文:ラリーズ編集部
Tリーグの見逃せない名勝負をラリーズ編集部独自の視点で解説する【T.LEAGUE 名場面解説】。
今回は9月7日のノジマTリーグ・T.T彩たまVS木下マイスター東京戦。松平健太(T.T彩たま)と丹羽孝希(木下マイスター東京)の試合にスポットライトを当てる。
松平健太といえば多くの卓球ファンは、2009年や2013年世界選手権シングルスでの、北京オリンピック金の馬琳(マリン・中国)との対戦を思い浮かべるだろう。馬琳の唸るようなドライブを何本も多彩なブロックでいなし、最後にはカウンターで仕留めるプレーは実に鮮やかだ。
しかし丹羽孝希との試合では、これまでのブロック主体のプレーとは打って変わって、自ら強打を仕掛けて点を奪いに行くプレーが目立った。
そこで今回は、ゲームカウント1-2と追い込まれた場面から逆転した裏側に見える大胆な2つの戦術変更を解き明かす。
ノジマTリーグ T.T彩たま 対 木下マイスター東京:松平健太VS丹羽孝希
詳細スコア
○松平健太 3-2 丹羽孝希
11-8/5-11/10-11/11-3/12-10
松平健太の魅せるプレーをダイジェストで確認!
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1. 4ゲーム目から突然出したバック側へのサーブ
写真:サーブの配球/図:ラリーズ編集部
3ゲーム目までは互いに相手のフォア前中心に順横回転のサーブを出していた。松平のサーブを丹羽はうまくレシーブできなかったが、徐々にバックで回り込んでチキータをし、4球目で松平のフォア側を抜く場面が増えた。
分が悪くなった松平は4ゲーム目から大きく作戦を変える。4ゲーム目最初から丹羽のバック側へロングサーブを出した。チキータ封じのための定石といえる戦術だろう。
しかしその後もショートサーブもバック前に出すようになり、フォア前のサーブを予想していた丹羽の裏をかく。反応が遅れた丹羽のチキータは鋭さを失った。
それまで1本も出さなかったバック側へのサーブが効くと、フォア前への回り込みもしにくくなった丹羽は、再びフォアでフォア前のサーブをレシーブしなければならなくなり、松平のサーブに対して質の高い返球をしづらくなったと言える。
追い詰められた場面から、どんなレシーブが来るかわからないコースへサーブを出す戦術はまさに大胆だ。
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2. 早く決めきるためのフォア攻め
写真:ラリー戦での松平健太(T.T彩たま)のコース取り/図:ラリーズ編集部
3ゲーム目までのプレーでは丹羽の打点の早いカウンターを警戒して、松平は丹羽のバック側を攻めることが多かった。しかし、丹羽は松平の強打をしのぎつつ、隙を見てカウンターに転じることが多くなり、2,3ゲーム目を奪った。
そこで松平は、サーブのコース配分を変えたことで甘くなった丹羽のレシーブをフォア側に強打する戦術を取った。前陣で高速ラリーをする丹羽にとって、フォア側を狙われるとバック以上に大きくスイングをする必要があり、ラリー戦でどんどん打点が遅れてしまうためだ。
カウンターが持ち味である丹羽のフォア側をあえて狙うことで意表を突いた松平は、丹羽を大きく突き放し4ゲーム目を奪った。
続く5ゲーム目も長くなったストップを逆モーションを入れながら、丹羽のフォア側にノータッチで抜くと、フォア前に回り込んだ丹羽のバックハンドを狙う戦術も再び効きだし、勝利を掴むことができた。
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まとめ
昨シーズンは木下マイスター東京に所属していたもののシングルスの出場機会が少なく、勝ち星にも恵まれなかった松平健太。
今シーズンは意を決して新天地に移籍を決めた。新しい環境で丹羽孝希を破ったことで自信をつけた松平は今後も格上選手を破り続けるのだろうか。これからの活躍から目が離せない。