文:石丸眼鏡
Tリーグ2ndシーズンは接戦増加?
8月に2年目のシーズンが開幕した卓球Tリーグ。
今シーズンはここまで男子11試合、女子12試合が開催され、来年2月までのリーグ戦を行うスケジュールとなっている。今季の試合をみていると、昨季より接戦が増えているような印象を受ける。
2シーズン目のTリーグは、選手の移籍・新加入やルールの変更など変化をみせており、今回は、実際にTリーグで接戦が増えたかを今季と昨季とを比較して調査した。
集計対象は昨季のTリーグ 全86試合(プレーオフを含む)と今季ここまでに開催された23試合とした。
これらの試合について、ビクトリーマッチ(1ゲーム限りの延長戦。以下、VM)までもつれる展開となった試合数と、4-0のストレートで決着した試合数を比較した。
写真:男子開幕戦でVMを制した水谷隼(木下マイスター東京)/撮影:ラリーズ編集部
VM突入率とストレート決着率を調べてみた
2018-2019シーズン(86試合)
VM突入率:30.2%(26試合)
ストレート決着率:17.4%(15試合)
2019-2020シーズン(23試合)
VM突入率:52.2%(12試合)
ストレート決着率:8.7%(2試合)
結果は一目瞭然、昨季はVMで決着した試合が全86試合中26試合の30.2%であったのに対し、今季は23試合中12試合がVMに突入し、VM突入率は52.2%となっている。
さらに、4-0のストレートで試合が決着する割合も昨季の17.4%から今季は8.7%と低下している。
印象通り、今季のTリーグは昨季より接戦が多いという傾向がみられた。この傾向がシーズン終了まで継続するかどうかはさておき、今季接戦が増えている理由を考えてみよう。
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接戦増のTリーグ、考えられる3つの理由!
接戦が増えている2年目のTリーグ、その理由を探る。考えられる理由としては、以下の3点を挙げることができるだろう。
理由1.高ランク選手の出場数の減少
Tリーグでは、世界ランキングやワールドツアー等の結果をもとに各選手にランクづけがなされる。最も高いのはSランク、以下AAA、AA、Aと続く。
各チームに最低1名はSランク選手の所属が義務づけられているが、今季は東京五輪の前年ということもあり、Tリーグ への参戦を控えたり、出場試合数を減らしたりしているトップ選手が存在するのだ。
例えば、昨季に引き続き日本生命レッドエルフに所属する平野美宇は今季ここまでTリーグへの出場がない。TOP名古屋の徐孝元(ソヒョウォン)も同じく今季まだ試合出場がない。この2人はいずれもSランクプレーヤーである。
写真:1stシーズン活躍した平野美宇(日本生命レッドエルフ)/撮影:ラリーズ編集部
Sランクには、直近2年以内での世界ランキング10位以内経験や、世界選手権ベスト8以上などの厳しい基準が存在する。
これを満たす選手の出場試合数が減ると、実力の飛び抜けた選手が減り、団体戦の拮抗につながるというわけだ。
だが、Sランク選手には最低出場試合数の規定も存在するため、今後のTリーグでその姿を目にする機会は十分に用意されている。
写真:日本ペイントマレッツのSランク選手である加藤美優/撮影:ラリーズ編集部
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理由2.「デュースなし」へのルール改定
Tリーグは今季からルールを改定、「原則として、デュースなしとし、11点に到達した時点でそのゲームが終了」という規定が追記された。
「各試合の最終ゲームとビクトリーマッチのみ従来どおりデュースあり」とされているが、それ以外ではデュースなし。10-10の局面から次の1点を取った選手がそのゲームを取るルールとなった。
このルールも、今季の接戦増加につながっている。
実際に、8月30日のT.T彩たま対琉球アスティーダの試合でSランク選手である黄鎮廷(T.T彩たま)を下した村松雄斗(琉球アスティーダ)は「デュースがないことで実力差が詰まる」とコメントしている。
写真:黄鎮廷を下した村松雄斗(琉球アスティーダ)/撮影:ラリーズ編集部
また、日本生命レッドエルフの村上恭和監督もTOP名古屋に敗れた際、「実力差が接近する良いルールだと思う。また、デュースが無いのは格上の方がプレッシャーがかかる」と語っている。
>>【最新版】Tリーグの特別ルール “原則デュースなし”など大幅な変更点も
理由3.新加入選手の活躍、若手の台頭
Tリーグは、手探りの1年目を終え、2年目に突入した。新加入や移籍など、選手の顔ぶれも新しくなった。
昨季もTリーグを盛り上げた丹羽孝希(琉球アスティーダ→木下マイスター東京)、松平健太(木下マイスター東京→T.T彩たま)、吉村真晴(T.T彩たま→琉球アスティーダ)など大物選手が移籍を果たした。
写真:木下からT.T彩たまに移籍した松平健太/撮影:ラリーズ編集部
朱世赫(チュセヒョク・琉球アスティーダ)、ピッチフォード(T.T彩たま)などワールドクラスの新加入選手の活躍も目立つ。TOP名古屋の森田彩音、梅村優香など若手の新加入選手も台頭している。
朱は水谷隼(木下マイスター東京)、森田は早田ひな(日本生命レッドエルフ)を下すなど、昨季チャンピオンチームの主力選手を相手に堂々の戦いぶりを見せている。
各チームの戦力アップが、リーグの均衡化に一役買っているといえるだろう。
写真:早田ひなを下すなど活躍を見せる森田彩音(TOP名古屋)/撮影:ラリーズ編集部
接戦続きのTリーグ、長いシーズンはまだまだこれから
写真:森薗政崇(岡山リベッツ)/撮影:ラリーズ編集部
前述の通り、今季のTリーグはまだ23試合と序盤戦だ。10月以降も引き続き熱戦が期待される。
どちらか勝つかわからない実力伯仲のTリーグ、是非一度現地でその盛り上がりを体験してみることをおすすめしたい。