文:ラリーズ編集部
<ノジマTリーグ2023‐2024シーズン 8月6日 静岡市中央体育館>
地域密着を掲げる新チーム同士、地域を背負う意地がぶつかり合った。
Tリーグ男子の開幕2日目となった8月6日、静岡ジェードと金沢ポートの2チームが対戦した。両チームとも今季からの新規参入チームであり、どちらも勝てば記念すべきTリーグ初勝利という注目度の高い一戦は、金沢ポートが初戦からビクトリーマッチで勝利するという、劇的な結果となった。
2点取りしてチームを勝利に導いた松平健太キャプテンは、試合後のインタビューで「アウェーでの初戦でしたが、みなさんの応援が力になりました」と、充実の表情で振り返った。
6シーズン目を迎える今季Tリーグは、金沢ポートと静岡ジェードの新規参入2チームの熱量が牽引していく予感だ。
【第1マッチ】勢いのある龍崎・森薗ペア
1番ダブルスは、前日の琉球戦勝利で勢いに乗る龍崎東寅・森薗政崇(静岡ジェード)ペアと、Tリーグ初戦の三浦裕大・山本勝也(金沢ポート)ペアの対戦となる。
静岡は明治大OBペア、金沢は遊学館高OBペアという名門校OB対決となった。試合は序盤から得意のレシーブからの展開でリードを広げる静岡ペアに対し、金沢も丁寧な台上処理を起点としたプレーで応戦する。1ゲーム目9-9、2ゲーム目7-7の接戦となったが、勝負どころで森薗のサーブレシーブからの展開で得点を重ねた静岡ペアが2-0のストレート勝ち。見事開幕2連勝となった。
西東輝監督コメント
1ゲーム目が勝負でした。ダブルスの要所を知る森薗選手と食らいついてくる龍崎選手に対して、あと1本が取らせてもらえませんでした。
写真:龍崎東寅・森薗政崇(静岡ジェード)ペア/提供:アフロ
【第2マッチ】充実の仕上がり 監督兼選手・森薗
2番シングルスは森薗政崇(静岡ジェード)と山本勝也(金沢ポート)の対戦。
ともにダブルスからの連戦となったが、山本のつなぎの丁寧なドライブに対し、森薗がカウンターで打ち抜く好プレーを連発、1ゲーム目を11-1、2ゲーム目を11-5と圧倒した。
3ゲーム目は序盤で山本がリードする展開もあったが、森薗が11-9の接戦を制しストレート勝ち。今季から監督兼選手を務める森薗が地元でのホームマッチで単複2点獲りの重責を果たした。
西東輝監督コメント
森薗選手の両ハンドの緩急に山本が崩されました。後半リズムが合ってきて山本の本来のプレーが出始めたところで終わってしまったので残念でしたが、森薗選手のダブルスとシングルスの切り替えの早さは見事でした。
写真:森薗政崇(静岡ジェード)/提供:アフロ
【第3マッチ】松平キャプテンの意地
静岡が王手をかけて迎えた3番、ペンドライブで裏面打法も駆使する静岡の松下大星と、金沢のキャプテン松平健太の対戦となった。
1ゲーム目は松平がサービスエースを連発し序盤からリードをすると、流れの悪くなった場面でバックサーブに切り替えるなど引き出しの多さを見せてゲームを先取した。その後両者1ゲームずつ取り返して2-1となった第4ゲームは松平が10-7とゲームポイントを握るも、そこから脅威の粘りを見せた松下が11-10で逆転。6-6から始まった最終第5ゲームは松平が安定感のあるプレーで4本連取し10-6とマッチポイントを握る。
一方の松下も再び粘りを見せて10-8まで追いつく。最後は松平が中陣からのバックドライブで決め3-2で今季初勝利を挙げた。
西東輝監督コメント
内容的には押していて負ける気配はなかったのに点数は詰まっていく、Tリーグルールの怖さを感じました。しかし、Tリーグを熟知する松平の、戦術の幅の広さに救われました。
写真:松平健太(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
【第4マッチ】成長株・五十嵐が小西を破る
4番シングルスは42歳のベテラン・小西海偉(静岡ジェード)と、金沢ポート入団後、成長著しい五十嵐史弥(金沢ポート)が対戦。
長身から繰り出されるコンパクトなバックハンドでラリーを優位に進めた五十嵐が1ゲームを先取。続く2ゲーム目は小西がペンドライブらしい強烈なフォアドライブを要所で決めゲームカウント1-1とした。第3ゲームは五十嵐が10-7と先にゲームポイントを握るも小西もベテランの意地を見せ、10-9まで追い上げる。たまらずタイムアウトを取った五十嵐だったがが回転量の多いバックハンドで小西のオーバーミスを誘い11-9でゲームを奪取。
勢いそのままに第4ゲームも11-5で取り、嬉しいTリーグシングルス初勝利を挙げた。
写真:吉田海偉(静岡ジェード)/撮影:ラリーズ編集部
西東輝監督コメント
この4、5ヶ月一緒に練習するようになって、試合の進め方の共通認識が深まっています。同じ戦術を考えるようになってきているので、整理しながらゲームを進められたので、落ち着いて見ることができました。「金沢で強くなる」という姿を見せられたのではないかと思います。
写真:五十嵐史弥(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
【ビクトリーマッチ】松平吠える 0-5からの大逆転劇
1ゲーム先取で行われる5番シングルスのビクトリーマッチは松下と松平の再戦となった。松下が安定した裏面打法で3-0でリードすると松平がたまらずタイムアウトを取る。それでも流れは変わらず5-0と松下が大量リードをしチェンジエンド。松平が2連取し2-5となったところで今度は松下がタイムアウトを取る。
松平が粘りを見せて7-7に追いつくと、最後は12-10のデュースで大接戦を制した。
金沢ポートはTリーグ参入1戦目で嬉しい初勝利を掴んだ。
西東輝監督コメント
あの松平健太が、全力で声を出して、ベンチに向かって何度もガッツポーズをする。その諦めない姿勢が頼もしく、勝利を呼び込んでくれたと思います。
写真:松平健太(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
西東監督「チームワークの勝利」
西東監督は“あと、ひとつだけ”と付け加えた。
「逆転勝ちを呼び寄せたのは、チーム全員の力です。1・2番で敗れた山本勝也が、3番以降ずっと僕の隣で一緒にアドバイスを考えてくれました」
試合後の囲みインタビューで、奇しくも松平も同じニュアンスのコメントをした。
「僕ら新チームは、スタッフも選手も一緒になって、チームを作ってきました。チームワークはとても良いです」
写真:西東輝(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部
熱狂の新チームダービー
静岡ジェードのホームマッチ開幕2連戦は、1日目が966人、2日目が503人と多くの観客が駆けつけて熱狂を作り出し、“この地に卓球・静岡ジェードあり”を印象づけた。
特にお互い新チーム同士の対決となった激戦の今試合は、この一戦にたどり着くまでの激動の日々を労い、ここからのシーズンにエールを交わし合うような、不思議な温かさに包まれた一戦だった。
写真:金沢ポートベンチワーク/撮影:ラリーズ編集部
静岡ジェード 2-3 ◯金沢ポート
◯龍崎東寅/森薗政崇 2-0 山本勝也/三浦裕大
11-9/11-8
◯森薗 政崇 3-0 山本 勝也
11-1/11-5/11-9
松下 大星 2-3 ◯松平 健太
8-11/6-11/11-6/11-10/8-10
小西 海偉 1-3 ◯五十嵐 史弥
6-11/11-6/9-11/5-11
松下 大星 0-1 ◯松平 健太
10-12
ノジマTリーグ2023‐2024シーズン男子順位(8月6日現在)
1位:琉球アスティーダ(勝ち点6/2勝0敗)
2位:木下マイスター東京(勝ち点5/1勝1敗)
3位:金沢ポート(勝ち点3/1勝0敗)
4位:岡山リベッツ(勝ち点3/1勝0敗)
5位:静岡ジェード(勝ち点1/0勝2敗)
6位:T.T彩たま(勝ち点0/0勝1敗)