【シリーズ/徹底分析】吉村和弘が韓国選手の勢いを封じた2つの作戦とは【香港オープン2018男子シングルス決勝】


<2018年5月22日〜5月27日 ITTFワールドツアー・香港オープン (ハンセン)>

熱戦をラリーズ独自の視点で振り返る、シリーズ・徹底分析。

今回は香港オープン2018男子シングルス決勝、吉村和弘(愛知工業大学・5月度世界ランキング105位)とCHO Seungmin(同54位・韓国)の一戦に迫る。

吉村にとっては初となる世界大会での優勝を果たし、「真晴の弟」を脱却、「吉村和弘」の名前を世界に印象づけた。吉村の台頭によって、2020年に向けた男子日本卓球代表候補に新たな顔ぶれが加わることになるかもしれない。

それほど大きなインパクトを秘めた優勝だった。ではいかにして吉村は格上の趙に勝利を収めたのか。優勝の裏側にあったのは運や勢いではない。勝負師・吉村和弘の冷静な判断があった。

香港オープン2018男子シングルス決勝:吉村和弘 vs CHO Seungmin(韓国)

<スコア>
吉村和弘 4-1 CHO Seungmin(韓国)
11-5/5-11/11-8/11-3/11-7

香港オープン2018男子シングルスで吉村和弘と対戦したCHO Seungmin(韓国)。韓国選手らしい快速フットワークと威力のあるフォアハンドが持ち味だ。
写真:新華社/アフロ

吉村和弘の戦術1:フォア⇔バックへと揺さぶる

吉村はまず相手のフォアサイドを狙い、フォア側に相手を寄せた後で、空いたバックサイドを厳しく突いた
図:ラリーズ編集部

迎えた決勝戦、両者の狙いを一言で語れば「得意のフォアハンドを活かしたラリー戦に持ち込みたい趙」VS「得意のバックハンドを活かし、ラリーに持ち込ませたくない吉村」だ。

趙をはじめとする韓国の若手選手はフットワークに定評があり、フォアハンド攻撃の威力がある。同じところに返球し、ラリーに持ち込まれると相手のペースに飲み込まれ、手がつけられなくなってしまう。吉村にとっては「いかに趙にフォアハンドで連続攻撃をさせないか」が試合を制するポイントであった。

そこで吉村はシンプルな戦術を徹底する。それは、相手のフォアサイドを突いてから、次球を相手のバックサイドに攻撃し、“揺さぶり”をかけたのだ。

相手にフォアで連打させないためには、一度相手を大きくフォアサイドに動かし、次球を素早くバックへ送球すればよい。この鉄板のコース取りを吉村は武器である高速バックハンドカウンターで実現し、相手の連続攻撃を防いだ。

第2ゲームこそ趙の緩急を織り交ぜた攻撃に対応できずあっさりと落としたものの、試合を通じて「趙をフォア側に寄せ、空いたバックを鋭く攻める」という戦術が功を奏し、吉村は第4ゲーム終了時点でゲームカウント3-1と優位に立つことができた。

吉村和弘の戦術2:相手の読みを外すレシーブをする

吉村の甘いドライブを待っていた趙勝敏だったが、吉村が趙の読みを外しにかかった。
図:ラリーズ編集部

第5ゲーム、追い込まれた趙は流れを変えるため、大きな戦術転換を図る。それは、趙が先に攻めるのではなく、吉村に先にフォアで攻撃させ、ラリーに持ち込むというものだ。吉村の高速バックハンドを封じながらも趙の得意な大きなラリーに持ち込むための策だ。

特に趙は吉村のフォアサイドを切るコースにハーフロング(台上で2バウンドするかしないかのギリギリの長さ)のサーブを多用した。ストレートに強打をするのが難しいこのサーブに対しては、持ち上げるようなゆっくりとしたループドライブをクロスに返球しがちであるため、そのボールを狙い打つのがセオリーだ。

これは対戦相手同士の利き手が逆の場合、すなわち右利きと左利きが対戦する際によく用いられる戦術である。

しかし趙の狙いを読んだ吉村は、趙のサーブを無理にフォアハンドで攻撃せず、クロスに深くツッツキ(バックスピンをかけた返球)をしたり、ストレートにチキータ(バックハンドでサイドスピンをかけた攻撃的な返球)をしたりと相手の読みを外すレシーブで対応した。

こうなると、為すすべがなくなるのは趙だ。迷いからか第5ゲームに2度のサーブミスを犯してしまう。最後は趙が吉村のフォア側へ出したハーフロングサーブに対し、吉村は全力でのドライブレシーブを決め、ゲームカウント4-1で試合を決めた。

吉村が躍進した2017年1月全日本選手権決勝の時は、安定している絶対王者、水谷隼(同13位・木下グループ)を意識して、レシーブでも積極的にチキータを繰り出すなどリスキーなスタイルであった。

しかし今回の決勝ではミスがほとんどなかった上に、冷静に相手の動きを見て対応するなど、貫禄あるプレーを見せてくれた。

フィジカルを強化し、そして戦術面でもアグレッシブなスタイルに進化を遂げた吉村和弘から今後も目が離せない。

文:ラリーズ編集部
写真:新華社/アフロ

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