文:ラリーズ編集部
Tリーグの見逃せない名勝負をラリーズ編集部独自の視点で解説する【T.LEAGUE 名場面解説】。今回は12月8日のノジマTリーグ・日本生命レッドエルフ(以下、日本生命)vs木下アビエル神奈川(以下、KA神奈川)の一戦から、第3マッチの陳思羽と長﨑美柚の試合にスポットライトを当てる。
陳思羽(チェン・ズーユ)は、昨シーズンに続き日本生命でプレーをしており、今季シングルス5戦全勝と絶好調。森田彩音(トップおとめピンポンズ名古屋)やサウェータブット・スターシニー(日本ペイントマレッツ)、浜本由惟(KA神奈川)に勝利しており日本生命の首位に大きく貢献している。
対する長﨑美柚も昨シーズンからTリーグに参戦している。今年の世界ジュニア選手権ではどちらも日本人初となるの女子シングルス・ダブルスの二冠を果たし、今最も勢いに乗る若手選手だ。チームのエースである石川佳純が不在の中、同じ10代の木原美悠とともにチームを引っ張っている。
今回の試合では長﨑美柚が3-2で陳思羽に勝利したが、一進一退の攻防の中から長﨑が勝利を引き寄せたポイントはどこか解説する。
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ノジマTリーグ 日本生命レッドエルフ 対 木下アビエル神奈川:陳思羽VS長﨑美柚
詳細スコア
陳思羽 2-3 ○長﨑美柚
10-11/11-7/10-11/11-10/8-11/
長﨑美柚のプレーはこちらから
1.打点の早いバックで多彩なコースに打ち分ける
図:長﨑のバックからの展開/作成:ラリーズ編集部
この試合はお互いに攻撃力に定評がある選手のため、いかに相手に攻めさせないかが戦術の中心となっていた。
陳は長﨑を左右に大きく振ることで主導権を握ろうとする。一方で、長﨑は得意の打点の早いバックハンドを利用し、テンポの速いラリー戦に持ち込むという形で2ゲーム目まで互いに1ゲームずつ取り合う一進一退の攻防を繰り広げていた。
2ゲーム目まで長﨑は打点の早いバックハンドを陳のフォアに送ることが多かったが、3ゲーム目以降ミドルやバックにも振ることで陳の読みを難しくさせ、ラリーで優位に立つことができた。
打点の早さはもちろんのこと、リストの強さを生かした回転量豊富なバックを振ることのできる長﨑だからこそバックハンドが決め球になった。
2.ミドルからのサーブで得意な形へ持っていく
図:長﨑のサーブのコース/作成:ラリーズ編集部
今回の試合、長﨑は通常のバック側だけでなくミドルからもサーブを出していた。バック側からのサーブだと回り込みをはじめフォアハンドで攻める展開が増える一方で、フォア前がどうしても遠くなり対応が遅れてしまう。
ミドルからサーブを出すことでフォア前を積極的に攻めることができる。さらにミドルに立つことで、相手はフォアに返球して強打を喰らうリスクを恐れ、バックにレシーブを集める傾向が強まる。そこで長﨑得意の打点の早いバックハンドに繋げることができたのだ。最終ゲームの9-8からのフォアフリックはバックハンドを嫌った陳のレシーブを読み切った形となっている。
序盤長崎のサーブはそこまで陳に効いてはいなかったが、中盤になるにつれ陳が長崎のバックを避けようと迷いが生じ始め、空振りなどのミスが多くなっていった。サーブは1球目攻撃であることはもちろんだが、3球目を自分の得意な展開にもっていくためのサーブの組立ての重要性を改めて感じる試合となった。
まとめ
写真:陳思羽に勝利した長﨑美柚/提供:©T.LEAGUE
ともに好調をキープしている陳思羽と長﨑美柚の対戦となったこの試合は、一進一退の攻防が続いた。この状況を打開したのは、早い打球点と豊富な回転量を併せ持つ長﨑のバックハンドとそれに繋げるためのサーブの組立だった。今回のバックハンドの技術は両ハンドをしっかり振ることができ、テンポの速いラリーを好む若手によくみることができるスタイルだ。
世界ジュニア優勝後、Tリーグを含めシニアでの活躍も期待される長崎美柚の今後に注目だ。