戦型:右ペン表裏
卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」。
今回は、初心者がやり込むべきオススメの多球練習というテーマでお送りしていく。
多球練習とは、1つのボールを打ち合うのではなく、文字通りたくさんのボールを一度に使って行う練習方法だ。打ち手(練習者)と送り手(球出し)に分かれて行う。クラブや部活動の練習などで、誰しもが一度は経験があるだろう。
社会人ともなるとなかなか多球練習をやる機会というのはないものだが、今回は初心に立ち返り、これから上達していく初級者の方や指導者の方に向けて、具体的なオススメのメニューについて考えていこうと思う。
>>卓球初心者でも勝てる!最初に習得すべき「たった2つの技」|頭で勝つ!卓球戦術
このページの目次
多球練習をする意義とは
私は多球練習をする意義は3つあると考えている。
①各技術の習得
②通常のラリーよりもスピード、ピッチ、回転量等の負荷をかける
③実戦を想定した展開を効率的に練習する
この3つだ。今回は③の観点でオススメのメニューを紹介したい
初心者がやり込むべきオススメ多球練習3選
初心者がやり込むべきオススメの多球練習を3つ紹介する。
練習①:フォア前ストップ→バック側へ下回転をバックハンドドライブ
写真:フォア前ストップ/撮影:ラリーズ編集部
これはフォア前に短いサーブを出されたときを想定したシステムだ。
自分の位置から最も遠い場所であるフォア前は、どうしても多くの人が苦手とするコースなので狙われることも多い。腕を伸ばすのではなく、しっかりと足を運び台の中に入って打球することに注意し、ストレートにストップだ。
それを相手は対角であるこちらのバック深くにツッツキで詰めてくると想定して、バック深くに下回転を送ってもらう。それに対し、しっかりと適切な位置に戻ってバックドライブで対応しよう。ストップ時に台の深くに入っている分、戻りが遅れがちになるので、しっかりと足を動かして素早く戻り、十分な体勢で4球目を待てるように気をつけたい。
フォア前→バック深くというコース取りが有効であることはこれまでの記事でもお伝えしてきたが、それはつまり相手からもやられる可能性があるということだ。その鉄板のパターンにハマってしまわないよう、この練習でしっかりと対応できるようになっておこう。
練習②:バック前フォアフリック→全面でフォアドライブ
写真:フォアフリック/撮影:ラリーズ編集部
こちらも先ほどと同じで短いサーブに対するレシーブからのシステムであるが、より攻撃的なパターンを想定している。バック前のサーブに対しては、チキータなどのバックハンド技術で処理するのが一般的だが、ここでは回り込んでフォアハンドで処理するパターンを練習しよう。
理由は2つ。ひとつはフォアも使うことでレシーブの幅を広げるとともに、相手に的を絞らせないようすること。そしてもうひとつは、その後の4球目の動きをスムーズにすることだ。
人間は「静」→「動」よりも「動」→「動」が圧倒的に速く動くことができる。
リレーのバトンパスのように、バトンをもらう前から走り出しているからこそ、受け取ったときにトップスピードを出す事ができるのだ。
それと同じように、レシーブの時点から動いておくことによって、スムーズで素早い4球目攻撃につなげることができるのだ。筆者も試合の序盤は特に、意識的にバック側もフォアハンドでレシーブするようにしている。
フリックをしたら打ったコースのクロスへ返ってくることを想定し、クロスへ送球してもらって連続攻撃を仕掛けよう。
練習③:サーブを出すふり→回り込みフォアドライブ→フォアへ飛びつき
写真:サーブを出すふり/撮影:ラリーズ編集部
3つ目はこちらが3球目攻撃をすることを想定したシステムだ。まず最初に、練習者は短いサーブを出す「ふり」をする。ボールを使わずに、構えてトスして打球して戻りまでの動作を実際と同じようにやるのだ。
これは何気ないようですごく重要だ。何も工夫せずに下回転のボールを送球してもらったのでは、無意識のうちに、楽に回り込めるよう少しずつ構える位置がバック側に寄っている、という事態が起こりがちである。
また台との距離についても、下回転のショートサーブを出した後と、ロングサーブを出した後とでは、異なる位置に構えるべきである。そういった細かいが重要なポイントを意識する為にも、サーブを出す動作をしてから送球をしてもらうという工夫は非常に有効であると言える。
で、下回転のサーブを出したと想定して、バックに長いツッツキのボールを送ってもらおう。それを回り込んでフォアドライブだ。ここではミドルを狙おう。回り込んだあとは素早く戻り、そしてフォアへのブロックが来るという想定で送球してもらい、それをフォアドライブ。
しっかりと間に合って十分な体勢を作れたのなら決めにいき、もし飛びついてなんとかぎりぎり間に合うという場合なら、なるべく弧線の高いドライブで対応して、次球への備えの為に時間を作ることを心がけよう。
まとめ
今回はオススメの多球練習というテーマで考えてみた。
写真:卓球台/撮影:ラリーズ編集部
初心者向けとは言ったものの、中級者や社会人選手などにもぜひオススメしたい。ある程度上達してくると基本の練習をおろそかにしがちであるし、何よりも多球練習はしんどい。そういうしんどい練習をいつまでも継続することができるできる人こそが、今後も上達していくのである。
多球練習ができる環境があるのならば、ぜひ積極的に取り入れてもらいたい。
また初級者を指導する中学高校の指導者の方も、ぜひ今回の記事を参考にして、実戦に役立つ多球練習を行って頂ければと思う。
若槻軸足インタビュー記事
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