カットマンに必要なカット以外の3つの技術|頭で勝つ!卓球戦術 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:御内健太郎(シチズン時計)/撮影:ラリーズ編集部

卓球技術・コツ カットマンに必要なカット以外の3つの技術|頭で勝つ!卓球戦術

2023.03.01

この記事を書いた人
初級者、中級者向けに基本技術の説明から、戦術論や卓球コラムまでを執筆。社会人になってから5回全国に出場し、全日本卓球選手権(マスターズの部・男子30代以上の部)ではベスト64。まさに“頭で勝つ!”を体現中。
戦型:右ペン表裏

卓球ライター若槻軸足がお送りする「頭で勝つ!卓球戦術」今回は「カットマンが覚えるべきカット以外の技術」というテーマでお話をしていく。

先日の全日本選手権では、カットマンとして長くに渡り活躍してきた、シチズン時計所属の御内健太郎選手が競技生活に幕を閉じた。蝶のように舞い蜂のように刺す、そんな我々を魅了する華々しいプレーが見られなくなるのは非常に残念であると同時に、それに憧れてカットマンを目指す選手が一人でも多く増えてくれれば、これ幸いである。

今日はそんなカットマンについてのお話だ。日頃の練習の中ではもちろんカットがその多くを占めていることと思うが、カット以外の技術の練習もおろそかにしてはいけない。

主力の武器であるカットをより活かす為の技術。あるいは、カットができないときの技術、それらも活用して総合的に勝てるようにならないといけない。そのために今回は、カット以外の大切な技術にフォーカスして考えてみよう。

1つ目:ブロック

まずは覚えるべき技術としてはブロックだ。「いやいや、相手に打たれたときにブロックじゃなくてカットをするからカットマンではないのか」と思われる方もいるだろう。もちろんその通りだ。ただし、どんな状況でもカットができるかと言われれば大間違いである。


写真:英田理志(愛媛県競技力向上対策本部)/撮影:ラリーズ編集部

ご存知の通りカットは台から離れた中陣~後陣で相手の攻撃を受けたときに初めてできる技だ。そして試合の中では当然、前陣にいるときに打ち込まれることもあるだろう。そんなときに、ブロックという技術が必要になってくる。3球目や4球目といった早い段階、あるいはストップで前に寄せられた場面であったり、どうしてもしっかりと台との距離を確保できていないときに打ち込まれることはある。

むしろ相手はそれを狙ってくるのだ。そういった場面であっても、しっかりとブロックで1本守ることができるかできないかで大きな差がつくのである。

なので日々のメニューにもブロックをぜひ取り入れてみよう。ただし、攻撃選手と同じようなブロックの練習をしていてもあまり意味がない。カットマンであるからには、常に動きながらプレーをする必要がある。1本ブロックをしたらすぐさま後ろに下がってカットの体勢を整えなければならない。

具体的には、相手のショートサービスから3球目を強打してもらい、ブロックをしてからカットをする練習。あるいはカット打ちからストップで前に寄せてもらって、それを強打してもらう、といった練習でブロック力を高めよう。

2つ目:フィッシュ

続いての技術がフィッシュだ。カットと同じく中陣から後陣で相手の強打を凌ぐ技術ではあるが、下回転ではなく上回転のままで相手コートへ返球するプレーである。バックハンドで行うイメージの方が強いかもしれないが、今回はフォアハンドで行うことを想定している。

先程は台に近過ぎてカットができない、という状況だったが、次は逆に台から遠すぎる、要は相手のドライブが浅かったという場合である。この場合カットをすると打点が落ちてどうしても山なりのボールでの返球になってしまうのだが、それを防ぐために使うのがフィッシュだ。カットは「切る」ドライブは「擦り上げる」という捉え方をするならば、フィッシュは「押し込む」といったイメージだ。


写真:橋本帆乃香(ミキハウス)/撮影:ラリーズ編集部

この技術のいいところは、相手のスイングやラケット角度を狂わせることができるということである。たとえばカットをしているところからドライブを引き返すと、相手は「ブロック」という技術に切り替えて対応することが出来るので、それほど難易度は高くない。しかしカット、カット、と来てのフィッシュであれば、相手は同じドライブでの対応でありながら、ラケットの角度やスイングを調整する必要が出てくるので、ミスを誘うことができるわけだ。 

同じことは切れたカットとナックル性のカットを織り交ぜることでもできるが、それだと難易度が高くなる。なので、切るカットを使いながら、その中にフィッシュという形で切らずに押し込むという返球も取り入れてみて、球種の幅を持たせようということである。

3つ目:カウンター攻撃

3つめは攻撃についてだ。これはもう多くを話さずともおわかりだろう。どんなボールに対してもカットで守っているだけでは相手にプレッシャーをかけられない。相手は「ツッツキでもループドライブでもとりあえず入れておけば良い」という状態なので精神的にかなり楽なはずだ。


写真:村松雄斗(La VIES)/撮影:ラリーズ編集部

そうではなく、甘いボールは逃さずにしっかりと打ち込んでいくことが必要である。ただし、必ずしも攻撃を全部入れないといけないということはない。もちろん入るに越したことはないのだが、「常に攻め込む姿勢がある」ということを伝えることで、相手から「甘いツッツキ」や「緩いつなぎ」という選択肢を奪い取るということが目的である。

それによって、なるべく質の高いボールを送らないといけないというプレッシャーをかけることができ、ミスを誘えるわけである。もちろんサーブを持ったときは積極的に3球目攻撃を狙っていくことも非常に大切である。

まとめ

いかがだっただろうか。今回はカットマンが覚えるべきカット以外の技術というテーマでお伝えした。カットマンのプレーは華があって観ている側も楽しいが、実際にやるとなると非常に多くのことを覚えないといけない。

フォアとバックのカットを覚えないといけない、攻撃もできないといけない、前後や左右に振られてもしっかりと動かないといけない。シンプルにやることがめちゃくちゃ多いのだ。であるが故になかなか芽が出ないことも多いのだが、それを耐えて乗り越えられるかどうかが非常に大切なのだ。

そのこともしっかり頭に入れた上で、今カットマンとして鍛錬に励んでいる選手、あるいは今後目指したい選手は、今回の記事を少し参考にしてみてはいかがだろうか。

若槻軸足インタビュー記事

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