文:ラリーズ編集部
Tリーグの見逃せない名勝負をラリーズ編集部独自の視点で解説する【T.LEAGUE 名場面解説】。
今回は2月11日のノジマTリーグ・木下アビエル神奈川(以下、KA神奈川)VS日本生命レッドエルフ(以下、日本生命)から、石川佳純(KA神奈川)と森さくら(日本生命)のビクトリーマッチ(以下、VM)の一戦にスポットライトを当てる。
石川は今季シングルス11勝と、KA神奈川のエースとして申し分ない活躍を見せている。この日の試合でも、2番シングルスでSランク選手の陳思羽(チェンズーユ・日本生命)を3-0で完封しており、強さを示している。
対する森は首位を走る日本生命の中心メンバーで、今季のシングルスでは実に19試合(VM含む)に出場しており、これは2ndシーズントップの出場数だ。勝利数もリーグトップの12勝を挙げており、チームの首位に大きく貢献している。この日の試合では4番シングルスに出場し、長﨑美柚(KA神奈川)を下してVMへと持ち込んだ。
ともにTリーグで圧倒的な実績を誇り、この日も勝ち星をあげている2人によるVMとなった。2ndシーズンでは両者は開幕直後に2度対戦しており、2試合とも石川が3-1で勝利している。
首位・日本生命と2位・KA神奈川の直接対決、どちらにとっても負けられない試合であったが、序盤から勢いよく得点を重ねた石川がそのままリードを広げ、地元山口で嬉しい勝利を飾った。大きな1勝を引き寄せた石川の巧みな技を解説する。
ノジマTリーグ 木下アビエル神奈川 vs 日本生命レッドエルフ:石川佳純VS森さくら
詳細スコア
○石川佳純 1-0 森さくら
11-4
石川の巧みなプレーが冴えた!
1.相手に思うようなプレーをさせないストップレシーブ
図:石川のストップレシーブ/作成:ラリーズ編集部
VMは1ゲームで勝負がついてしまうため、一度流れが傾くと一気に勝負が決まってしまいかねない。加えて、積極的な攻撃で勢いを作るのが得意な森が相手だ。なんとかして相手を勢いにのせないようなプレーが求められる場面であった。
そこで石川は序盤、台の中で2バウンドするような短いストップレシーブを見せた。これにより森は3球目で強いボールが打てず、思ったようにサーブから攻め込めないという印象を植え付けられることとなった。このあと森はたまらずロングサーブに切り替えたが、石川はきっちり対応。森としてはどのサーブを使えばいいか、非常に困ったであろう。
短く止めるという繊細な技術であるストップレシーブは、VMのような緊張した場面で使うのは非常に難しい。多くの選手は無難なレシーブをしてしまい、森に攻撃させてしまう展開となっていただろう。石川の高い技術力と、豊富な経験による強靭なメンタルがなせた技だ。
2.鉄壁のバックハンド
もう一つのポイントは、ミスの少ない、まさに「鉄壁」と呼ぶべきバックハンドだ。
ラリー戦では両者とも台に近い前陣でのピッチの早いラリーを展開した。その中でも石川は強打を控え、1球1球をしっかり返球するようなプレーを徹底した。特に、バックハンドでのミスがほとんどなく、逆に丁寧に入れてくるボールに対して森が攻めあぐねてネットにかけるシーンが多く見られた。
一刻も早く決めにいきたくなるところを我慢し、粘りのプレーをする。序盤で作った流れを簡単に渡さないという姿勢は、中国選手にも見られる戦術だ。国際大会を数多く経験している石川の引き出しの多さが垣間見えた。
まとめ
写真:勝利後インタビューに答える石川佳純(木下アビエル神奈川)/提供:©T.LEAGUE
VMという大きなプレッシャーがかかる試合で、石川の細やかな技術と戦術が光った一戦だった。強いボール、派手な技術ではなく、緊張した時こそ堅実なプレーをするという考え方は、我々にとっても参考になるであろう。
この試合の勝利でプレーオフファイナル進出を決めたKA神奈川。日本生命とKA神奈川で行われる両国国技館での頂上決戦まであとわずか。石川のこれからの試合も目が離せない。