【Tリーグ畑山進・後編】Tリーグ開幕のキーワード「新規性」と「変革感」 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

大会報道 【Tリーグ畑山進・後編】Tリーグ開幕のキーワード「新規性」と「変革感」

2018.06.04

取材・文:佐藤俊(スポーツライター)、写真:ラリーズ編集部

Tリーグの魅力とは

10月に開幕予定の卓球プロリーグ「Tリーグ」。その舵取りを担うのがTマーケティングの社長を務める畑山進氏だ。前編では畑山氏の来歴を紐解いた。後編ではTリーグの現状について切り込む。Tリーグ立ち上げにあたって、ファンにとって一番大きいのは世界トップクラスの試合が毎月、見られることだろう。ただ、現状は全国で男子4チーム、女子4チームが名乗りをあげており、北海道、東北、四国、九州など空白地帯が多い。Tリーグ立ち上げにあたって「やるからには世界最高を目指す」と語る畑山氏。いったいどのように世界最高を目指すのか。Tリーグ立ち上げと“その先”について話を聞いた。

インタビュー前編「なぜ金融マンは卓球界に身を投じたのか」はコチラ
Tマーケティング・畑山社長の経歴はコチラ

――Tリーグスタート時、男女4チームずつ、半年で全21試合です。チーム数も試合数もさすがに少ないのではないでしょうか。

畑山:確かにチームが少ないですし、試合も少ないと思います。地域的にも偏りがありますからね。これは私が就任前に決まっていたことなので致し方ない部分でもありますが、今後チーム数をもう少し増やす可能性があります。ただ、プレミアリーグはトップ選手のもので強化が軸になり、サッカーのように大幅には増えません。将来設立を構想しているその下のカテゴリーの選手は地元に密着して普及強化の活動していく。そういうすみ分けをして、下のカテゴリーでは地元の選手を応援してもらうファンを増やしていきたいと思っています。

――チームの魅力という点では選手のラインナップが重要になります。日本のトップ選手はもちろん、規定にあるように世界ランク10位内の選手の参戦が条件とされていますが、選手へのアプローチは、どのようにされていますか。

畑山:チームの日本人選手、海外の選手が決まるのはスウェーデンの世界選手権終了後になる予定です。海外の選手については各チームにはスカウティングの機能がないケースもあるので、初年度はリーグが窓口になることもあります。おそらく中国をはじめその国の卓球協会の協力も必要だと思いますので、さまざまなルートを活用して、Tリーグに参戦してもらうことになるでしょう。選手との最終的な契約は各チームが行うわけですが、今後はチームがTリーグの規定にそって選手を獲得できるようになるものと思います。

――日本人選手は、どう振り分けるのでしょうか。

畑山:先日、吉村(真晴)選手が埼玉と契約しましたがチームが個別に対応することになります。選手の立場からすると中国の選手と対戦したいなど要望がいろいろあるかと思いますが、選手が各地域にバランスよく配されるのが理想です。男女ともに有力選手が違うチームに所属するとチームも対戦も注目されると思います。2020年に向けてレベルの高い対戦を実現し、日本の競技力を上げていくようにしていきたいですね。それがTリーグの目的のひとつでもありますので。

株式会社Tマーケティング代表取締役の畑山氏は野村證券出身の元金融マンだ

――チームに名前があってもリーグ戦に参加せず、ファイナルだけ参戦する選手が生まれてしまう可能性もゼロではありません。そういう場合、どう対処するのでしょうか。

畑山:そういうスポット参戦の選手に対してはファンが感情移入できなくなるかもしれません。そこはレギュレーションで厳しく詰めていく予定です。簡単にいうと契約選手はリーグ戦から出てもらうということですね。そもそも質の高い選手の試合を実現するのがTリーグの目的なので、それができないとリーグ設立の根本が揺らいでしまいます。逆に選手と契約しても不出場が続かないよう、試合での起用も求めていきます。

Tリーグが理念とする「地域密着」。その実現はそう簡単ではない。トップからジュニアまで地域での地道な活動が必要になる。たとえばJリーグであれば、ホームに練習場があり、ファンはそこに行けば選手と触れ合える仕組みになっている。逆にチーム側も地元で積極的に交流を図るなど、地道な活動を続けて、地域での認知を獲得していく。Tリーグは全21試合中、ホームでの試合はその半分でトップ選手は普段はその場にいないことも多いだろう。日常的に触れ合える場がなく、活動が見えにくい。Tリーグが掲げる「地域密着」はどのようにして達成していくのだろうか。

畑山:各チームに下部組織の充実とかいろいろお願いをしていますけど、初年度はどうしても勝ち負けの部分に集中してしまいます。それでもチームが各地域をどう巻き込んでいくのか、インセンティブをもってやってもらいますが、時間は必要でしょう。トップチームであっても地元出身の選手を地元の方々が応援してくれるのが理想なんです。そのためには下部組織が機能することが重要ですし、そこから早く日本を代表する選手を輩出していきたいと思っています。

――Tリーグ成功のためには試合だけではなく、演出も重要ですね。

畑山:そうですね。演出については『新規性』と『変革感』を出していかないといけないと思っています。ビジュアル面、選手やチームの見た目はかなり重視していきます。ただ、会場演出についてプランはあるんですが、それぞれの会場ごとにレギュレーションが違うので何ができて何ができないのか見極めていかないといけないですね。これまで卓球に縁がなかった人が地元のチームを応援して、楽しいと思って帰ってもらう。それが基本のコンセプトとしてあるので、仕掛け、演出はこだわってやっていきます。

――試合日の設定は、土日が中心になるでしょうか。

畑山:メインはそうですが、平日の夜も考えています。また、Tリーグの知名度がまだまだですのでホームだけではなく、地方に顔見せで行くケースも考えています。とにかく試合数が少ないので、どこまで認知度を高めていけるか。試合を見にいけないファンがスマホとかで、どれだけ多くの人に観てもらえるかですね。

――チームは団体戦ですが、その場合、長時間になるケースが多い。試合時間の短縮は多くの人に見てもらうために必要な部分ですが。

畑山:試合方式などレギュレーションについては後日発表になりますが、Tリーグ独自のルールを考えています。試合時間は2時間以内、長くてもも2時間半でおさめたい。これは地上波で放映する場合、非常に重要です。放映時間の枠が少ない場合はダイジェストを作り、最後はライブにするなど工夫することになるでしょう。

――Tリーグが超級リーグ的な存在に、果たしてなれるのでしょうか

畑山:2020年に向けて伊藤選手、平野選手、早田選手、張本選手など若い選手が出てきて卓球は注目を浴びています。コンテンツとしても卓球は他の競技よりも注目度が高く、東京五輪でメダルに届く可能性があります。そういう利点をうまく活かしてTリーグを成功させていきたい。そのために今、Tリーグが立ち上がるのは絶好のタイミングだと思っています。

畑山社長の言葉からは、Tリーグ成功への揺るぎない自信が感じられた。

卓球は相手よりもポイントを多く獲るスポーツ。あらゆるチャンレジの原理は、勝つことにある。畑山社長が着々と準備を進め、クオリティの高い人材を野球、サッカーを始めあらゆるスポーツ分野から確保したのも、この大きなチャンレジに勝つためだ。今秋、Tリーグが、どんな形となって我々の目前に表れるのか。

その瞬間が愉しみである。

※内容についてはインタビュー実施日(4月26日)時点のものを含みます