試合当日の朝にやっておくべき頭と身体の準備|頭で勝つ!卓球戦術 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

卓球技術・コツ 試合当日の朝にやっておくべき頭と身体の準備|頭で勝つ!卓球戦術

2023.11.29

この記事を書いた人
初級者、中級者向けに基本技術の説明から、戦術論や卓球コラムまでを執筆。社会人になってから5回全国に出場し、全日本卓球選手権(マスターズの部・男子30代以上の部)ではベスト64。まさに“頭で勝つ!”を体現中。
戦型:右ペン表裏

卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」

今回は大切な試合の日の朝にする準備というテーマでお話をしていこうと思う。

誰しも競技を続けていれば、ここ一番の大切な試合というのがあるはずである。そんな日に自分の力の100%を発揮するために大切なのが、朝の準備である。もっと言えば、その日の1試合目のための準備だ。

やはり誰しも1試合目が一番緊張するし、身体や頭のキレも悪い。頭も身体もフルスロットルで爆発させ、最高のスタートを切るためにはどうしたらいいのか、一緒に考えてみよう。

朝にやっておくべき身体の準備①:ラケットを使わないウォーミングアップ

ランニング

まずはシンプルに走るということだ。走るということのメリットは計り知れない。まず凝り固まった体をほぐし、血流を良くする効果があり、体内の機能が活性化されていき、その結果パフォーマンスが上がるのだ。

さらに体を動かすことで、セロトニンという物質が脳に分泌される。これには自立神経を整える効果があり、心を落ち着かせてくれる働きを持つ。身体の動きを良くするためだけでなく、緊張した気持ちや不安な気持ちを払拭するためにも、ランニングは非常に効果的というわけだ。試合会場に少し早めに着いて、体育館の周りを軽く走ってみることは非常にオススメである。

さらに、走っている最中は思考の整理にもうってつけだ。次回の記事でお伝えする、「頭の準備」をランニングしながら行うことができれば完璧だろう。もちろん走っているときは何も考えず、ただただひたすら無心で走る、というのも、頭の中がスッキリして晴れた気分になる。その日のコンディションに応じて使い分けると良いだろう。

シャドープレー

続いておすすめなのがシャドープレーだ。単純な素振りではなく、しっかりと頭の中で実際の試合をイメージしながら、そのプレーを素振りで行うのだ。

たとえば、自分がバック前に短い下回転のサーブを出す→バックへ来たツッツキを回り込んでクロスへドライブをする→ストレートにブロックされたのを飛びついてドライブする…
といったように、実際に自分が行う展開を頭でイメージして、その通りに体を動かすのだ。

実際と同じように体を動かすことで、試合で緊張して体が思うように動かない、といったことをある程度防ぐことができる。ただし夢中になりすぎると危険な場合もあるので、周囲の環境には十分注意しよう。

朝にやっておくべき身体の準備②:試合前の練習で気をつけるべきこと

バッククロスから始める

続いて、開会式が始まる前の練習時間での気をつけるべきポイントについてお伝えする。

まず練習は必ずバッククロスから始めることをオススメする。試合では間違いなく卓球台の数よりも参加人数の方が多いので、他の選手もクロスで入っての練習になることがほとんどだ。

このときやはり、フォアクロスよりもバッククロスで練習をするほうが絶対に良い。卓球のラリーはほとんどがバッククロスから始まるからだ。誰も使っていない台を取れたとしても、その後に4人、あるいはそれ以上で練習することになるのを踏まえて、まずバッククロスを取るようにしよう。

なるべくラリーを続ける

試合前の練習時間は限られている。ボールをたくさん使うこともできないので、実際に球を打っている時間はほんのわずかだ。

なので球拾いをしている時間をなくすために、極力ラリーを長く続ける意識を持とう。そのためには攻撃をするときもフルパワーで打つのではなく、いつもより威力を落として、6割~7割くらいの力で打つようにしてみよう。

威力を落とせば打つ側もブロックする側もミスが減り、多くの球を打つ事ができる。足をたくさん動かすことにもつながるのでオススメである。

なるべく早くサーブからの練習に切り替える

基礎打ちの段階である程度単独の技術の練習ができたら、なるべく早くサーブレシーブからの練習に切り替えよう。

言わずもがな、このあと行う試合は全てサーブとレシーブから始まるからだ。

単独の技術、たとえばフォアドライブの練習をするのでも、実際に試合で使うサーブを出して、レシーブしてもらった3球目をフォアドライブ、といった練習の方がより実践的なのは言うまでもない。とにかく試合に近い形で練習をするのだ。

得意な戦術の練習をする

試合前には得意な技術、得意な戦術の練習をするべきだろう。

本番の直前に苦手なことを克服する練習をしても、急に上手くなるわけがない。自分のお決まりのパターンを確認しながら気持ちを高めていこう。上手くいけば、自信も高まりメンタル的にも充実するはずだ。朝に苦手なことの練習をするのは、私としてはあまりオススメしない。

朝にやっておくべき頭の準備①:メンタル面の準備

まずメンタルの準備として大切なのは、自信を持つということだ。

その自信の裏付けとして、今日の日の為にこれまでやってきた練習やトレーニングをひとつひとつ思い返してみよう。特に辛かったことを思い出せればなおよい。

「これだけやってきたのだから大丈夫!」と自分を褒められるくらいに思えれば、おのずと自信が湧いてくるはずだ。相手よりも自分の方がつらい練習やトレーニングをやり込んできたのだから、絶対に勝てる。負けるはずがない。そう言い聞かせてやるのだ。

そして、自分が勝ったあとの気持ちや風景をイメージしておくことも非常に大切だ。負けるかもしれない、と思っていると、その気持ちに現実もひきずられていってしまう。自分は勝つ。そして勝ったあとはどういう光景が広がっているか、どういう気持になっているか、それをできるだけ鮮明にイメージをしてみよう。

高らかにガッツポーズを掲げ、仲間とハイタッチをして喜び合い、表彰状を受け取り、笑顔で記念撮影をする。その様子を頭の中でできるだけ具体的に思い浮かべる。そして、きっとその光景が現実になると信じて、試合に望むのだ。

朝にやっておくべき頭の準備②:緊張したときの対処

試合では必ず緊張する。緊張をするなと言う方が難しい。あなたが勝ちたいという気持ちが強ければ強いほど、緊張はするものだ。ではそれをなくすのではなく、どう向き合うかについてを考えるほうが賢いやり方であろう。ここからお伝えする、緊張したときの考え方について、朝の時点でしっかりイメージしておこう。

緊張したときに考えるべきは、まず自分が緊張しているということは、相手も緊張していると思うことだ。「緊張しているのは自分だけではない、むしろ相手の方が緊張しているんだ」こう考えることで、ほんの少し気持ちが軽くなるはず。

その次に心がけるべきは、安定重視でしっかりとボールを入れてラリーをするということだ。特に試合序盤など、サーブレシーブや3球目まででラリーが終わっていると、どうしても身体も心ものってこない。なるべくラリーを続けることを心がけると、身体のキレも出てきて次第にリラックスしてくるはずだ。

ただしこれは「打てるボールもツッツキで入れる」といったことではなく、「いつもなら8割の力で打つところを、6~7割に抑えて打つ」ということなので注意したい。

3つ目が、それでも緊張がとけずそのまま負けるくらいならば、いっそ開き直って強気のプレーに徹しよう、という考えだ。「もう負けた」と自分の中で決着を着けて、開き直ったプレーをすることで、相手の心情も変わって戦局が傾くことは往々にしてある。現状を変えるためには、自分が何かを変えないといけないということだ。

以上が、実際に私も緊張した場面行っている対処法だ。これらを朝の段階で整理し、あらかじめ緊張することを想定しておけば、いざその事態に陥ったときに冷静な対処が可能となる。

ただしこれ以上に大切なのは、自分が緊張しているということに早く気付くことだ。試合のなかで自分を俯瞰で見ることを癖付けて、「あ、いま自分は緊張しているな」ということを素早く察知すること。これがまず第一歩となる。なんとなくうまくいかないまま、いつの間にか試合が終わってしまっていた、ということだけにはならないように注意しよう。

朝にやっておくべき頭の準備③:得意な戦術パターンをメモしておく

最後に戦術面についての準備だ。朝にしておくべきは、自分の得意な戦術を整理して、ノートなどに書き残しておくということだ。

自分のサーブから、あるいはレシーブからの得意なパターンを1つでもいいので、すぐに見られる場所に書いておこう。

大事なのは「書いて残す」ということだ。頭の記憶にはあっても、試合中にすぐその記憶を呼び起こせるとは限らない。なにせ試合では、常に目の前の相手から得られる情報を入れて整理しながらプレーをする必要があるわけで、思い出を呼び起こす余裕などないのだ。

ノートなどに書き留めていれば、ゲーム間に確認することができ、「そうだ、この戦術はまだ試していなかったな」ということができるわけである。朝の段階で、得意な戦術、最近うまくいっている戦術などをしっかりと整理して、書き留めておこう。

まとめ

いかがだっただろうか。今回は試合の朝に行うべき頭の準備についてお話してみた。

卓球という競技は他の球技よりも、頭脳戦・及び心理戦の要素が多く含まれるスポーツだ。身体の準備のみならず、頭の準備も非常に大切で、これを怠っていては100%のパフォーマンスを発揮できないだろう。

今回の内容を参考に、次の試合から少しずつ取り入れてみてはいかがだろうか。

若槻軸足インタビュー記事

>>『頭で勝つ卓球戦術』シリーズ著者・若槻軸足が社会人で全国5回でられたワケ

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