抜き、そこから一気にエンジンがかかり始めたのだ。石川はこの精度の高いミドル戦術で第2.3ゲームを奪い、試合の流れを掴んだ。
石川の強さ2:悪い流れを断ち切る高い集中力
ミドルを狙い、相手が繋いできたボールをカウンターする。この戦術がうまく機能し、石川自身も勢いづく。ゲームカウント3-2、ポイント10-10となった緊張の場面で、アクシデントが待ち受けいた。
石川がフォア前に放った鋭いサーブを文佳がミス、したように見えたが、文佳はレット(サーブがネットに引っかかって入った場合、やり直しとなる。)を主張。大多数の観客からはそれはレットに見えなかったものの、文佳は激しくレットを主張し、ゲームは一時中断に。
ゲームカウントから見てもリードを奪っているのは石川だが、この中断により、嫌な“間”が開く。勢いに乗っていた選手にとってはこの中断が流れを変えかねない状況でもある。
実際、この中断が終わり(レットは認められず、石川の得点となった。)その後のラリーで文佳が鋭いフォアハンドドライブで得点し、11-11に。しかし石川は冷静に対応し、13-11でこのゲームを制し、見事優勝を飾った。
本当にレットがあったのかは定かではないが、プロの世界では得点の合計が6の倍数になった場合に取れるタオル休憩に加えて、このようなレットを主張することもあえて間を置いて、試合の流れを切るために行われることがある。
試合ごとひっくり返る可能性があるこの状況で堅実にこの第6ゲームを取れたことは、石川の驚異的とも言える集中力を物語っているのではないだろうか。
写真:ittfworld