卓球には点数に関する様々なルールや文化が存在するのをご存知だろうか。直接プレーに関係しないものも多く、ささやかなことに見えるかもしれないが、どれも知っておくべき内容だ。今回はそんな点数にまつわるトピックをまとめてご紹介する。
点数の数え方
一つ目のトピックは試合中の点数の数え方だ。
審判はプレーごとに現在の両者の得点をコールする決まりがある。その際、点数は基本的に英語で、サーバー側の得点、レシーバー側の得点の順でコールする。また、「0」は「ゼロ」ではなく「ラブ」という。両者が同点の場合は「〇〇オール」となる。試合開始時には「ラブオール」のコールがなされる。
また、10-10のデュースになった際には「テンオール」の代わりに「デュース」とコールすることが多い。その後は通常通り「イレブンオール」(11-11)、「トゥエルブオール」(12-12)…のように続いていく。
オープン大会などでは相互審判や敗者審判などで選手が審判を務めることも少なくない。大会に参加する際は基本的なコールのしかたを含め、審判の役割についてよく確認しておくと良いだろう。
21点制から11点制へ
続いては1ゲームあたりの点数の歴史をご紹介する。
2020年現在、卓球は1ゲーム11点先取で、サーブは2本交代というルールが一般的だ。しかし、かつては1ゲームあたりの点数が現在とは異なる時代があった。
2001年にルールが変更されるまで、卓球は1ゲーム21点先取、サーブは5本交代で行われていた。1ゲームが長いため、選手にはより長いスパンでの戦略が求められた。また、サーブ権が5本であったことから、流れが傾きやすく、一方の選手がポイントを連取する場面も多く見られた。昔の試合を見ると、現在とは異なる試合運びをしているのがわかるだろう。
21点制から11点制に変更された主な理由としては、テレビでの放映を考えてのことであると言われている。1ゲームあたりの時間を短くすることで放送しやすくしたり、ゲーム数を増やすことで盛り上がる場面を増やすことが意図された。結果として、全体的にスピーディーな試合展開となり、各種メディアに取り上げられる機会も増えてきた。
特殊な点数ルールが設けられる試合
現在の卓球は11点制が定着しているが、近年ではより観戦に適したスタイルを目指し、点数に関する独自のルールを設けている試合も存在する。
そのひとつはTリーグだ。2018年に始まったTリーグは演出やパフォーマンスの面でも観戦を意識したものとなっている。そんなTリーグは、2019年のセカンドシーズンから「原則デュースなし」のルールを採用している。つまり、10-10となった場合は次の1点でゲームの勝者が決まる仕組みだ。そのため、各ゲーム終盤では独特の緊張感が生まれる。ただし、ゲームカウント2-2の最終ゲームやビクトリーマッチではデュースを適用する。また、ゲームカウント2-2となった場合には、最終ゲームを6-6から始める。
もう一つは2019年に始まった国際大会であるT2ダイヤモンドだ。新たな卓球の魅せ方を追求するこの大会では、Tリーグと同様にデュースが存在せず、先に11点に達した選手がそのゲームを得る。さらに、試合開始から24分が経過した場合、以降のゲームは全てデュースなし5点先取となる。
これらの大会ではこうしたルールにより、円滑な試合進行を実現している。
ラブゲームのマナー
最後にラブゲーム(11-0でゲームを取ること)をめぐるマナー文化について取り上げる。
卓球は2001年に11点制が採用され、ラブゲームが起こることが珍しくなくなった。発祥については諸説あるが、これ以降、「ラブゲームをしてはいけない」ことが暗黙のマナーとなりつつある。つまり、10-0になった場合、リードしている選手がわざとミスをして得点を与えるという行為が一般的になっている。
この慣習はあくまでマナーであり、日本卓球連盟および国際卓球連盟が定めるルールにはラブゲームに関する規定はないため、ラブゲームをしたとしても違反にはならない。また、近年ではかつてほどラブゲームを忌避する風潮はなくなりつつあるようにも見受けられる。2020年のカタールオープンで伊藤美誠(スターツ)が丁寧(ディンニン・中国)に対しラブゲームを行ったことは記憶に新しい。
10-0の状況を迎えた際、これまで通りラブゲームを避けてわざとポイントを与えるか、「最後の一点まで全力でプレーすることが礼儀」と考えるか。判断は個々人に委ねられているのが現状だ。