下回転サービスから3球目攻撃の意識と工夫とは?|頭で勝つ!卓球戦術 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:張本智和(IMG)/撮影:ラリーズ編集部

卓球技術・コツ 下回転サービスから3球目攻撃の意識と工夫とは?|頭で勝つ!卓球戦術

2023.03.29

この記事を書いた人
初級者、中級者向けに基本技術の説明から、戦術論や卓球コラムまでを執筆。社会人になってから5回全国に出場し、全日本卓球選手権(マスターズの部・男子30代以上の部)ではベスト64。まさに“頭で勝つ!”を体現中。
戦型:右ペン表裏

卓球ライター若槻軸足がお送りする「頭で勝つ!卓球戦術」今回は「下回転サービスから3球目攻撃をする時の意識と工夫」というテーマでお話をしていく。

高校生の練習相手をするときに、いつも気になることがある。

課題練習で申し出てくるメニューがなぜか決まりきっているのだ。それは、「バックに下回転サービスを出すので、バックにツッツキしてもらって、それを回り込んで3球目攻撃をするのでそこからフリーで」というものだ。

もちろん、この練習メニューそのものを否定しているわけではない。しかしあまりにも内容に工夫が感じられないのだ。中学生なら分かるが、競技歴も重ねている高校生でこの内容なのは、正直もう少し考えた方が良いと思えてならない。

一発で打ち抜くために威力を重視するとか、とにかく安定感を高める等々、なんらかの意図があればよいのだが、それもない。もしくは単純に攻撃の技術の練習をしたいというのならば、多球練習でやるべきである。

せっかくサーブからの展開で行うのならば、もっと思考力を高めて、「これができるようになるための練習なのだ」ということを強く意識しながらやらないと、ただただ漫然と時間が過ぎていってしまう。

ではこの練習の効果をより高めるためにはどうすればよいかを考えていってみよう。

下回転サービスから3球目ドライブの意識と工夫について

8割以上入れられるようになる

まずはやはり台に入らなければお話にならない。目安としては10球中8本、つまり8割は3球目攻撃の成功を目指そう。ただし本当にただ「入れるだけ」のドライブではなくて、ちゃんと試合の中で点を取ることを想定したドライブである必要がある。

その中で強く打つのは難しいと判断したボールに対しては、威力を落として確実に台に入れる、そのようにした上で最低8割以上の成功率は欲しいところだ。

コースの打ち分けができる

確実に台に入れられるようになったら、しっかりとコースの打ち分けもできるようになろう。このとき「フォアとバックに打ち分ける」という考え方ではだめだ。「フォアとミドルとバックサイド」の3点を狙おう。

特にバック側へは「バックサイド」と書いたように、なるべく厳しいコースを狙いたい。回り込んでドライブをただただ相手のバックに打ったのでは、一定以上のレベルにはあまり効かない。

少しでもいいのでコーナーよりもサイドを割るコースを狙うべきだ。そしてそれは練習のときから意識しておかないと試合では絶対にできないので、常に心がけるとよいだろう。

またフォアストレートに打つ場合は、相手にブロックされたときはクロス方向、つまりこちらのガラ空きのフォア側に返されてノータッチ、というリスクも抱えることになる。なのでできればフォアに打つときは、3球目でラリーを終わらせる意識で、より威力を重視したボールを打てるようになりたい。

そして忘れてはならないのがミドルだ。バックサイドやフォアストレートに比べて、ミドルを狙うのはこちらがミスをする確率は少ない。その上相手にとっては一番ラケットが出しにくい場所になるので、このコースを使わない手はない。ミドル狙いをデフォルトとして、状況に応じてバックやフォアも狙えるようにする、というのがおすすめである。


写真:張本智和(IMG)/撮影:ラリーズ編集部

5球目攻撃までを考えて組み立てる

コースを打ち分けることとセットで考えたいのが、5球目までの展開だ。やはり基本的には攻撃したボールが返ってくるのはクロスである可能性が高い。回り込んでのドライブを相手のフォアサイドに打ったのならば、ブロックされたらクロスであるこちらのフォア側に返ってくることが予測される。

それを想定して打った後は素早く戻り、フォアサイドから連続で攻撃を仕掛けられるよう準備しておかなければならない。

ミドルに打った場合もクロスへの返球が多いと考えて問題ないだろう。そしてバックサイドに打った場合は、もちろんクロスであるバックへ返ってくるのだが、返ってくるボールのコースも厳しくなってくるだろう。

そう考えると、回り込んでバックサイドの厳しいコースへ打ったのならば、元の位置に戻ることは考えずそのままの位置で次の5球目に備えるのが得策であろう。

レシーブにランダム性を加える

まず確実に入れる、そしてコースの打ち分け、及び5球目までの展開。ここまでをしっかりと考えて練習をするのがまずは大前提である。これを土台とした上で、ようやくレシーブ側により高度なことを要求することができる。

まずはレシーブを2択にしてもらおう。例えば、バックへツッツキかフォアへのツッツキの2択。あるいはバックへツッツキかフォア前ストップの2択。こうすることで実際の試合と同じ、「どこに来るか分からない」状況に近づける事ができる。

もちろん「全面にレシーブをしてもらう」というのが一番実戦に近いのだが、それだと格段に難易度が上がるばかりか、試合であまりないボールへの対応もすることになり非効率的だ。


写真:曽根翔(T.T彩たま)/撮影:ラリーズ編集部

基本的にはしっかりと下回転のサービスをバック前へ出せたのならば、バックへのツッツキかフォア前ストップ、あるいはフォアへのツッツキの3パターンがほとんどだろう。

さらに工夫を加えてみるとしよう。たとえばツッツキをより鋭い攻撃的なツッツキにしてもらうであったり、逆に打球点を遅らせてゆっくりとしたツッツキも混ぜてもらう、といったことも加えることでより対応力は高まるだろう。

より高度にはなるが、ストップやツッツキをブチッと切ってもらったり、あるいは台から出るか出ないかの絶妙の長さで返してもらって対応する練習までできれば、言うことなしだろう。

まとめ

今回は課題練習でよくあるメニュー、「バックに下回転サービスを出し、バックにツッツいてもらったのをドライブ」をより戦術的に行うことについて考えてみた。

繰り返しにはなるが、このメニュー自体が悪いわけではない。もっともっと試合の中で使うことを想定した上で、練習の意図や目的を考えて工夫すべきである、ということがお伝えしたかった次第である。

もちろんこれは今回取り上げたメニューに限らず全てにおいて言えることなので、選手あるいは指導者の方も大いに参考にして頂ければ幸いである。

若槻軸足インタビュー記事

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