上手く使えば効果的"高いボール"の使い方とは?|頭で勝つ!卓球戦術 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:ウーゴ・カルデラノ(ブラジル)/撮影:ラリーズ編集部

卓球技術・コツ 上手く使えば効果的“高いボール”の使い方とは?|頭で勝つ!卓球戦術

2023.10.03

この記事を書いた人
初級者、中級者向けに基本技術の説明から、戦術論や卓球コラムまでを執筆。社会人になってから5回全国に出場し、全日本卓球選手権(マスターズの部・男子30代以上の部)ではベスト64。まさに“頭で勝つ!”を体現中。
戦型:右ペン表裏

卓球ライター若槻軸足がお送りする「頭で勝つ!卓球戦術」。今回は高いボールの使い方というテーマでお話したいと思う。

卓球は動いているボールをお互いに打ち合う競技である。そしてそのボールには色々な性質がある。速度、回転の種類、回転の量、そして左右のコース、前後の長短。それらの性質の中で今回取り上げたいのが、「高さ」というものだ。

卓球台の真ん中にはおよそ16cmの高さのネットが貼られており、これを超えるボールを打たなければ相手コートに届かない。だがかといってネットを大きく超える山なりのボールを送ってしまうと、相手にとっては格好のチャンスボールとなってしまう。


写真:大島祐哉(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部

そのため基本的にはどんな技術も、なるべくネットを超えるギリギリの高さのボールを送るのが望ましいとされている。上級者のレベルになってくると、サービスがほんの数センチ高いだけでも、一発で打ち抜かれてしまう可能性があるわけだ。

そんな中「高さ」を武器にした技術として、「ロビング」というものがあげられる。台のはるか後方から天井に届くかのような高いボールを送り、相手のスマッシュを凌ぎながらミスを誘う技術だ。

このときのボールは高ければ高いほど返球が難しい。打ち込む側は、ある程度身長が必要になるし、打たずにストップをするのにもかなり神経を使う。ロビングを多用して試合を組み立てる選手はかなり少数ではあるが、観る側も面白く非常に魅力的な技術と言える。

「高さを活用した技術」と聞いて思いつくのはこのロビングくらいだろう。しかしそれ以外の場面で使うことも効果があるのではないか、というのが今回のテーマである。

高いボールの使い方

まず大前提として、一様に「高いボールは効果的」というわけではないのを重々承知して頂きたい。低いボールがある中に、時折繰り出される高いボールが効く、というお話である。剛速球のストレートがあるからこそ、チェンジアップが効果をもたらすのである。
卓球で相手が返球をしにくいのは、やはり前述したとおり、ネットをギリギリ超えるくらいの「低い」ボールである。そこに時折高いボールを混ぜるということなのだが、では実際どのような場面で使うのが良いのだろうか。

ドライブを高く打つ

まずはやはりドライブだろう。基本的に弧線の高いループドライブはカウンターをされると思うべきだ。ただしカウンターか安全にブロックか、迷いが生じるちょうど絶妙なラインというのも存在する。これは選手によるので一概には言えないが、ボールの弧線の一番高いところが相手の目線と同じくらい、というのがひとつの目安となると考える。

たとえば0-0のノンプレッシャーの状態なら、ある程度足が使える選手ならば目線ほどの高さのドライブは回り込んでカウンターを打ち返してくる確率が高い。だがこれが8-8などの試合後半、1点のミスが致命的になってくる局面においては、そう単純ではないはずだ。「カウンターできそうなボールだけど、ここは安全に入れておこうか…」とほんの少しでも頭で考えた時点で、迷いがないときとは明らかに動きが違うはずだ。


写真:𠮷田雅己(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部

相手がミスして得点となれば万々歳だ。しかし打ち込まれるという想定でしっかりと台から距離を取って構えよう。いわば「打ってくださいよ」という誘い球であるので、しっかりとブロックあるいはカウンターができる準備を怠ってはならない。

またミスを誘う、あるいは相手のカウンターの質を下げる為には、ボールの深さという点にも注意を払いたい。エンドラインギリギリの深いボール、もしくはネットギリギリの浅いボールがよい。中途半端な深さが一番打ち頃になってしまう。そして当然、ドライブにしっかりと上回転がかかっていることも非常に大事になってくる。打つコースは相手のバック側が安牌であろう。

そしてもう一つ注意しないといけないのが、弧線の高いドライブをするからといって、通常よりも打点を下げてはならないということだ。打点を落とした時点で、持ち上げてくるということを察知してカウンターの準備に入られるからだ。あくまで通常と同じ打球点で打つが、高い弾道のボールにする、ということをぜひ心がけてほしい。

ツッツキやカットを高く打つ

高いボールを使う上ではドライブが最も実用的だと考える。その一方で使える場面は限定的ではあるが、有効となりうるのがツッツキ(あるいはカット)である。競り合いの場面で急に高いツッツキが、それもブチギレかつ台のぎりぎりいっぱいの深さに来たとき、チャンスボールに見えて実はとても難しいボールになる。自身の経験からお分かり頂ける方も多いだろう。


写真:村松雄斗(鹿児島県スポーツ協会)/撮影:ラリーズ編集部

ただし、そもそもツッツキを意図的に高く打つこと自体が難しいし、表ソフトプレイヤーなどミート系で打つ選手にとっては、簡単にスマッシュが打てるチャンスボールになりうるので相手も選ぶ手法である。ドライブを得意としてなければ一度試してみるとよいだろう。

まとめ

今回は高いボールの使い方というテーマでお話をしてみた。やはり基本的には低いボールを送るべきなので、メインの戦術として使うのはおすすめしないし、一発で決定打を打ち込まれてしまうことも大いにあり、諸刃の剣であると言える。

なので、どうしても勝利への糸口が見出せそうにないときや、流れを変えたいとき、相手の調子を少しでも狂わせたいとき、等々使う場面は選ぶべきである。だがうまく活用できれば戦い方の幅がいっそう広がることとなるだろう。参考になれば幸いである。

若槻軸足インタビュー記事

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