黄金世代、集大成の1年 独断と偏見で選ぶ2025年大学卓球の良すぎた試合5選 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:濵田一輝(早稲田大学)/撮影:ラリーズ編集部

卓球プレーヤー向け 黄金世代、集大成の1年 独断と偏見で選ぶ2025年大学卓球の良すぎた試合5選

2025.12.31

この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

かつてこれほどまでに、世代全体が切磋琢磨し、レベルを引き上げ合った4年間があっただろうか。

卓球界全体で見れば、張本智和(トヨタ自動車)のいる世代が大学4年生となった2025年。


写真:張本智和(トヨタ自動車)/提供:WTT

この「黄金世代」が学生卓球界で見せたドラマの中から、たった5試合に絞り込むことなど到底不可能に近い作業だった。

しかしあえて今回は、Rallys編集長の山下が、男子大学生の試合から、4年生たちの生き様が色濃く出た2025年の5試合を独断と偏見で厳選した。

2025年3月 東京選手権2025決勝 伊藤礼博(日本大学)vs 岡野俊介(朝日大学)


写真:伊藤礼博(日本大)/撮影:ラリーズ編集部

2025年の東京選手権の一般男子シングルス決勝は、伊藤礼博(日本大学・安田学園高出身)と岡野俊介(朝日大学・愛工大名電高出身)の同級生(当時3年生)対決となった。

伊藤は卒業後、実業団などには進まず、新たな夢である税理士を目指してラケット置く決意をしている。

一方の岡野は、2年生で全日学優勝、3年生で全日本ベスト8入りと着実に日本のトップ選手へと駆け上がっている最中だ。


写真:岡野俊介(朝日大)/撮影:ラリーズ編集部

お互い公式戦での対戦を熱望していたとのことで、全日本ジュニア以来の対戦となったこの試合は、4-3で伊藤に軍配が上がった。


写真:表彰式後の伊藤と岡野/撮影:ラリーズ編集部

「俊介と決勝で戦えたことが本当に嬉しかった」と充実した表情を見せた伊藤。大学生活、そして本気で戦う卓球人生最後の1年に向け、大きく弾みをつける優勝となった。


写真:表彰式後の伊藤礼博と岡野俊介/撮影:ラリーズ編集部

試合結果

◯伊藤礼博(日本大) 4-3 岡野俊介(朝日大)
15-13/9-11/11-9/15-13/8-11/11-13/11-3

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2025年7月 インカレ2025 準々決勝 筑波大学 vs 愛知工業大学


写真:三浦裕大(筑波大)/撮影:ラリーズ編集部

パリ五輪代表の篠塚大登(愛工大名電高出身)こそ出場していないものの、2021年のインハイ3冠王・谷垣佑真(愛工大名電高出身)、2022年のインハイ3冠王・鈴木颯(愛工大名電高出身)、2023年のインハイ2冠王・萩原啓至(愛工大名電高出身)、2023年インハイシングルス優勝・三木隼(野田学園高出身)、2024年インハイ2冠王・坂井雄飛(愛工大名電高出身)と学生卓球界のスター軍団を擁する愛知工業大学。

そこに挑むのは、関東学生を代表する4年生トリオ・三浦裕大(遊学館高出身)、田原翔太(明豊高出身)、鈴木笙(静岡学園高出身)を擁する筑波大学。


写真:鈴木笙(筑波大)/撮影:ラリーズ編集部

高校時代、常に目の前に立ちはだかった愛工大名電という高い壁。三浦、田原、鈴木の3人は、それぞれ異なる高校のエースとしてその壁に挑み、跳ね返されてきた。

その3人が筑波大学で腕を磨き、大学生活最後の夏、ついにその牙城を崩した。

1番で田原がフォアフリックやフォアドライブで鈴木を撃破すると、2番では関東学生王者の鈴木が愛知工業大エースの谷垣に敗れるも、ダブルスで田原/三浦ペアがフルゲームで勝利。

4番では三浦が三木を下して(5番も藤元が2ゲームを奪っていた)、下剋上を果たした。


写真:田原翔太/三浦裕大(筑波大)/撮影:ラリーズ編集部

試合結果

愛知工業大学 1-3 筑波大学
鈴木颯 1-3 田原翔太◯
◯谷垣佑真 3-0 鈴木笙
谷垣佑真/坂井雄飛 2-3 田原翔太/三浦裕大◯
三木隼 0-3 三浦裕大◯
坂井雄飛 – 藤元駿

試合動画

秋季関東学生リーグ 星優真(専修大学)vs徳田幹太(早稲田大学)


写真:星優真(専修大)/撮影:ラリーズ編集部

最後の秋リーグに臨む専修大学4年生主将の星優真(東山高出身)。高校時代には、全日本ジュニアでランク入りも果たしている実力者だ。

チームが崖っぷちに立たされた時、主将の星が体現したのは4年生としての“意地”だった。

早稲田大学のエース・濵田一輝(愛工大名電高出身)、伏兵・浦田景太朗(三田学園高出身)、ダブルスと3本を奪われ、5番で星は徳田幹太(早稲田大学・野田学園高出身)と対戦。

大学入学後一度も勝利していなかったという徳田に対して、フルゲームで勝利を収めた。


写真:星優真(専修大)/撮影:ラリーズ編集部

勝利後、ベンチに戻る際に星は「繋いだぞ!」とメンバーに檄を飛ばす。主将の思いに押されるように6,7番もフルゲームで制し、見事専修大学が大逆転勝利を収めた。

試合後、2番シングルスで敗れた溜大河(専修大学・静岡学園高出身)は逆転勝利に安堵し大号泣。星が主将として作り上げてきた専修大学のチーム力を感じる白星となった。


写真:2番シングルスで敗れた溜大河(専修大)はチームの逆転勝利に安堵の涙 同期の木塚陽斗、主将の星優真が励ましの声をかけた/撮影:ラリーズ編集部

試合結果

専修大学 4-3 早稲田大学
二井原有真 0-3 濵田一輝〇
溜大河 1-3 浦田景太朗〇
〇木塚陽斗 3-0 田村真吾
星優真/木塚陽斗 0-3 濵田一輝/徳田幹太〇
〇星優真 3-2 徳田幹太
〇田中京太郎 3-2 濵田尚人
〇中島瞳輝 3-2 磯村拓夢

試合動画

2025年10月 全日学2025 男子シングルス・ダブルス優勝 濵田一輝(早稲田大学)


写真:濵田一輝(早稲田大)/撮影:ラリーズ編集部

この世代において、常に大学卓球界の顔であり続けたのが濵田一輝(早稲田大学・愛工大名電高出身)だ。

濵田が早稲田という名門を背負い、圧倒的なエースとして君臨し続けたことは、同世代にとって一つの「基準」となった。

その高い壁を超えようと誰もが必死に背中を追い、結果として関東学生全体のレベルは底上げされたと言っても過言ではない。


写真:濵田一輝(早稲田大)/撮影:ラリーズ編集部

しかし、そんな「大学卓球の申し子」にも、あと一歩が届かない場所があった。

ダブルスでは4年間で3度の全日学優勝を成し遂げながらも、シングルスのタイトルだけは、どうしても手が届かなかったのだ。


写真:濵田一輝(早稲田大)/撮影:ラリーズ編集部

迎えた、集大成となる最後の全日学。

4度目の挑戦で、濵田はついにシングルスの頂へと駆け上がった。その実力に見合う“大学生チャンピオン”の称号を、ついに濵田が手にしたのだ。


写真:濵田一輝(早稲田大)/撮影:ラリーズ編集部

「心が動かされる場面が何度も何度もあります。そういった経験ができるのが、大学卓球かなと思います」。

優勝直後、彼が口にしたこの言葉に、4年間のすべてが詰まっていた。

“黄金世代”を駆け抜けた男が、最後に教えてくれたのは、勝負の厳しさ、そして、それを上回る卓球の素晴らしさだった。


写真:濵田一輝(早稲田大)/撮影:ラリーズ編集部

試合結果

準々決勝
濵田一輝(早稲田大)4-2 鈴木笙(筑波大)
11-13 / 12-10 / 7-11 /11-8 / 11-7 / 11-8

準決勝
濵田一輝(早稲田大)4-0 萩原啓至(愛知工業大)
11-6/11-9/11-8/11-3

決勝
濵田一輝(早稲田大)4-0 前出陸杜(中央大)
11-8/11-4/11-1/11-7

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2025年11月 全日学選抜2025 男子シングルス決勝 谷垣佑真(愛知工業大学)vs 伊藤礼博(日本大学)


写真:谷垣佑真(愛知工業大)/撮影:ラリーズ編集部

高校時代のインターハイ3冠。その輝かしい肩書きを背負い、名門・愛知工業大学の門を叩いてから4年。

谷垣佑真は常に、学生卓球界の「超えなければならない壁」として君臨し続けてきた。

しかし、団体戦やダブルスでどれほど勝利を積み重ねても、全日学のシングルスタイトルだけは、彼の手をすり抜けていった。

それでも、谷垣は全日学選抜では過去3年間で2度の優勝を誇る。相性の良い、そして彼が最も自分らしさを証明できる舞台だ。


写真:谷垣佑真(愛知工業大)/撮影:ラリーズ編集部

最後の4年目。決勝の相手は、直前の全日学で苦杯をなめた伊藤礼博(日本大)。

「このままでは終われない」という世代のエースとしての矜持が、谷垣を突き動かした。激しいラリーの応酬、一進一退のフルゲーム。最後の一球を打ち抜いた瞬間、谷垣は3度目の、そして学生最後となる栄冠を掴み取った。

今や谷垣は、一般の全日本選手権で3位に入賞し、Tリーグでは金沢ポートの主軸として12勝を挙げ、リーグトップの白星を積み上げている。

プロの第一線で戦う強者が、最後の最後、学生の舞台で見せた泥臭いリベンジ。それは、愛知工業大の名を背負って戦った4年間の、あまりにも美しいカーテンコールだった。


写真:谷垣佑真(愛知工業大)/撮影:ラリーズ編集部

試合結果

谷垣佑真(愛知工業大) 4-3 伊藤礼博(日本大)
11-13/8-11/11-8/11-8/11-13/11-8/11-8

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あとがき

学生卓球を取材していて、ふと思うことがある。

「終わりがあるからこそ、彼らのプレーはこれほどまでに眩しいんだな」と。

プロとしてさらに高みを目指す者、全く別の道で新たな勝負を始める者。

歩む先は違えど、2025年に選手たちが放ったあの輝きは、間違いなく卓球ファンの胸に深く刻まれた。

選手のみなさん、熱い1年を本当にありがとうございました。そして、お疲れ様でした。

2026年はどんな景色が待っているのか。またどこかの卓球の現場でお会いしましょう!