文:ラリーズ編集部
白熱した試合をラリーズ独自の視点で振り返る、【シリーズ・徹底分析】。
今回は、チェコオープン・女子シングルス準々決勝の石川佳純(8月度世界ランキング6位・全農)と何卓佳(フーズオジャー・同19位・中国)の試合に迫る。
チェコオープンの直前のブルガリアオープンでは、何卓佳の鉄壁のバックハンドを前にミスを誘われ、あと1点が取れずにストレートで敗れている。
ブルガリアオープンの試合を含め、何卓佳との対戦経歴は、2014年に初対戦で石川が勝利して以来、フルゲームにもつれ込む試合もありながら石川が3連敗を喫している。
分の悪い何卓佳に石川はどのようにして勝利を収めたのか。そこにはこれまでの敗戦から学んだ教訓を活かす3つの戦術があった。
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チェコオープン 女子シングルス準々決勝:石川佳純VS何卓佳
写真:石川佳純(全農)/提供:ittfworld
詳細スコア
○石川佳純 4-1 何卓佳
11-9/11-6/11-6/7-11/11-9
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1. 定石通りだが徹底したサーブの配球
写真:石川佳純のサーブの配球/図:ラリーズ編集部作成
石川はシェークハンドを相手にする際の定石通りに、何卓佳のフォア前とバックロングへのサーブを徹底した。
何卓佳のフォア前のレシーブはフォアハンドでのストップやツッツキ、またはバックで回り込んでのレシーブが中心となる。
そこで石川は何卓佳のフォア前に順横上回転のサーブを集め、何卓佳の甘いフォアレシーブを誘い、フォアハンドで強烈な3球目攻撃につなげた。
何卓佳がバックでフォア前のサーブをレシーブすると、すかさず空いた相手のバック側にボールを送り、ラリーの主導権を握った。
一方で、フォア前のサーブ一辺倒では徐々に対応されてしまうため、石川は同時に何卓佳のバック側にロングサーブを出して、バックでフォア前に回り込ませないように工夫した。
2. 相手のミドルにボールを集め、広角に振らせないコース取り
写真:石川佳純のコース取り/図:ラリーズ編集部作成
石川はこれまでの対戦で、何卓佳の回転量の多い緩いループドライブと、ややフラット気味のフォアドライブを嫌い、バック対バックに持ち込む展開を多用していた。
しかし、バック対バックに持ち込むと、何卓佳が先にクロス(石川のフォア側)へとコースを変え、広角に振られた石川の打球が甘くなったり、ミスを誘われたりすることが多かった。
今回の試合では、石川はバック対バックではなく、何卓佳のフォアミドルにボールを集めた。それにより、広角に振られることを防ぎ、石川は先にフォア側に振られても万全な態勢で打球できるようにしていた。
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3. 我慢強いプレーとフォア側への強打
ブルガリアオープンでは、ラリー戦になった時に強打で抜き去ろうとするも、何卓佳のバックハンドブロックにミスを誘われていた。
そこで今回は無理に決めに行くのではなく、両ハンドでしっかりと回転をかけ、相手のブロックが甘くなったところを決める我慢強いプレーで何卓佳を圧倒した。
写真:石川佳純の強打のコース/図:ラリーズ編集部
また、ラリー戦では異質ラバーによる回転量に変化が多いバックブロックを避け、何卓佳のフォア側への強打を織り交ぜたことも勝因の1つに挙げられるだろう。
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まとめ
中国選手との対戦が多い石川佳純は、今もなお中国の壁を超えるために自ら変化を求めている。
今回の試合では、今までの3連敗からの教訓を活かし、弱気にならないように果敢に攻め続けた。技術的にも精神的にも成長し続けている石川佳純のこれからの活躍から目を離せない。