【卓球】TTRとは?話題のビデオ判定システムの特徴,審議対象を解説 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

卓球技術・コツ 【卓球】TTRとは?話題のビデオ判定システムの特徴,審議対象を解説

2025.07.24

文:ラリーズ編集部

今回は、卓球の試合のルールの中でもTTRについて解説します。

卓球におけるTTRとは?

TTRとは

卓球における「TTR(Table Tennis Review)」はITTFが導入したシステムで、ボールトラッキング技術やリプレイ映像などを活用し、審判の判定(エッジボールやサービス)に対して選手が異議申し立てできる仕組みです。

試合会場のコートを取り囲むように十数台ものカメラを設置して審判の判定をサポートしているシステムで、サッカーや野球では『VAR(Video Assistant Referee)』と呼ばれており、選手や審判がモニターを模したジェスチャーをするのが一般的です。

TTRの主な特徴

このTTR制度では、選手が審判の判定に対して異議を唱える「レビュー」の要求が1試合あたり2回まで認められています。「レビュー」が要求されると外部にいるTTRの審判員が複数のカメラアングルとスローモーションを用いて検証し、審判の判定を支持するか(要求に失敗)覆すか(要求に成功)を判断します。

要求に成功すればレビューの権利は2回のままで、失敗すると1回に減り、2回失敗するとその試合ではレビューは認められなくなります。

TTRの対象

TTRの対象となるのは以下の内容です。

①ボールがエッジで入ったかどうか
②サービスがネットに当たったかどうか
③サービストスが16cm以上の高さで上がっているか
④サービスのトス角度が30度以下かどうか
⑤サービス中にボールが隠れていないかどうか
⑥卓球台より下からサービストスをしていないかどうか
⑦卓球台の中でサービストスをしていないかどうか
⑧妨害がないか

TTR導入の歴史

このTTR制度は2019年のITTFワールドツアー・グランドファイナルで試験的に導入され、その後の国際大会でも本格的に導入される予定でしたが、コロナ禍もあり実現に至りませんでした。

その後、2024年の混合団体ワールドカップ成都大会の最終日に導入されると、エッジボールなど計6件のプレーがTTRによって検証されました。

2025年の国際大会では、ITTFワールドカップマカオ、世界選手権ドーハ大会、WTTUSスマッシュ、WTTスウェーデンスマッシュ、WTTチャイナスマッシュ、WTTファイナル香港の6大会に導入されるとのことです。

TTR導入の背景

サービスの問題

TTRが導入された目的の1つは、サービスの基準を厳格にするためです。

卓球のサービスは「16cm以上」かつ「地面とほぼ垂直(角度は30度以内)」なトスを上げ、サービス中にボールが隠れないように打たなければならないと規定されています。

しかし、特に角度の部分においては一瞬の状況で審判が判断しにくいことから、明らかに垂直とは言えない角度でトスを上げる選手が多く(そのほうがサービスに回転をかけやすいなどのメリットがあるため)、卓球界でも問題視されていました。

今回のTTR導入によってサービスの基準が厳格になることで、こうした状況の改善が期待されます。

誤審の問題

また、TTRには審判の誤審を防ぐ役割もあると考えられています。

どの選手もルールの許容範囲ギリギリでサービスを出そうとする中で、審判の判定もより困難になっており、これまでも試合の重要な場面で誤審によって試合展開が変わることが沢山ありました。

今回のTTRの導入は選手だけでなく審判にとっても良いジャッジの手助けとなると考えられます。

TTR導入の影響

USスマッシュ2025

TTRが注目されるようになったのは、2025年に行われたUSスマッシュです。

WTTでは初の本格導入となったUSスマッシュ。この大会ではTTR導入の影響からかサービス時のフォルトの基準がかなり厳格化され、これまでと比べ物にならないくらいサービス時のフォルト判定が取られていました。

男子シングルスでは、篠塚大登とダルコ・ヨルジッチ(スロベニア)、田中佑汰とアレクシス・ルブラン(フランス)の試合の重要な局面でTTRが使用され、プレーが一時中断。また、準決勝の張本智和と林昀儒(リンユンジュ・チャイニーズタイペイ)の試合では、張本が2連続でTTRを使用して成功させるなど、試合の流れを大きく左右した場面もありました。

TTRの課題

TTRは国際大会に関しては今後も継続的に使用されることが決まっていますが、日本国内の大会でも導入されるかどうかが注目されます。また、ビデオのアングルによっては不正確な部分があるため、技術の向上も課題としてあがっています。

まとめ

透明性や一貫性のある審判の実現のために導入されたTTRは、サービス基準の改善や誤審の減少が期待されます。現環境でのTTRの使われ方を見る限り、今後の大会ではこのTTRをいかに活用できるかが勝敗を分けるポイントとなることは間違いないでしょう。