文:ラリーズ編集部
卓球のサーブは「1球目攻撃」とも言われ、卓球の中で唯一、相手に影響を受けず思い通りにプレーできる。ボールを隠さない、などのルールさえ守っていれば、出すコースや回転、フォームなどを好きなように選択できる。そのため、選手によって思い思いの個性豊かなフォームでサーブが繰り出される。
今回は卓球界でもユニークなサーブフォームを紹介する。
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伊藤美誠の「巻き込みサーブ」
初めに紹介するのは東京五輪卓球日本代表候補選手の伊藤美誠(スターツ)だ。
写真:伊藤美誠のサーブフォーム/撮影:ラリーズ編集部
肘を高く上げるフォームから繰り出す巻き込みサーブ(手首を内側に巻き込むようにして逆横回転をかけるサーブ)を主体とし、腕を大きく後ろに引くフォームや、頭の上から振り下ろすフォームなど、そのサーブモーションは多岐に渡る。
写真:頭上から振り下ろすパターンも/提供:ittfworld
他にもトスを高く投げ上げる場合やシンプルなモーションなども見せる。伊藤の多彩なサーブは中国選手すらも手を焼く威力で、世界ランキング2位に入った原動力と言ってもいいだろう。
写真:腕を大きく後ろに引いて繰り出すフォームもある/提供:ittfworld
オフチャロフの「バックサーブ」
2つ目はドイツのドミトリ・オフチャロフのバックサーブだ。
写真:ドミトリ・オフチャロフのバックサーブ/提供:ittfworld
186cmの長身を折り曲げ、台と同じくらいまで目線を下げてしゃがんでから繰り出すバックサーブは、卓球ファンなら誰しもが一度は真似したくなるフォームだ。
写真:身体に巻き付けた右腕から強力なサーブを放つ/提供:ittfworld
身体に巻き付けるようにした右腕をしならせて放つバックサーブからの威力あるバックハンドで、2018年1月には世界ランクトップに君臨した。現在も31歳とベテランの域に差し掛かりながら、世界ランク11位に位置しており、まだまだその実力は健在だ。
カルデラノの「投げ上げサーブ」
3人目は、ブラジルの至宝ウーゴ・カルデラノ。現在世界ランキング6位につける23歳だ。
写真:ウーゴ・カルデラノの高く投げ上げるサーブ/提供:ittfworld
カルデラノは、2m以上の高さにトスを高く上げる投げ上げサーブを得意とする。ボールを高く投げ上げることで、落下速度を利用し、サーブにより強い回転を与えることができる。
写真:カルデラノはレシーブも特徴的/提供:ittfworld
また、カルデラノはレシーブでもユニークなフォームを見せる。オフチャロフのサーブ時のように182cmの長身を折り畳み、台と合わせるまでに目線を下げる。さらにカルデラノは、バックハンドを打つ際に、テニスのように両手打ちを披露し、世界を驚かせたこともある。
ブラジルをエースとして引っ張り、世界のトップランカーとしても活躍しているカルデラノの規格外のプレースタイルは一見の価値ありだ。
丁寧の「しゃがみ込みサーブ」
続いては、リオ五輪女子シングルス金メダリストの丁寧(ディンニン・中国)が、勝負所で繰り出すしゃがみ込みサーブを紹介する。
写真:勝負所で猛威を振るう丁寧のしゃがみ込みサーブ/提供:ittfworld
女王・丁寧の代名詞とも言えるしゃがみ込みサーブ。しゃがみこみながら回転をかけるこのサーブは、ボールの落下速度を利用して打つことができるため、通常のサーブより強い回転がかけられる。長短もわかりづらく、特にサウスポーから繰り出される丁寧のサーブは、強力な武器となっており、ここぞという場面で得点に結びついている。
写真:丁寧のしゃがみ込みサーブ/提供:ittfworld
余談だが、とんねるずの石橋貴明が「丁寧のサーブ!」としゃがみ込みサーブを年始の特番で披露したこともあり、日本のバラエティ界でも猛威を振るっていた。
松平健太の「しゃがみ込みサーブ」
しゃがみ込みサーブと言えば、“日本卓球界の貴公子”こと松平健太(T.T彩たま)も使用していた。
写真:松平健太/提供:ittfworld
2013年世界卓球パリ大会では、北京五輪金メダリストの馬琳(マリン・中国)が松平のサーブに苦戦し、結果的には松平が勝利を収めたことを覚えている卓球ファンも多いのではないだろうか。
写真:松平健太/提供:ittfworld
独特のフォームで結果を残すことで、それぞれのサーブはその選手の代名詞にまでなっている。サーブフォームがユニークな選手は、プレースタイルも特徴的であることが多い。「1球目攻撃」であるサーブには、その選手の卓球に対する考え方が反映されるのかもしれない。