【劇場で卓球を】プロ卓球チーム・T.T彩たまの挑戦「卓球観戦の付加価値を高めたい」 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:和光市長 柴﨑光子氏(写真中央)とT.T彩たまのメンバー/撮影:ラリーズ編集部

卓球ニュース 【劇場で卓球を】プロ卓球チーム・T.T彩たまの挑戦「卓球観戦の付加価値を高めたい」

2021.08.18

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1979年生まれ。テレビ/映画業界を離れ2020年からRallys編集長/2023年から金沢ポート取締役兼任。
軽い小咄から深堀りインタビューまで、劇場体験のようなコンテンツを。
戦型:右シェーク裏裏

18日、卓球TリーグのT.T彩たまは、埼玉県和光市を表敬訪問し、2021-2022シーズンのホームマッチ(5試合)を和光市民文化センターサンアゼリアで行うことを発表した。
Tリーグでの試合を劇場で開催するのは、日本初となる。しかもホームマッチ全9試合中5試合を、である。

てっきり固定座席のない小ホールで開催するのかと思いきや、キャパ約1,300席、プロセニアム型のステージと固定座席を持つ、サンアゼリア大ホールで開催するという。
もちろん、その時々のコロナ観戦状況に応じて観客数や会場演出は変わらざるを得ないが、T.T彩たまのその思い切ったチャレンジを取材した。


写真:和光市表敬訪問の様子/撮影:ラリーズ編集部

劇場開催を企画した理由

T.T彩たまの代表取締役・柏原哲郎氏はその狙いについて、こう語った。
「卓球の試合を生で観たことのある人の数はまだ少ないんです。今まで観に来たことがない人たちに来てもらって、演劇を観たとき、コンサートを聞いたときと、生で卓球の試合を観たときがどう違うか、お客さん自身に語ってもらいたいんです」
今回、柏原氏自身も、意識的に卓球観戦経験のない人たちにチケットを買ってもらうべく周囲に働きかけているという。

「新しい卓球の楽しみ方を創造することで、卓球観戦の付加価値を高めたい」


写真:柏原哲郎氏(T.T彩たま代表取締役)/撮影:ラリーズ編集部

観客席からステージ上のプレーを見やすくするために、映像との複合で試合を見せていく方法を検討しているという。


写真:T.T彩たまファンの熱を語るキャプテンの神巧也選手/撮影:ラリーズ編集部

劇場であることのメリット

劇場やホールは、音、光に対して繊細な空間設計がなされている。
特に、和光市のサンアゼリア大ホールの音響に関しては、開館以来、多くの実演家からも高い評価を得る、日本有数の公共ホール施設だという。
一台進行の卓球台で、トップレベルの選手たちの運動力学が織りなす、光と音の広がりにも期待したい。

そこにT.T彩たまの誇る、ファンたちの“爆援”が加わるとさらに臨場感あふれる空間になるだろうが、感染状況を鑑みると、発声応援は今季も難しいかもしれない。


写真:昨シーズンの神巧也(T.T彩たま)/撮影:ラリーズ編集部

また、体育館やアリーナの椅子がつらいと感じるお客さんにとっても、今回、劇場大ホールの固定座席に身を沈めて卓球を楽しめる機会としても、貴重な体験になるだろう。

主催する側にとっても、ゼロから会場設営を行う体育館より、座席はもちろん、照明・音響設備の整う劇場で開催するほうが設営面でのコストは低くなる可能性もあるのだ。


写真:和光市民文化センター サンアゼリアホールの外観/撮影:ラリーズ編集部

しかし、こうした会場を押さえるには、少なくとも一年以上前から企画、交渉を始める必要がある。今回の和光市での挑戦を皮切りに、既に来季以降の会場構想も進めていると柏原氏は力を込める。
「卓球の可能性はこれから。その付加価値を3倍、5倍、10倍くらいにしたい」

公共施設で開催する意義

取材を通して、地方の公共文化施設での開催という点にも意義を感じた。
一つは、多くの卓球プレーヤーにとって、本来、公共施設はとても親和性が高いからだ。多くの卓球プレーヤーにとって、スポーツセンターや公民館は、一般的な練習場所だ。スタジアムの場所は知らなくても、卓球台のあるスポーツセンターの場所は知っているという卓球愛好家は多い。


写真:和光市役所・サンゼリアホールへの道、「和光市駅」南口から徒歩13分/撮影:ラリーズ編集部

もう一つは、公共文化施設の“貸し館”事業もまた、ウィズコロナの地域社会の中で変わっていくからだ。
そのとき、住民の“誇り”や“無形の財産”となりうるものを、地域の公共文化施設は応援し、育てていく役割を担ってほしい。そして、各施設が個性を発揮していくなかに、地元プロ卓球チームのホームゲーム開催、というプログラムがあることが、地元住民にとって一つの誇りになってほしい。

競技に必要な面積そのものが小さな卓球には、既存の公共文化施設の新しい活用方法がきっとある。

幕を降ろすな

もちろん、コロナ禍でのスポーツ興行は、引き続き困難と共にある。
でも、劇場の言葉を借りるならば、“Show must go on”(一度開いた幕を降ろすな)の精神にもどこか通じる気概で、Tリーグ、チーム関係者、選手たちの懸命な挑戦は続いている。

今季のTリーグ開幕は、男子9月9日、女子10日に迫る。
T.T彩たまの和光市民文化センターサンアゼリアでの試合は、9月22日を予定している。


写真:和光市役所内に掲示された告知/撮影:ラリーズ編集部

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写真:上田仁(T.T彩たま)/撮影:田口沙織

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