戦型:右ペン表裏
卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」。今回は「ペン粒選手を倒す為の戦術」というテーマでお伝えしておく。「ペン粒」とは御存知の通りペンホルダーの表面に粒高ラバー、裏面に裏ソフトラバーを使用し、主に粒高の特性を活かして前陣で相手を揺さぶるプレーを得意とする戦型である。
このスタイルはある一定以上のレベルよりも勝ち上がるのはどうしても難しく、トップレベルで活躍する選手で目にすることはほとんどない。そのため、ペン粒の選手の数は少なく、ペン粒の選手への有効な戦い方がわからないという方も多い。そんな方は今回の記事を参考に、ぜひ一緒にペン粒対策を学んでいこう。
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ペン粒選手を倒す為の戦術①:下回転に対して強打してはいけない
ペン粒の最大の特徴、それはどこのコースへ打っても粒高ラバー独特のボールで返ってくる、ということである。シェークバック粒の場合はフォア面には粒高ではないラバーを貼っているため、フォア側を狙うなどの作戦が立てやすいのだが、ペン粒だとどこに打っても基本的に粒高で返球される。
そこでやってしまいがちなのが、下回転のボールを強打し、その後も全部のボールを攻撃しようしてしまうことだ。これは絶対にやってはいけない。
粒高の基本的な性質として、こちらのドライブ回転のボールは下回転になって返ってくる。それをドライブで打っても、また下回転で返ってくる。いわば、前陣カットマンと試合をしているようなものである。これは非常にやっかいである。
卓球台から下がった位置にいるカットマンに対してドライブを連打するのでさえ、それなりに体力を使うはずだ。それが前陣となると、こちらに返ってくるまでの時間的余裕がほとんどなくなり、結果的に十分な打球準備が整えられずに打ちあぐねる、あるいは山なりのボールになる、そして相手にチャンスを与えてしまう。
こうなると、ペン粒プレイヤーの思うつぼである。
特に下回転のボールはゆっくり飛んでくるので、つい打ち込みたくなるのだが、そうするとペン粒の土俵に引きずり込まれてしまう。いきなり下回転のボールを攻めようとするとどうしても打点が落ちたループ気味のドライブになってしまい、簡単にブロックされてしまう。
しかも、こちらの攻撃が良いボールであればあるほど、返ってくるのは下回転が強く、球足の早い良いボールであることが多い。浮いたチャンスボールで確実に決めきれる自信があるときは強打してもよいが、そうでない場合、ペン粒選手の下回転に対して強いボールを打ち込むことは得策ではないのである。
ペン粒選手を倒す為の戦術②:上回転をねらう
では、いよいよペン粒選手に対して有効な戦術についてお伝えしていこう。それはずばり、「上回転を狙う」という作戦だ。
まずサーブを持ったときは基本的にはロングサーブで攻めていく。回転はさほど気にしなくてよいので、低く早く、質の高いロングサーブを、まずは相手のバックに出そう。粒高でレシーブされたら、次の返球は下回転のボールで返ってくるはずだ。
それに対して3球目攻撃はせずに、ツッツキで相手のバック深くへ返球しよう。次はおそらく粒高でプッシュ性の上回転のボールが返ってくるはずだ。こちらのフォア側にストレートに速いボールが来ることも待ち構えて、やや距離をとり両ハンドで構えておく。そして、返ってきたボールをなるべく早い打点で相手のフォア側へドライブするのだ。
ロングサーブを出す、ツッツキをする、返ってきた上回転を早い打点でフォアへ5球目攻撃。これが初心者にもおすすめできる最も簡単な戦術だ。
5球目攻撃時は「決めきろう」と考える必要はなく、なるべく早い打球点で打つことを意識すると良いだろう。うまくいけばそのまま得点になるし、返ってきたボールが甘ければ、再びフォアサイドを狙って強打で決める。これが、私が考えるペン粒に対しての鉄板の戦術だ。
注意点①:裏面での攻撃
ペン粒と対戦するときに注意したいのが裏面での攻撃だ。ペン粒選手は基本的に裏面に裏ソフトラバーを貼っていることが多いので、粒高ラバーとの球質の違いに翻弄されないようにしたい。警戒すべき点は2つで、ツッツキをバックに送った際の裏面バックドライブと、こちらの攻撃に対する裏面を使った「伸びるブロック」だ。
とはいえ、裏面バックドライブは実はそれほど警戒する必要はない。なぜなら先述の通り、ペン粒選手が得意とするプッシュは上回転のボールであり、裏面バックドライブも同性質のボールだからだ。
しっかり台と距離を保ち、打てそうならフォアにカウンター、無理なら落ち着いてブロック。次のボールを強打されても焦らずラリーを続けて、また上回転のボールが来たらそれを狙う、という作戦で問題ない。
問題は裏面での「伸びるブロック」や、裏面でのカウンターだ。こちらが回り込んでフォアドライブを打っても、裏面でストレートにブロック、もしくはカウンターをされてノータッチで抜かれる、といったケースが多い。
この場合の対処法としては、相手のバック側に強いボールを打たないことである。仮にバックに打つ場面があっても、繋ぎのドライブ程度に留めるべきであり、ペン粒相手には、強いボールはフォアサイドに打つということを徹底しなければならない。
注意点②:フォアハンドでの攻撃
そうなると次に注意しなければならないのは、ファハンドでの攻撃である。粒高といえども攻撃が上手な選手は多い。しかも粒で打たれると非常にいやらしいボールになるので、ブロックするのは相当やっかいである。粒高で攻撃されるという展開はできるだけ避けたい。
ただし、もし粒高で打たれそうなときでも、打たれる可能性が高いコースというのがある。それは相手のフォアからストレート、つまりこちらのバック側にシュート気味に来るコースだ。
これはラケット面を被せるよりも開いた方が強いボールが出やすいことと、それでも粒高のボールのスピードは裏ソフトには劣るので、受け手が取りにくいストレートコースを選択する、ということが理由として挙げられる。なのでフォアサイドに浮いた場合は、やや下がってバック側でブロックで待てばよいだろう。
もちろん、粒高で強打するのも相当緻密な技術が必要であるのも事実であるため、「フォア側のボールが全部打たれる」ということはまずないだろうが、それでも安易に浮いたボールを送るのだけは避けたい。
まとめ
簡潔にまとめると、ペン粒選手に対する戦術はこうだ。
①ロングサーブからの5球目攻撃
②上回転のボールを狙ってフォアへ強打
③打たれるときはストレート待ち
これだけを意識すれば、ペン粒との戦いは相当楽になるだろう。普段対峙するケースが少ないので戦い方が分からなくて負けてしまう、ということにならないよう今回の記事を参考に対策して頂ければ幸いである。
若槻軸足インタビュー記事
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