戦型:右ペン表裏
卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」
今回は男女がペアになって戦う、ミックスダブルスについてのセオリーを考えてみたい。
東京五輪からは新種目として選ばれ、2017年に公開された映画「ミックス。」での題材となるなど、近年注目が高まっているミックスダブルス。経験がない方も多いと思うので、今回の記事をぜひ参考にして頂きたい。
(基本的に右利き同士のペアリングを想定とする)
このページの目次
混合ダブルスの基本的な考え方は「ミスをしないこと」
私が主張するダブルスの基本的な考え方は「ミスをしない」ということだ。
テニスやバドミントンと違って、それぞれが交互に打たなければいけない卓球のダブルスは、ラリーを続けるだけでも難しい。そのため、まずはこちらがミスをせずになるべくラリーを続けることが、最も簡単に勝利に結びつく戦術なのである。
この考え方はミックスダブルスにおいても同じだ。基本的にはパートナーを信頼して、返ってくるボールをパートナーが打ちやすくなるように考え、しっかりとつなぐ意識を持つことが重要だ。
それを踏まえた上で、男女の特徴からなるミックスダブルスならではのセオリーについて考えてみよう。
ミックスダブルスのシチュエーション別のセオリー
通常のダブルスだろうとシングルスだろうと、ただ漫然と来るボールを打っているだけでは試合で勝てない。ことミックスダブルスでは、男子が女子のボールを打つ場合、男子が男子のボールを打つ場合、それぞれのセオリーは変わってくる。具体的に見ていこう。
男子が男子のボールを返球する場合
この場合は無理に強く打つ必要はなく、しっかりとつなぐことを意識しよう。
この場面では、こちらの女子が打ったボールを相手の男子が打つはずなので、必然的に強いボールで返ってくることが多い。
写真:水谷隼と伊藤美誠/提供:ittfworld
つまり「強打をしのぐ」という展開になるので、まずはしっかりと相手の動きを見て、確実に返球することを第一に考えてのブロック待ちだ。強い打球で返球できなくても、次を打つのは相手の女子なので、決定打が返ってくることは少ないだろう。
男子が女子のボールを打つ場合
この場合はやや強気に攻めなければならない。
なぜならここで甘いボールでつないでしまうと、次を待ち構えている男子選手に強打で叩き込まれてしまうからだ。それを受けるのはこちらの女子なので、かなり分が悪い。
もちろん打てそうにないボールを無理に強打することはないが、通常よりややリスクを取って威力のあるボールを送らなければ、その後の展開で不利になってしまう。ここは男子の頑張りどころである。
女子が女子のボールを打つ場合
この場合は特別なことをする必要はなく、普段通りで大丈夫だろう。普段通り、女子特有の早いピッチで打って、相手の男子を振り回していこう。
ただもちろん、ここで不用意に甘いボールを返してしまうと、相手の男子が待ち構えているわけなので、その点には注意が必要だ。
女子が男子のボールを返球する場合
この場合が、試合において最も鍵になるだろう。女子は普段目にすることのない、男子の威力あるボールを受け止めなければならないので、シンプルに「頑張ってブロックする」ことが最重要だ。
写真:水谷隼・伊藤美誠/提供:ittfworld
女子が男子のボールをどれだけ多くしのげるかが、勝敗を大きく左右することになるだろう。伊藤美誠選手などはこのシーンにおいて非常に上手く対処しているため、国内外でのミックスの試合で成績に結びついていると筆者は考えている。
また攻撃のチャンスがある際は、できればスピードよりも回転を重視し、ゆっくりのボールでパートナーの時間を作ることに注視しよう。そうすることで、次を打つこちらの男子は、女子特有の早いピッチに振り回されることなく、ゆとりを持って攻撃をすることができる。
まとめ
以上、場面ごとでそれぞれの選手が注意するポイントについて考えてみた。
男女の違いを考えると、男子の方が身体能力やボールの威力に優れていることから、「女子がつないで男子が決める」という考え方が基本になるだろう。ただし、男子が「決めなければいけない」と考えすぎて難しいボールも焦って決めにいってミスを重ねるのでは本末転倒である。やはり大前提としてミスをしないことが大切になる。
もちろんそれぞれの選手の特徴によって、もっと細かい作戦を練る必要はあるが、根本的な考え方としては全般的に当てはまる内容である。
今後ミックスダブルスを組む際は、今回の記事を参考にしてみるとよいだろう。