伊藤・早田ペアが最強中国ペアを破り優勝。石川もベスト4入り【ITTFスウェーデンオープン・大会レポート】 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

大会報道 伊藤・早田ペアが最強中国ペアを破り優勝。石川もベスト4入り【ITTFスウェーデンオープン・大会レポート】

2017.11.21

文:中川正博(ラリーズ編集部)

文:中川正博(ラリーズ編集部)
写真:アフロ
<11月13日〜19日 ITTFワールドツアー・スウェーデンオープン (ストックホルム)>

【大会総括】伊藤・早田が最強中国ペアを破り優勝、石川も中国勢を連破し、価値あるベスト4入り

11月19日(現地時間)まで続いたスウェーデンオープンの全日程が終了した。

今回のスウェーデンオープンも日本人選手の参加者が多く、総勢25名(自主参加の選手を含む)がエントリーした。

2017年のスウェーデンオープンでは、女子シングルスで石川佳純(ITTF世界ランク4位、11月現在)がベスト4の他、女子ダブルスで伊藤美誠 (同6位)/早田ひな(同14位)が優勝と、日本人選手が3名表彰台に上がった。その一方で、男子は残念ながら表彰台に一歩届かなかった。

男子シングルスでは、先日のドイツオープンでは振るわなかった中国勢がベスト4を独占。決勝は樊振東(同2位、中国)と許昕(同ランク外、中国)の同士討ちとなり、許昕が意地を見せ、ゲームカウント4-1で優勝を決めた。

女子シングルスでは、石川が李暁丹(同ランク外、中国)を倒すと、勢いそのままに顧玉婷(同22位、中国)にも勝利した。準決勝の丁寧(同ランク外、中国)戦ではストレート負けを喫し、ベスト4に終わったものの、中国選手相手に連勝をして掴んだベスト4は価値あるものと思われる。

決勝は丁寧と陳幸同(同33位、中国)の中国選手対決となり、陳幸同がフルゲーム9点の大接戦を制し、優勝した。

陳幸同は今大会で、世界ランクトップの朱雨玲(同1位、中国)と陳夢(同2位、中国)にも勝利しており、平野美宇(同5位)にも1回戦で勝っている。早い打点から仕掛けていく速攻プレーが特徴的な選手であり、一部では平野のコピー選手と言われているが、今回は平野や、中国のエース級の選手を次々と倒す大躍進となった。

その他、シングルスでも期待されていた伊藤美誠は1回戦で孫銘陽(同206位、中国)に負けを喫し、課題が残る形となった。
しかしながら、早田と組んだ女子ダブルスでは1ゲームも失うことなく決勝進出、さらには決勝戦で朱雨玲/陳夢(中国)の世界ランク1位、2位の最強ペアに挑み、3-1で勝利。ストレートのコースを巧みに使った素晴らしい戦術で、嬉しいツアー優勝を手にした。早田はドイツオープンに続き、ダブルスでツアー2連勝となった。

男子ダブルスは、森薗政崇(同50位)/大島祐哉(同21位)ペアが棄権したため日本選手は登場しなかった。順当な勝ち上がりとなった決勝は樊振東/許昕(中国)が何鈞傑/黄鎮廷(香港)に快勝し、優勝を決めた。

本大会では、中国選手が改めて強さを見せつけることとなったが、石川や伊藤/早田ペアが中国選手に勝利した他、多くの日本選手が中国選手を追い詰めるに至った。

丹羽・張本・加藤が中国選手をファイナルゲームまで追い詰める

今大会で、丹羽孝希(同5位)が方博(同12位)に、張本智和(同16位)が許昕に、加藤美優(同17位)が朱雨玲にそれぞれフルゲームと迫り、中国選手をあと一歩のところまで追いつめた。それぞれの試合展開は以下の通り。

丹羽は、方博のフォアハンドを止めきれずに2ゲームを連取されるも、そこから早い打点のブロックやカウンターで相手を崩すことに成功し一気に3ゲームを連取で取り返して逆にリードを奪った。6ゲーム目の0-4の場面では、得意の横回転ブロックで方博をフォアサイドに飛ばした後、何食わぬ顔でがら空きになった方博のバックサイドにもう一度ブロックを送り込むというスーパーラリーで会場を沸かせたものの、このゲームを失ってしまう。あとがない7ゲーム目は息をのむシーソーゲームになったが、最後は方博のカウンターに押し切られ8点でゲームを失い、敗戦となった。

張本は、世界卓球でも敗れている許昕に対して、最初から積極的に攻めて2ゲームを連取した。3ゲーム目は許昕の巧みなコース取りにはまり、取られてしまうものの、4ゲーム目を取り、中国選手への勝利に王手をかけた。しかし、ここからの許昕はやはり強く、点を取らせてもらえずに5点と6点で5ゲーム目、6ゲーム目を落としてしまい、勝負はファイナルゲームへ。7ゲーム目は両者一歩も譲らない展開となるも、最後は許昕の強烈なドライブの回転量に合わせきれず、ボールがエンドラインを越えてしまった。

加藤は、世界ランク1位の朱雨玲に対して流れをつかめず2ゲームを連取されるも、3ゲーム目を逆転で取り返した。続く4ゲーム目は奪われたが、しゃがみ込みサーブからの高速バックハンドで揺さぶり、その後の2ゲームを連取し、フルゲームに持ち込んだ。最終ゲームは朱雨玲の安定感に屈し、残念ながら敗れてしまったものの、中国選手と互角以上のラリーを何本も見せ、加藤の成長を世界にアピールした。
平野、伊藤、早田だけではないと言わんばかりの奮闘を見せ、次世代日本女子の層の厚さに期待を膨らませる結果となった。

中国選手をファイナルゲームまで追い込むことができた3選手であったが、いずれもその壁を破ることができなかった。フルゲームになった時の戦い方が、打倒中国の最たる課題なのかもしれない。

ダブルスの名手、早田ひな

今大会の女子ダブルスでは、伊藤/早田の同級生ペアが最強中国ペアに対しても圧倒的な強さを見せつけて優勝した。蓋を開けてみれば失ったゲームは決勝の1ゲームのみと、高校生ペアとは思えないほどの安定したスコアには、世界の選手たちも驚かされたことだろう。

早田は先日のドイツオープンでも平野とペアを組み、優勝しており、長いリーチを活かすことができるダブルスの名手として世界に存在感を示している。

ドイツオープンや本大会の他にも、早田が活躍したダブルスの試合は多い。昨年のITTFワールドツアー・グランドファイナルで浜本由惟(同28位)とペアを組み優勝した他、伊藤と組み始めた今年は、アジア選手権3位、韓国オープン準優勝、世界選手権3位、チェコオープン優勝、と数々の好成績を収めている。

今後も早田のダブルス、さらにはシングルスでの活躍から目が離せない。

2017年スウェーデンオープン:男子最終結果

シングルス優勝:許昕(中国)、準優勝:樊振東(中国)、ベスト4:方博(中国)、周雨(中国)
ダブルス優勝:樊振東/許昕(中国)、準優勝:何鈞傑/黄鎮廷(香港)、ベスト4:アチャンタ/ガナナセカラン(インド)、張禹珍/鄭栄植(韓国)
U21優勝:朴慶泰(韓国)、準優勝:林兆恒(香港)、ベスト4:酒井明日翔、ヨルジッチ(スロベニア)

2017年スウェーデンオープン:女子最終結果

シングルス優勝:陳幸同(中国)、準優勝:丁寧 (中国)、ベスト4:石川佳純、朱雨玲(中国)
ダブルス優勝:伊藤美誠/早田ひな、準優勝:朱雨玲/陳夢(中国)、ベスト4:陳思羽/鄭怡静(台湾)、杜凱栞/李皓晴(香港)
U21優勝:張瑞(中国)、準優勝:王芸迪(中国)、ベスト4:孫銘陽(中国)、陳可(中国)

2017年スウェーデンオープン:主な日本選手の結果

男子シングルス

決勝トーナメント1回戦
大島祐哉 2(-11,10,-6,-8,10,-6)4 ドゥダ(ドイツ)
森薗政崇 0(-8,-6,-9,-7)4 閻安(中国)
吉村真晴 0(-11,-11,-2,-6)4 林高遠(中国)
丹羽孝希 4(9,4,7,-10,-11,4)2 ヨルジッチ(スロベニア)
松平健太 4(7,-8,4,-8,4,9)2 金東賢(韓国)
張本智和 4(4,-9,-9,-10,5,9,8)3 ルンクウィスト(スウェーデン)

決勝トーナメント2回戦
丹羽孝希 4(4,-6,4,8,7)1 ワン・ヤン(スロバキア)
松平健太 2(7,-5,-8,-9,10,-10)4 グロート(デンマーク)
張本智和 3(9,4,-7,8,-5,-6,-9)4 許昕(中国)

準々決勝
丹羽孝希 3(-7,-6,7,8,8,-8,-8)4 方博(中国)

女子シングルス

決勝トーナメント1回戦
伊藤美誠 2(-7,-10,8,-9,9,-4)4 孫銘陽(中国)
橋本帆乃香 0(-4,-11,-2,-4)4 顧玉婷(中国)
石川佳純 4(-9,9,14,5,6)1 リ・チャン(ポーランド)
佐藤瞳 1(8,-9,-6,-8,-8)4 フー・メレク(トルコ)
平野美宇 1(6,-8,-4,-7,-8)4 陳幸同(中国)
加藤美優 4(-10,-5,9,9,3,-5,8)3 ハン・イン(ドイツ)
早田ひな 2(9,-10,5,-5,-9,-3)4 ユ・モンユ(シンガポール)
木原美悠 1(-4,6,-8,-6,-9)4 朱雨玲(中国)

決勝トーナメント2回戦
石川佳純 4(-8,10,9,-9,10,-5,4)3 李暁丹(中国)
加藤美優 4(-11,5,10,5,9)1 ユ・モンユ(シンガポール)

準々決勝
石川佳純 4(10,10,-8,-5,9,-6,6)3 顧玉婷(中国)
加藤美優 3(-9,-4,12,-6,10,8,-4)4 朱雨玲(中国)

男子ダブルス

決勝トーナメント1回戦
森薗政崇/大島祐哉 WO/L(不戦敗) アルナ(ナイジェリア)/カルバーリョ(ポルトガル)

女子ダブルス

決勝トーナメント1回戦
加藤美優/長崎美柚 0(-7,-11,-7)3 陳思羽/鄭怡静(台湾)
伊藤美誠/早田ひな 3(6,9,10)0 タモルワン/ナンタナ(タイ)

準々決勝
伊藤美誠/早田ひな 3(3,9,8)0 デヌッテ/ニー・シャーリエン(ルクセンブルク)

準決勝
伊藤美誠/早田ひな 3(6,6,8)0 陳思羽/鄭怡静(台湾)

決勝
伊藤美誠/早田ひな 3(8,-1,9,9)1 陳夢/朱雨玲(中国)

男子U21

準々決勝
酒井明日翔 3(4,2,4)0 楊恆韋(台湾)

準決勝
酒井明日翔 1(-10,-8,9,-6)3 朴康賢(韓国)

女子U21

準々決勝
木原美悠 0(-6,-6,-9)3 王芸迪(中国)
長﨑美柚 1(-6,7,-9,-12)3 孫銘陽(中国)
安藤みなみ 1(-10,6,-7,-3)3 張瑞(中国)

試合結果の見方

表記ルール: 選手名A ゲーム数(各ゲームのポイント)ゲーム数 選手名B

各ゲームのポイントの表記例: 選手Aが選手Bと対戦し、1ゲーム目11対6、2ゲーム目11対5、3ゲーム目12対10で選手Aが勝ち、選手Bが負けた場合、
「選手A 3(6,5,10)0 選手B」 または 「選手B 0(-6,-5,-10)3 選手A」 と表記。