文:ラリーズ編集部
<2020年度日本卓球リーグプレーオフ JTTLファイナル4 2020年12月12日~13日>
日本卓球リーグの年間総合優勝チームを決めるファイナル4が行われ、昨年と同じ組み合わせとなった女子決勝戦は、十六銀行が中国電力を下し、2連覇を達成した。
「これがこのメンバーで最後の団体戦」。
全試合フルゲーム、試合時間2時間半超えの大熱戦を制した十六銀行には、負けられない理由があった。
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エース安藤が意地の勝利
写真:バックサービスでフォルトをとられ、巻き込みサービスで戦った山本怜(十六銀行)/撮影:ラリーズ編集部
昨年と同じ顔合わせとなった女子決勝戦。前日に河田靖司監督(十六銀行)が「接戦になるのは間違いない」と語っていたように、全試合がゲームカウント3-2まで行く大接戦となった。
1番で山本怜(十六銀行)が、昨年対戦し勝利した土`田美佳(中国電力)に惜しくも敗れたが、2番でエース安藤みなみ(十六銀行)が宋恵佳(中国電力)に勝利した。安藤は昨年のファイナル4で、先にマッチポイントを握りながら宋に逆転負けを喫しており、リベンジとなった。
写真:安藤みなみ(十六銀行)/撮影:ラリーズ編集部
安藤は「去年ひっくり返されてすっごい悔しい思いをしていた。今年は自分も勝って優勝したいという気持ちが強かった」と強い気持ちで試合に臨んでいた。
途中サービスでフォルト(反則)を取られるなど、苦しい場面も多々あった。しかし、安藤はまったく表情を変えなかった。
写真:「サーブを上手く散らせた」と安藤はサーブを勝因にあげた/撮影:ラリーズ編集部
「(苦しさを)表情に出さないのは意識していた。なるべく自分の気持ちを落ち着けて戦った。リードしていても追いつかれてからが勝負と思っていたので、焦ることはなかった」。エースとして、貴重な1点をチームにもたらした。
写真:試合終了後、笑顔を浮かべた安藤みなみ(十六銀行)/撮影:ラリーズ編集部
河田監督が「一番大きかった」と振り返るのは、3番の加藤杏華(十六銀行)が、庄司有貴(中国電力)に勝利した一戦だ。ずっと苦手にしてきたカット型との激戦を制し、連覇に王手をかけた。
写真:笑顔でガッツポーズ 加藤杏華(十六銀行)/撮影:ラリーズ編集部
4番で德永美子(十六銀行)が、準決勝で石川佳純を下し勢いに乗る成本綾海(中国電力)に打ち勝った瞬間、十六銀行が悲願の2連覇を果たした。
写真:後期MVPの成本綾海(中国電力)に打ち勝った德永美子(十六銀行)/撮影:ラリーズ編集部
「連覇は簡単なことではないけれど、みんなで頑張ってきてよかった。このメンバーで戦えるのはこれで最後。みんなのために勝ててよかった」(德永美子)
写真:勝った直後に涙を流す德永美子(十六銀行)/撮影:ラリーズ編集部
優勝の瞬間、皆、目には涙を浮かべていた。
それには理由があった。
加藤知秋・杏華が今年度限りで引退
十六銀行卓球部を長年支えてきた、加藤知秋・杏華姉妹が、今年度いっぱいで選手を引退するのだ。
地元の県岐阜商業高校出身の加藤姉妹は、高校卒業後に十六銀行に入社し、一時期は2部降格も経験した。昨年ファイナル4初優勝、そして今年2年連続の年間王者に輝いた。
写真:左から竹本朋世、德永美子、安藤みなみ、山本怜、加藤杏華、加藤知秋(十六銀行)/撮影:ラリーズ編集部
「最後の団体戦だったので、このチームで優勝できてよかったです」(加藤知秋)
「このメンバーで戦えるのは最後だし、頑張りました。みんなのおかげで有終の美を飾れました」(加藤杏華)
チームが勝てない時期も明るくチームを支えてきた姉妹は、揃って引退を決めた。
写真:優勝を決めた德永を称える加藤姉妹/撮影:ラリーズ編集部
監督「一人ずつ出したかった」
河田監督(十六銀行)は、準決勝に姉の加藤知秋を、そして決勝に妹の加藤杏華を起用した。
「(引退を決めている)2人ともを1回ずつ出したかった。じゃあどこで出すのが本人たちの力が一番発揮できるかを考えたときに、知秋をデンソー戦、決勝はどちらがきても杏華にしようと思っていた」(河田監督)
写真:我慢の勝利をあげた加藤杏華(十六銀行)/撮影:ラリーズ編集部
試合後、妹の加藤杏華は「優勝できて嬉しいの一言です。後期日本リーグの前、怪我や体調不良で練習できていなくて、あんまり試合にも出られてなかった。今回も出られるかわからなかった。名前を(オーダーに)書いていただいたなら、思い切って自分を出し切りたいと思った。勝った瞬間は、ホッとしました」と監督の期待に応え、見事勝利をあげた。
一方、姉の加藤知秋は、決勝では出番がなかった。主将として、最後の団体戦をベンチから声を振り絞って応援した。
「良い試合をしてくれて、みんなに感謝しかない。キャプテンをさせてもらえてよかった」と涙を隠さなかった。
写真:試合終了後、涙を浮かべる加藤知秋(写真中央・十六銀行)/撮影:ラリーズ編集部
まだできるの声も、もちろんあるだろう。
「自分が良いときにやめたかったというのもある。一時期勝てなくて辛いときもあったが、去年一昨年あたりから結果も出てきて、今がベストかなと。でも(ファイナル4で)自分も勝ちたかった(笑)。この悔しさは全日本にぶつけます」。
ラストマッチとなる1月の全日本選手権を見据え、姉・加藤知秋は嬉し涙を拭いて笑った。
2人は引退後、会社に残り、行員として働く。
「ホームマッチはOGがアナウンスなどしてるので、試合も見に行けます。また卓球に携わる機会はあると思います」。
十六銀行黄金期を支えた加藤姉妹は、連覇という華々しい偉業と共に、引退する。
「私たちも卓球ちょっとやってたんですよ」。
いつかそんな風に謙遜してみせる行員が、加藤姉妹だったら。
彼女たちの銀行の制服でのまぶしい活躍も、心から期待している。
中国電力 1-3 十六銀行
写真:ファイナル4連覇を果たした十六銀行メンバー/撮影:ラリーズ編集部
〇土`田美佳 3-2 山本怜
5-11/12-10/4-11/11-8/11-7
宋恵佳 2-3 〇安藤みなみ
11-8/9-11/11-13/11-7/8-11
庄司有貴 2-3 〇加藤杏華
11-5/7-11/11-7/9-11/8-11
成本綾海 2-3 〇德永美子
11-5/8-11/6-11/11-4/7-11
写真:優勝後に歓喜の自撮り 十六銀行メンバー/撮影:ラリーズ編集部
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